「傾聴が大事って聞いたけど方法を知りたい…」
「傾聴ってそもそもなに?」
「傾聴を用いたコミュニケーションのポイントやスキルを高める方法を知りたい…」
と悩んでいませんか?
傾聴は、相手の話に耳を傾けて、姿勢や表情などを通して訴えようとしている内容を理解することです。
この記事では、傾聴の定義、三原則を解説します。また、傾聴の方法や、コミュニケーションのポイント、傾聴スキルを高める方法について解説します。
傾聴は「相手の話に注意深く耳を傾けることで、単なる言語的コミュニケーションではなく、相手が姿勢、表情、態度を通して訴えようとしていることを理解しようとするもの」と定義されています。
訪問看護師は、利用される方や家族の訴えを傾聴して、信頼関係の形成を行います。
その後、利用されている方や家族が抱えている悩みの問題解決に向けて支援する役割があるのです。
参考:日本ヒューマンケア科学会誌「看護における「傾聴」の概念分析」
傾聴には、ロジャースが提唱した3つの原則があります。
◎純粋性(自己一致)
◎共感的理解
◎無条件の肯定的態度
1つずつ解説します。
看護師が利用される方や自身に対して、誠実な姿勢で向き合うことです。もし、利用される方や家族の訴えている内容が分かりにくいと感じたときは、分かりにくいと伝えましょう。
訴えの内容を分かっていない状態では、利用される方や家族に対して失礼となり、純粋性に反してしまいます。
話している内容を利用される方や家族の立場で考えて、理解することです。共感的理解を利用される方や家族に示すと、自分の話を聞いてもらえていると安心感につながります。
しかし、共感的理解により、看護師自身が疲労を感じてしまうこともあると報告されています。
疲労感があると、利用される方への関心が低下したり、会話を避けたりする可能性があるのです。
疲労を感じた状態が長期的に続くと不調を来してしまうリスクがあるため、適度にストレス解消を図りましょう。
もし共感的理解を行い、訪問看護師が疲労を感じたときには、自分自身を見つめ直して成長の機会になる可能性があるとされています。
共感的理解を行う際は、自身のストレスとも向き合うことが大切です。
参考:日本ヒューマンケア科学会誌「看護における「傾聴」の概念分析」
利用される方の訴えに対して看護師の評価は行わず、肯定的に受け入れることです。肯定的な態度を取ると利用される方や家族は安心して、自分の感情を言葉にしやすくなります。
感情を言葉で表現できると問題が明確になり、解決に向けた行動を考えられるでしょう。
傾聴の方法は、相手の話を聞く割合を増やして、自分の意見はできるだけ減らすことです。
相手は自分の思いを聞いてほしいと希望しており、あなたに訴えています。
話を聞いてほしいときに否定されたり、意見を言われたりすると、話し手は「今後この人に話すのはやめておこう」と感じてしまい、本心を聞く機会を逃してしまいます。
本心を聞けない場合は利用される方の抱えている問題や悩みが分からず、精神科訪問看護で問題解決に向けたケアができません。
傾聴を用いたコミュニケーションで気をつけるポイントは、下記の5つです。
◎相手の話を遮らない
◎訴えを否定しない
◎沈黙を我慢する
◎態度・姿勢・表情を意識する
◎場所や雰囲気を調整する
それぞれ解説します。
傾聴の際は、相手の話をしっかり聞きましょう。相手が話している途中で看護師が口を出してしまうと、途中で話をやめてしまったり、本心を聞けなかったりします。
利用される方は、あなたに相談したいと思って話しています。もし、相談した相手に否定されてしまうと、利用される方は相談をやめてしまいます。
上記で解説した無条件の肯定的態度にあるとおり否定はせず、利用される方の意見を受け入れることで、信頼関係の形成や安心を感じてもらえるでしょう。
信頼関係が形成され、安心感を得られると、本音で話してもらえる可能性が高まります。
沈黙は、ほとんどの会話で短い時間です。たとえば、普段の会話で話し手が変わるときの沈黙時間は0秒であり、同じ発言者が次の会話を始めるまでの沈黙は2.5秒以内です。
しかし、精神的な障害を抱える方の沈黙は、自分の感情を言葉で表現するために悩んでいる時間の可能性があります。
沈黙に耐えきれず、訪問看護師が話を始めると本心を聞き逃してしまうかもしれません。
沈黙の時間に利用される方が悩んでいる表情をしているときは、じっと待つと本心を聞けるかもしれないため、沈黙が長くても我慢することが大切です。
態度・姿勢や表情は、傾聴を行うときに意識しましょう。
話している相手に身体を向けたり、目を見て話を聞いたり、少し前かがみの姿勢になったり、柔らかい表情で聞いたりすると、話している方は安心できます。
もし、聞き手の姿勢が手を組んでいたり、相づちがなかったりすると話を聞きたくないと話し手に思われてしまうのです。
特に、手や足を組む動作・不機嫌な表情などの非言語的コミュニケーションは相手に伝わりやすいため注意しましょう
ある研究によると相づちの有無によって、親しみやすさ・誠実さ・付き合いやすさなどに優位に差があると報告されています。
態度・姿勢・表情すべての意識は、最初から難しいため、1つから始めてみましょう。
参考:実験社会心理学研究「対話状況における聞き手の相づちが対人魅力に及ぼす効果」
傾聴を行うときは、場所や雰囲気が重要です。
周囲が騒がしかったり、話している内容が他の人に聞かれる可能性がある環境だったりすると、精神的な障害を抱える方は安心して話ができません。
たとえ、自宅に訪問したときでも、家族と同居していると話しづらいと感じる方もいます。
利用される方から相談があると言われた場合は、周囲に人がいない静かな場所に案内して、話を聞きましょう。
傾聴力を高める方法は、主に下記の4つです。
◎相手を尊重する
◎ペーシング
◎ミラーリング
◎バックトラッキング
ここで紹介するスキルは、最初は難しくても繰り返し練習すると傾聴力を高めることが可能です。1つずつ見ていきましょう。
相手の価値観や意見を尊重しましょう。
訪問看護師の価値観と利用される方の価値観は違うため、共感できないこともあります。慣れないうちは、利用される方の考えに賛同できなかったり、受け入れられなかったりするかもしれません。
しかし、相手の話を否定せず、受け入れる姿勢を繰り返すと利用される方を尊重できるようになるでしょう。
ペーシングとは、声の大きさや会話のスピード、呼吸や相づちを合わせることです。
利用される方がゆっくり話しているときは、同じペースに合わせます。また、声の大きさなども合わせると、信頼関係の形成につながります。
ミラーリングとは、相手と同じ仕草や表情をすることです。同じ仕草や表情をされると、安心感を抱いたり、信頼関係の形成につながったりします。
ある研究によると、ミラーリングを使用したときは使用しないときと比較して、話し手が聞き手に対して「共感してもらえた」「安心して話ができる」と感じたと報告されています。
しかし、不自然にミラーリングを繰り返すと、真似をしていると不快に感じてしまうため気をつけましょう。
参考:Japanese journal of counseling science「心理臨床場面でのノンバーバル・スキルに関する実験的検討-カウンセラーのミラーリングが共感の認知に与える影響について-」
バックトラッキングとは、いわゆるオウム返しのことです。
バックトラッキングを利用すると、話し手に自分の言いたいことや感情を理解してもらえたと肯定的に感じてもらえるでしょう。
たとえば、「今日はショックなことがありました」と相談されたら「ショックなことがあったんですね、それは辛いですね」と相手の言葉や感情を言い換えたり、要約したりして返答します。
しかし、バックトラッキングを繰り返したり、相手の言ったことをそのまま返答したりすると、意味を理解していない、自分の話を聞いていないと思われてしまう可能性があるため注意しましょう。
今回は、傾聴を用いたコミュニケーションについて解説しました。
傾聴を行うときは、相手に話してもらう割合を増やして、聞き手は相づちなどの聞いている姿勢が重要です。
また、傾聴を用いたコミュニケーションでは、下記の5つが重要です。
◎相手の話を遮らない
◎訴えを否定しない
◎沈黙を我慢する
◎態度・姿勢・表情を意識する
◎場所・雰囲気
傾聴は、繰り替えして実践するとスキルアップが可能です。傾聴のスキルが高くなると、利用される方の抱えている悩みを相談してもらい、悩みの解決に向けた提案ができるようになります。
コルディアーレは精神科に特化した訪問看護ステーションです。当ステーションでは、精神科訪問看護の経験が豊富な社員が多く、スキルの向上に期待できます。
精神科訪問看護に興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。