精神疾患を抱える方は増加の一途を辿り、比例して精神科訪問看護を利用する方も増え続けています。しかし、精神科訪問看護に特化している事業所はもちろん、通常の訪問看護と併用で精神科訪問看護を行っている事業所もまだまだ少ない現状があります。精神科看護のニーズ増大から、精神科訪問看護師の需要は高まる一方です。
今回は精神科訪問看護師の役割や業務内容、1日スケジュールについて詳しく解説します。
精神科訪問看護師には、利用者様の生活を支えるためのさまざまな役割があります。精神疾患を抱える方の中には、セルフケアが苦手な方や精神状態の変化が激しい方がいらっしゃり、訪問看護師のサポート・支援が重要となってきます。
ここでは、精神科訪問看護師の役割について解説します。
精神科訪問看護では、利用者様それぞれに合わせた目標を設定することがありますが、目指すべき目標としてよくテーマに挙がるのは「自立」です。自立といっても、精神的な自立もあれば経済的な自立もあるため、訪問看護師は本人や家族とも話し合いながら方向性を決める支援を行っていくことが重要です。自立支援の中には料理や掃除といった自活関連、公共交通機関を使用するための外出関連などがあります。
社会復帰のための支援も訪問看護師の大きな役割の1つです。社会復帰は、就労を目的とした方だけでなく、コミュニティーに所属したい・仲間づくりがしたいといった方も対象となります。社会とのつながりや家庭以外の居場所作りのためのサポートは、精神科訪問看護師にとってもやりがいがあり、喜びも大きい分野の一つです。
社会復帰と似ている部分もありますが、今後住み続ける地域を巻き込んで、利用者様にとってどういった支援が最善か考えることも精神科訪問看護師の役割です。地域住民の方への関与や支援体制の確認、時には地域ボランティア活動への参加サポートなど利用者様が地域で生活し続けられるように支えていくこともあります。
利用者様ご家族へのサポートや援助も非常に重要な役割です。利用者様のご家族によって精神疾患への理解度や支援体制も全く異なることから、ご家族とともに利用者様をどう支えていくか話し合っていくことも重要な場合があります。利用者様との関わりの中で、時には疲れてしまったり辛くなってしまったりすることもあり、ご家族へのケアも重要になります。また、緊急時やトラブルが発生した際の対処法なども日頃からサポートし、ご家族が少しでも冷静に対処できるよう準備しておきます。
精神科訪問看護師の業務は、一般的な訪問看護とは異なる部分も多く、イメージしにくい方もいるでしょう。セルフケア援助では一部医療処置が必要な場合もありますが、ほとんどの場合は薬剤管理やコミュニケーションでの看護となります。
ここでは、精神科訪問看護師の業務内容について詳しく解説します。
利用者様の中には、成分の強い薬を服用されている方もいます。身体的な不調を早期発見できるよう、バイタルサイン測定は必ず行っています。
コミュニケーションを通して精神状態の把握に努めます。訪問中はご利用者様の行動をできるだけ観察し、目立った変化がないかチェックします。特に表情の観察はとても重要です。
精神疾患を抱える方にとって、内服管理は欠かせないものです。内服で精神状態を安定的にコントロールする必要があるため、数は合っているか、飲み忘れはないか、拒薬はないかなど細かく観察します。ゴミ箱に内服を捨ててしまう方もいることから、注意が必要です。
部屋が汚い、入浴拒否があるなどセルフケアが苦手な利用者様のケアも重要です。時間をかけて話し合っていき、関係性を築いていきます。タイミングなども相談しながら、徐々に支援をしていきます。
利用者様の状態に合わせて声かけやコミュニケーションの仕方などを家族にも伝達します。方向性の確認や今後について話し合いながら進めていくイメージです。家族からの相談をもらうことも多く、柔軟な対応が求められます。
病状や社会復帰に向けた取り組み、公的制度の利用など、利用者様の自立に向けた支援についてケアマネージャーや地域の保健師・行政などとしっかり相談しながら看護していきます。
精神科訪問看護は、29分までの区切りと30分以上の2種類の時間で訪問します。利用者様に合わせてケア内容を決定しますが、平均35分程度で、一般的な訪問看護と比べ訪問1回当たりの時間は短い傾向にあります。
ここでは精神科訪問看護師のおもな1日のスケジュールをご紹介します。
時間 |
スケジュール |
9時 |
出勤・申し送り |
午前中 |
利用者様宅へ訪問(3件程度) |
13ごろ |
ステーション等で昼休憩 |
午後 |
利用者様宅へ訪問(4件程度) |
17時30分ごろ |
ステーションへ帰り事務処理作業(iPhoneから外出中記録可) |
18時 |
帰宅 |
精神科訪問看護は基本的に残業は少なく、0時間という月もあります。医療処置が少ない分、身体的な負担は少ないです。
精神科に興味があるものの、自分に合うかわからないとためらっていませんか?精神科訪問看護は、一般的には特殊なイメージですが、利用者様との向き合い方やコミュニケーションスキルをしっかり学ぶことができますよ。
ここでは、精神科訪問看護師に向いている人の特徴を4つご紹介します。
コミュニケーションが苦ではない方は精神科訪問看護にとても向いています。利用者様との関係性を深めるためにもコミュニケーションはとても有効です。しかし、コミュニケーション=仲良くなりすぎることではありません。あくまでも利用者様と訪問看護師の距離感を気にしておく必要があります。
一般的な訪問看護や病院では、医療処置が多い分ゆっくり患者と関われないという訴えを聞くことがあります。精神科の看護では、利用者様と1対1で向き合う場面が多いことから、利用者様とじっくり向き合って看護したい方におすすめです。利用者様も自分の疾患や症状で葛藤していることがあるなど、ゆっくり話を聞きながら現状を把握することができます。
利用者様の中には、精神状態が不安定になりやすい方もいます。そういった方を担当するには訪問看護師側の精神の安定が不可欠です。利用者様の言動や態度を過度に気にしすぎないことも重要です。
精神科訪問看護は、数ある診療科の中でも看護師自身が治療の道具(ツール)となり症状や行動を良い方向に支援できる、とてもやりがいのある仕事です。身体的な看護というよりはサポートと受容・傾聴が重要であり、経験を活かしながら継続することでより良い看護実践が可能です。
コルディアーレでは、経験豊富な看護師による指導体制が整っており、日々学びながら精神科訪問看護を追求することができますよ。
精神科訪問看護の仕事に興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。