精神看護は精神疾患を抱える方のみならず、精神的なケアが必要な人すべてが対象です。
人間は誰しも精神的な悩みや不安を抱えることがあるため、一般病棟から介護施設、訪問看護まで看護師が働くすべての職場において、精神看護の知識が役立つでしょう。
今回は、精神看護で大切なことをスキル編・心構え編にわけて紹介します。
精神看護における看護師の役割は、精神的なケアが必要な人に対し、その人がその人らしく生活できるよう支援することです。
直接的な介助のみならず、対象となる人が自ら考え行動し、自分自身でより良い生き方を見出せるようサポートする必要があります。
どのようなことを大切に精神看護にあたるべきか、次項で詳しく見てみましょう。
心のケアを重要視する精神看護は、対象となる方とのコミュニケーションからはじまります。
また適切な判断をするための知識と観察力、アセスメント能力が欠かせません。
対象となる方の精神的サポートをするためには、信頼関係を築くことが大切です。
そのためには、その人にあわせた接し方やコミュニケーション技術が必要となります。
なかには「会話」というかたちでのコミュニケーションが苦手な方もいるため、話し方だけでなく会話以外のコミュニケーションスキルを磨いておくことも必要になってきます。
コミュニケーションのコツや技法は、次の記事でも具体的に解説しているので参考にしてみてください。
精神疾患を抱える方とのコミュニケーション方法を精神科訪問看護師が解説!
疾患の正しい知識を身につけることは、精神看護を必要とする人の理解を深めるためにも大切です。
精神的な問題は、性格や生活背景などが深く関係し個別性が強いため、疾患名だけに当てはめられないのは当然です。
しかし、疾患の正しい知識を身につけることで基準となる判断指標がはっきりするため、対象となる方への理解も深まりやすくなります。
正しい疾患の知識を持つことは相手の言動に振り回されすぎず、自分自身を守ることにもつながります。
精神看護は会話のなかだけでなく、しぐさや雰囲気、身の回りのものなども含め、さまざまなとろこから相手の精神面を読み取る観察力が大切になります。
たとえば、いつもより声のトーンが低い、いつもより急いでいる感じがする、いつもより身だしなみが乱れているなど「いつもと少し違う」という感覚を大切にしてみてください。
「いつもと違う」相手の変化が、コミュニケーションのきっかけや疾患の知識に基づくアセスメントの材料になります。
また観察すること、相手の「いつも」を知ろうとすることは「相手の心に寄り添った看護」につながるのではないでしょうか。
精神看護のケアの方法は、人によりさまざまで正解はありません。
また、ケアの成果が客観的にわかりにくかったり、変化が見られるまでに時間がかかったりすることもあります。
それらをふまえたうえで、心のケアをする看護師の心構えとして大切なことを理解しておきましょう。
精神看護では、その人らしさを認めることが大切です。
疾患の知識は身につけておくべきですが、疾患のみにとらわれすぎず、その人の性格や価値観を認めるようにしましょう。
また看護師も人間であるため、場合によっては相手との関わりのなかで自分の価値観では理解できないことがあるかもしれません。
しかし精神看護の基本はその人らしさの尊重であることを忘れずに、個人の性格や背景に考慮し総合的に捉えるように努めましょう。
精神看護は相手とじっくり関わることが大切です。
心のケアを懸命にしても、人により精神的変化が見られるまでに時間がかかる場合や、内面的な変化が表面上に現れにくい場合があるかもしれません。
もちろん人と人との関わりなので、相手とうまく関係を築くことができないこともあるでしょう。
場合によっては、一生懸命看護してもうまくいかず疲れてしまう看護師もいます。
そのため精神看護では相手の変化に期待しすぎず、じっくりと関わることを大切にしましょう。
人間関係を築くことからはじまる精神看護ですが、相手との距離感に気をつけることも看護師として大切な心構えのひとつです。
精神的にケアが必要な方は、時として興奮状態になったり依存的になったりする場合もあります。
日ごろからサポートしている方の言動に、看護師の感情も揺さぶられるかもしれません。
しかし看護師は専門的な知識を持つプロとして、どのような状況でも冷静かつ適切に相手を見なければなりません。
そのため、日ごろから相手と良い人間関係を構築しつつも、相手との距離感も大切にしておきましょう。
在宅医療の推進により、精神看護に特化した精神科訪問看護ステーションは増加傾向です。
精神科訪問看護では、利用者様が住み慣れた場所でより自分らしい生活が送れるようにサポートしなければいけません。
そのため精神科訪問看護師として利用者様と関わる際には、つぎの3つのポイントを大切にしましょう。
利用者様がその人らしく自立した生活を支援する精神科訪問看護では、より生活全体を見る視野の広さが大切になってきます。
たとえば利用者様の歩んできた人生やご家族との関係、住んでいる地域社会など、さまざまな要素を幅広く見る必要があります。
視野の広さがあれば、利用者様の悩みや不安を直接解決するような看護だけでなく、利用者様が自立して解決できるように導くためのサポートができるでしょう。
精神科訪問看護では、ご本人のテリトリーである自宅へ訪問する意識を持つことも大切です。
人間は誰でも「外と内の顔」があったり、その場所にあわせた対応をしたりするものです。
そのため利用者様も病院や外出先での看護師との接し方と、利用者様のホームである自宅での接し方には違いがあるうえ、相手に求める対応も違ってくるでしょう。
精神科訪問看護師は、利用者様のもっともプライベート空間である自宅を訪問していることを忘れずに、適切な接遇マナーを心がけましょう。
自分を犠牲にしすぎないことも精神科訪問看護において大切なことです。
精神科訪問看護では自宅に訪問し利用者様やご家族と深く関わっていくと、看護師自身が感情移入しすぎて辛いと感じることや、利用者様から素直な感情をぶつけられて悲しい気持ちになることもあるかもしれません。
利用者様の生活をサポートする仕事としてやりがいを感じながらもストレスを溜めないようにするには、自分を犠牲にしすぎないようにする対処法を理解しておきましょう。
ストレスの対処法や、危険時の対処法は次の記事を参考にしてみてください。
精神看護とは精神的なサポートが必要な方すべてが対象です。
精神看護において大切なことを理解しておくと、看護師としてさまざまな人を看護する際に役立つでしょう。
コルディアーレでは精神科訪問看護という仕事を通して、精神看護のスキルや利用者様との関わり方が学べます。
未経験者の方でも安心して仕事ができるように、充実した研修もご準備していますので、精神看護に興味がある方はお気軽にお問合せください。