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アルコール依存症の看護のポイントとは?精神科訪問看護でできることも解説!

アルコール依存症は、長期間の多量な飲酒により精神的・身体的依存を引き起こす精神疾患です。

ご本人は病識が乏しい場合や、離脱症状の影響で精神的に不安定になる場合もあり、アルコール依存症の看護は難しいと感じる方もいるかもしれません。

そこで、今回はアルコール依存症の看護のポイントと、アルコール依存症の方に対する精神科訪問看護の事例を紹介します。

アルコール依存症とは

アルコール依存症は、世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類(ICD-10)の診断ガイドラインに沿って診断されます。

■アルコール依存症の特徴

 

アルコール依存症は、アルコールへの耐性がつくことで次第に飲酒量が増えていき、自分では気づかないうちに進行していく病気です。

アルコール依存症が進行するプロセスと、精神的・身体的特徴は以下の通りです。

 

   

       状態

     特徴

     依存症との境界線

    飲酒が習慣になる

 
 ◎晩酌や飲み歩きが習慣になる
 ◎アルコールに耐性がつき飲酒量が増える
 ◎飲酒時の記憶がなくなる
  「ブラックアウト」が起きる

              依存症初期

    精神的依存

 
 ◎お酒が生活の中心になる
 ◎励まさない

                依存症中期

    身体的依存

 
 ◎離脱症状が起きる
 (発汗・振戦・幻覚など)

                依存症後期

    生活が破綻する 

 
 ◎金銭面や人間関係などのトラブルが
  表面化する
 ◎体重の減少・肝機能の低下がみられる

■アルコール依存症の治療

 

アルコール依存症の治療の基本は、断酒です。

ただし、治療の離脱を避けるため、最近では軽度のアルコール依存症の方や、断酒の同意を得られない方は、飲酒量低減を目標に治療する場合もあります。

基本的な治療の流れは、以下のようなステップです。

導入・解毒期

病気の理解
◎断酒の動機付け
◎離脱症状の治療

【リハビリ期】

作業療法や認知行動療法による精神的依存の治療
アルコールに関連する身体的障がいの治療

【治療継続期】

社会復帰の準備
継続した断酒のための支援

精神科訪問看護は、退院後の断酒継続をサポートする役割を担っています。

アルコール依存症の看護のポイント

アルコール依存症と診断されていなくても、飲酒問題を抱えている人が少なくありません。

そのため、アルコール依存症の看護知識を知っておくと、さまざまな場面で役立つでしょう。

 

■アルコール依存症の看護の基本

 

アルコール依存症の看護の基本は、以下の5つです。

 

1.正しい知識の理解を促す 
2.長期的な看護をする
3.ご本人を尊重した関わり方をする
4.断酒のための生活環境を整える
5.ご本人とご家族が孤立しないように関係機関と連携をとる

 

アルコール依存症は、早い段階で早期に治療すれば、回復も早いと言われています。

しかし、本人も気づかぬうちに進行する病気のため、早期にご本人とご家族に正しい知識を知ってもらうことが大切です。

また、アルコール依存症の治療目標は一生涯にわたる断酒のため、長期的な看護が必要です。

 

■ご本人様の看護のポイント

ご本人に対する看護の3つのポイントを紹介します。

相手を受け入れ信頼関係を築く

アルコール依存症の看護をするにも、ご本人が意見を聞き入れてくれなければ意味はありません。

まずは、ご本人と信頼を得て、良好な人間関係を目指しましょう。

アルコール依存症を抱える方は、病識が乏しいまま日常生活でトラブルを起こしてしまったり、お酒を辞めたくても辞められなかったりと、ご本人自身がやりきれなさや否定的な感情を持っている場合があります。

威圧的や監視的な態度で接するのではなく、ご本人を尊重した関わりを心がけましょう。

裏切られても毅然とした態度で継続的に応援する

もし、ご本人が再び飲酒してしまっても、毅然とした態度で継続的に応援することが大切です。

再飲酒したときは、断酒の必要性を厳しい態度ではっきりと伝え、本人と一緒に飲酒してしまった時のことを振り返りましょう。

また、継続的に関わっていた方が再飲酒すると、看護師としては裏切られた気持ちになるかもしれません。

しかし、アルコール依存症はすぐに完治しないことを理解し、裏切りは起こるものとして看護師自身が精神的苦痛を抱えないようにしましょう。

断酒を継続できる環境作り

アルコール依存症は、精神的・身体的な依存から飲酒のコントロールが難しいため、断酒が継続できる環境作りが重要です。

ご本人とお酒を飲みたくなる場面はどのようなときか話し合い、飲みたくならない環境を作る。

お酒をすすめられても、断るための対策を話し合うなど、ご本人と一緒に断酒が継続できる環境作りをしましょう。

断酒の継続には、自助グループやデイケアなどの利用も効果的です。

 

■ご家族の看護のポイント

 

ご家族に対する看護の3つのポイントを紹介します。

アルコール依存症の正しい知識を理解してもらう

アルコール依存症の治療には、ご家族の理解と協力が必要です。

アルコール依存症は、本人の意志の問題ではなく、精神的・身体的に変化をもたらす病気です。

しかしご家族からすると、病気と言われても今までの家族関係やご本人に対する想いから、すぐには理解できないかもしれません。

そのため、ご家族に繰り返し説明し病気の理解を促す必要があります。

ご家族が正しい知識を理解することは、治療環境を整えるとともに、ご家族自身が精神的に追い詰められないようにするのにも効果的です。

イネイブリングしないように促す

イネイブリングとは、アルコール依存症の方のご家族が、飲酒を助長するような行為のことです。

たとえば、本人の機嫌が悪くなるからと酒代を渡す、アルコールで起こった問題を家族が尻拭いするなどがイネイブリングにあたります。

イネイブリングはその場限りの解決にしかならないため、結果的には飲酒を助長し、ご本人やご家族にとっても悪循環になります。

問題が起こった場合の正しい対処法は、本人が飲酒問題と向き合えるように、本人に責任を取らせることです。

ご家族は、ご本人を助けたい想いから、気づかぬうちに飲酒を助長している場合もあるため、ご家族にはイネイブリングを回避するための正しい対処法を理解してもらう必要があります。

ご家族の味方になる

アルコール依存症の人を抱えるご家族は、家族内で問題を抱えながらも周りには相談できず、孤独になるケースがあります。

ご家族が孤立しないように、話を聞く、気持ちを吐き出せる場をつくるなど、ご家族の精神的ケアに努めましょう

また、アルコール依存症の方は、時に暴力的になってしまうこともあります。

ご家族が自分で身の安全を守れるよう、危険を感じた場合の対策を話し合っておきましょう。

アルコール依存症の方に対する精神科訪問看護介入の事例

精神科訪問看護コルディアーレを利用している方のなかには、アルコール依存症を抱える方も多くいらっしゃいます。

ここでは、コルディアーレの看護師が介入し、断酒を継続できている方の事例を紹介します。

 

【50代 Mさんの場合】

Mさんは、長年の飲酒が原因で仕事も辞め、家族とも疎遠になっていました。

ご本人は断酒の必要性を理解していましたが、たびたび飲酒をしてしまい、継続した断酒ができていませんでした。

 

介入後

Mさんは、何度か訪問し信頼関係ができてくると「ダメだとわかっていても、寂しさがつのると酒に逃げてしまう」と、打ち明けてくださいました。

そこで、Mさんと相談し、寂しさがつのる週末に訪問日を変更し、大型連休前には必ずMさんを訪問。

自助グループへの参加も促し、看護師や自助グループの方など、一緒に頑張る仲間作りをサポートしました。

その結果、Mさんは一緒に頑張っている仲間がいることで、飲酒に誘惑に負けず継続した断酒ができています。

正しい知識を身につけアルコール依存症の看護をしよう

アルコール依存症は、誰もがかかる可能性のある病気で、依存的になってしまっても正しい知識がないと回復は難しい疾患です。

また、断酒が成功しても、一度でもお酒を飲むと再発してしまうケースも少なくありません。

そのため、アルコール依存症の看護は、正しい知識を身につけ継続的に関わることが大切です。

コルディアーレでは、アルコール依存症だけでなく、さまざまな精神疾患を抱える方を継続的に事業所全体でサポートしています。

精神科訪問看護師に興味がある方は、お気軽にお問合せください。

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