精神疾患を抱える方が日常生活を送る際に、困難や不安を感じる場面が少なくありません。同時に利用者様をサポートするご家族の心配や不安も大きいですよね。
そういった自宅療養での悩みや困りごとを解決するために利用を検討してもらいたいのが精神科訪問看護です。
精神科訪問看護の利用にあたって、申請や書類の交付が必要ですが、「どういった制度があるのかわからない」「どう申請するの?」とお悩みの方がほとんどです。
今回は、精神科訪問看護でできることや利用の流れ、精神疾患を抱える方の日常生活に役立つ制度について詳しくご紹介します。
精神科訪問看護とは、精神疾患を抱える方や精神的なサポートが必要な方のご自宅へ看護師が伺い、日常生活ケアやこころのケアを行う制度です。看護師が一方的にケアを決めるのではなく、利用者様・ご家族・看護師・医師や保健師などの医療チームで相談しながら、現状の悩みや不安を解決していきます。
精神科訪問看護では具体的にどんなケアをおこなっているのでしょうか。
下記を見ていきましょう。
日々の生活でなんらかのサポートが必要な場合やセルフケアが苦手な方には、看護師が30分〜1時間の決められた時間にケアを実施します。具体的には入浴介助や歩行訓練、排泄ケアなどがあります。
血圧や体温などバイタルサイン測定を実施し、身体の不調の有無を観察するとともに、精神的な不調が表れていないか確認します。コミュニケーションを通してモニタリングを行うことで、言動や表情などから精神状態をチェックしています。
利用者様の生活サポートを担っているご家族。利用者様のケアにあたって、どうしたらいいのか不安や困難感を感じるご家族もおり、精神科訪問看護師は利用者様のご家族に対する支援も行っています。
利用者様を支える医療従事者は看護師だけではありません。医師や保健師、ケースワーカー、作業療法士や理学療法士といったセラピストなど、多くの医療従事者が利用者様の在宅療養を支えています。利用者様やご家族と一番接している看護師は、医療従事者への連絡や相談、とりまとめ等を行っています。
精神科訪問看護はどのように申請し、利用していくのでしょうか。ここでは、精神科訪問看護利用の流れについて解説します。
なお、精神科訪問看護の利用までには、保健師やケースワーカー経由での申請、医師に相談後に訪問看護ステーションを探していくなどさまざまな方法があります。
ここに記載する内容はあくまでも一例ですので、利用方法に不安がある方は、主治医や市町村の相談窓口、病院のケースワーカーなどにご相談ください。
精神科訪問看護事業所は近年増えつつあります。まだ少ないですが、一般に訪問看護事業の一部として精神科訪問看護を実施している事業所もあるため、まずは市町村や包括支援センターを活用して、精神科訪問看護事業所を調べましょう。
事業所が決まったら、精神科訪問看護の利用申請をします。
事業所に利用の申請をしたら、精神科訪問看護指示書を取得しましょう。精神科訪問看護は医師が記載した指示書がなければ実施できません。
取得後は精神科訪問看護事業所へ提出します。
精神科訪問看護事業所に申し込み後、事業者の担当者と利用者様・ご家族で面談を実施します。現時点で困っていることや悩み、看護師にしてほしいことなどをヒアリングし、全員で方向性を決定していく大切な工程です。
利用者様の気持ちを優先しながら、将来も見据えて看護計画を立てていきます。
いよいよ利用が始まります。利用者様も初めての訪問で緊張しているため、まずは自己紹介やコミュニケーションを通して、利用者様との関係構築を図ります。
精神疾患を抱えながら生活する方からは、経済面やお金についての心配を聞くこともあります。また、今後の生活や社会復帰について気にされる方もおり、在宅療養で利用できる制度は知っていて損はないでしょう。
ここでは、在宅療養で活用したい制度の一覧を紹介します。
精神障害者保健福祉手帳は、ある一定の精神状態にあることを示す手帳です。
精神障害者福祉手帳を申請することで、さまざまな公的支援を受けることができます。
精神障害者福祉手帳の対象疾患は以下の通りです。
◎統合失調症
◎うつ病、そううつ病などの気分障害
◎てんかん
◎薬物依存症
◎高次脳機能障害
◎発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
◎そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
※厚生労働省:みんなのメンタルヘルスから抜粋
税金の免除、公共交通機関の割引といった制度もあり、対象疾患であれば申請しておきましょう。
精神通院医療は、精神障害者保健福祉手帳の所有の有無に関わらず、精神疾患があることを認められれば使用できます。
病気の治療に欠かせない通院費を助成(自己負担1割)し、さらに所得に応じて上限額が変化するため、治療費の抑制につながる制度です。
現在治療中の方だけでなく、再発予防のための通院についても対象となります。
対象疾患は下記の通りです。
(1)病状性を含む器質性精神障害
(2)精神作用物質使用による精神及び行動の障害
(3)統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
(4)気分障害
(5)てんかん
(6)神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
(7)生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
(8)成人の人格及び行動の障害
(9)精神遅滞
(10)心理的発達の障害
(11)小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害
※(1)~(5)は高額治療継続者(いわゆる「重度かつ継続」)の対象疾患
※厚生労働省ホームページより引用
精神疾患を抱える方の就労支援には下記の4種類があり、就労者の社会復帰をサポートしています。利用料として1割の自己負担がありますが、前年度の収入がない場合は0円で支援を受けられます。
〇就労移行支援
就労に至るまでのサポート。技術やスキルを身につけ、就活支援が受けられる。
〇就労継続支援A型
通常の雇用契約に基づいた就労をサポートする。就労が継続するよう、各種福祉サービスを活用した支援が受けられる。
〇就労継続支援B型
一定の水準に満たない技術力でも賃金が発生する就労をサポートする。雇用契約の締結が難しい方でも利用出来る。
〇就労定着支援
就労が継続するようアドバイスや日常生活における課題解決のための支援を行う。
利用者様の意欲や体調を見ながら状況支援制度を利用していきます。
当然ですが、強要などはないため、利用者様のペースで利用していくとよいでしょう。
施設によっては交通費や昼食代の補助があるため、事業所選びも大切です。
短期レスパイト入院は、ご家族の精神的・身体的な負担を減らすために、利用者様の一時的な入院をサポートする制度です。
原則2週間以内の入院であることが条件ですが、ご家族の外出や休養に役立っています。
入院の際は、精神科病院に問い合わせるか、訪問看護師に相談しましょう。
精神科訪問看護では、利用者様の日常生活を最大限サポートできるよう日々尽力しています。利用者様の悩みや困難感を減らすためにも、訪問看護師や制度を上手く利用しましょう。
コルディアーレでは、看護師同士でチームを組み、都度話し合いながら利用者様の支援を行っています。
精神科訪問看護の利用を検討している方はお気軽にお問い合わせください。