精神疾患を抱える方の看護は、利用者様と信頼関係を築き、長期間かけて関わることができるやりがいのある仕事です。
しかし同時に、身体疾患を対象とした訪問看護や精神科病棟での看護とも違う部分があるため、利用者様との関わり方に悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、精神科訪問看護師が実践している看護のコツを詳しくご紹介します。
精神科訪問看護の目的は、精神疾患を抱える方が自宅や地域社会で「その人らしく在宅生活を送れるようサポートする」ことです。
身体的疾患の看護をする訪問看護や、精神科病棟とは違う精神科訪問看護の役割をふまえたうえで、精神科領域の在宅看護のポイントを見てみましょう。
精神科訪問看護の仕事内容とは?看護師の役割やスケジュールを解説!
訪問する前に、利用者様の様子や特性などをしっかり確認してきましょう。自身の看護に役立つだけでなく、会話の糸口にも繋がりますよ。
【事前に確認しておきたい情報】
精神疾患は、同じ病名であっても現れる症状は人によりさまざまです。
家族や地域性など、在宅生活をとりまく環境も利用者様により違うでしょう。
そのため、事前に利用者様のことをしっかり知っておく必要があります。
医師の指示書だけでなく、可能であれば利用者様に関わっている他機関の担当者などから情報収集をしましょう。
なかには、精神科訪問看護の導入に意欲的ではない利用者様もいらっしゃいます。
精神科訪問看護の利用を拒否していなかったとしても、本人が希望して精神科訪問看護を導入するのか、家族の意向なのか、医師の指示なのかによって対応が違ってくるでしょう。
精神科訪問看護を導入することになった経緯や、利用者様本人は精神科訪問看護の導入に同意しているかも確認しておきましょう。
人間関係は第一印象が重要なように、訪問看護も初回の印象が大切です。
印象が悪くならないよう、初めての訪問はより丁寧なやり取りを心がけましょう。
初回訪問では、看護師は事前情報を得たうえで訪問しますが、利用者様はどのような看護師が来るのかわからず緊張しています。
警戒心が強い方もいるかもしれません。
最初に笑顔で自己紹介し、自分のことを知ってもらいましょう。
また、利用者様のことを知ろうと一生懸命になりすぎて初回から質問ばかりしてしまうと、相手も良い印象は持てません。
まずは「利用者様の生活を支える」という、訪問の目的を伝えてください。
看護師は指導や管理する立場ではなく、利用者様が安心して在宅生活を送れるよう支援するサポーターであることを理解してもらいましょう。
精神疾患を抱える方の症状は、客観的にわかる症状だけでなく、幻覚や幻聴など本人とコミュニケーションを取りながら見えてくる症状が多くあります。
たとえば「心がザワザワする」など、利用者様の心の状態は、利用者様自身に教えていただくしか知ることはできません。
そのためコミュニケーションを重ね、利用者様が自分のことを話せる信頼関係を築くことが大切です。
在宅看護は病院とは違い、利用者様はより自分らしい姿で生活しています。
その生活の場に訪問するため、看護師は利用者様一人ひとりに合わせたコミュニケーションを心がけましょう。
訪問に拒否的な利用者様の場合は、あせらず時間をかけてコミュニケーションを重ねてみてください。
家庭環境や利用者様を取り巻く周辺環境の乱れは、症状の悪化につながることがあります。
訪問時間内の利用者様の様子だけでなく、普段の生活に問題がないかを注意深く観察することが大切です。
特にご家族との関係性は、精神面を左右する重要なポイントになる場合があります。
ご本人の希望だけでなくご家族の希望も伺い、看護師が間に入り家族の理想の生活を実現できるよう支援しましょう。
また、精神疾患をお持ちの方の中には、社会的なルールが苦手だったり、コミュニケーションがうまく取れなかったりし、近隣住民とトラブルになる方もまれにいらっしゃいます。
就労支援などを利用している利用者様の場合は、支援事業所でのトラブルなどもあるかもしれません。
必要時は看護師が介入し、利用者様を取り巻く周辺環境全体を整えましょう。
精神疾患を抱えた方の症状がさまざまなように、精神科領域の看護は答えが一つではありません。
利用者様と看護師の関係性や、看護師の考え方の違いにより、何通りもの看護が考えられるでしょう。
その奥深さが精神科訪問看護のやりがいでもありますが、利用者様との関わり方に悩むポイントかもしれません。
担当だからと一人で悩むのではなく、訪問看護ステーションのチーム全体で利用者様の看護をしていることを忘れないようにしましょう。
チームで協力して看護にあたるためには、積極的に情報を共有し相談することが大切です。
チーム全体で意見を出し合うことで、多様な看護の方向性が見いだせるでしょう。
また、利用者様の社会生活を支えるために、訪問看護ステーション内だけでなく、病院や精神保健福祉相談員など多職種とも積極的に連携を取りましょう。
精神科訪問看護における在宅看護のコツ以外にも、精神科訪問看護師として働くうえで大切なことがあります。
◼️背景を含めた利用者様の生活全体を看る
精神疾患を抱えている方の看護は、精神症状だけでなくその方の性格や考え方、家族や周囲の状況、年齢や性別など、利用者様の背景を含めた生活全体を看ることが大切です。
自分の価値観を通して利用者様を捉えるのではなく、広い視野で利用者様を受け止められるように努めましょう。
◼️精神科訪問看護の目標を知る
精神科訪問看護の大きな目標は、再入院などせずに在宅生活を継続することです。
看護師として関わるなかで、症状の改善がみられず成果が出ないと焦らないでください。
精神疾患の看護は長期になることが多く、すぐに利用者様の変化がみられるわけではありません。
利用者様の変容を過度に期待しすぎないようにしましょう。
◼️自分自身が影響を受けないようにする
精神科訪問看護は、利用者様の言動に自分が傷ついたり、感情移入しすぎて自分の精神状態が落ち込んだりして疲れてしまうこともあるかもしれません。
自分自身が影響を受けすぎないように、対処法を知っておきましょう。
精神科訪問看護で多くの看護師がきついと思う場面の対処法は、次の記事で紹介しています。
精神科領域の在宅看護のポイントは、利用者様の生活の場で利用者に寄り添うことです。
そのポイントをおさえて、看護のコツを実践してみましょう。
コルディアーレでは、心のこもったお手伝いをモットーに精神疾患を抱える方の看護をチーム全体でできる事業所づくりをしています。
さまざまな社内研修も実施しており、看護師個人の知識を高めながらチームで利用者様の看護ができる環境を整えています。
ご興味がある方は、どうぞお気軽にお問合せください。