コラム詳細
2021/10/26
autorenew2023/11/02
障がい者への『虐待』に当てはまるのはどんな行為?障がい者雇用における虐待の届け出データを解説
2020年8月、厚生労働省から使用者による障がい者虐待の状況等についてのレポートがリリースされました。
この記事では、レポートを元に障がい者雇用における虐待の現状をまとめています。
そもそも虐待とは何なのか、具体的な虐待のケースにはどのようなものがあるのかといった内容も解説していますので、
障がい者雇用担当者様や、職場に障がい者社員がいるという方はぜひご覧ください。
【目次】
1.虐待の通報・届出数、実際に認められた件数は共に減少
2.虐待の5つの定義と具体的なケース
3.虐待の詳細【虐待の種類別・障がい別・業種別】
4.まとめ
1.虐待の通報・届出数、実際に認められた件数は共に減少
2019年度の虐待の「通報・届出件数」は、2018年度に比べ減少しています。
対象となった障がい者数は約10%減少の1,741人、事業所数は約12%減少の1,458事業所という結果になりました。
<図:通報・届出のあった事業所数及び対象となった障がい者数>
参考:厚生労働省『令和元年度使用者による障害者虐待の状況等』
事業所数は2018年まで増加傾向だったものの、2019年に減少に転じました。
障がい者数は2017年をピークに、その後減少傾向にあります。
上記のデータはあくまで「通報・届出件数」ですが、「実際に虐待と認められた件数」も同様にやや減少しています。
<図:実際に虐待と認められた事業所数及び対象となった障がい者数>
参考:厚生労働省『令和元年度使用者による障害者虐待の状況等』
事業者数は約1%と微減ではありますが、障がい者数は2017年をピークに減少傾向にあります。
2.虐待の5つの定義と具体的なケース
障がい者雇用における虐待は、『障害者虐待防止法』によって定義され、5つに分類されています。
ここからは、それぞれの虐待について具体例と共に解説します。
身体的虐待
障がい者の身体へ暴行を加えたり、正当な理由なく身体を拘束したりすること
<具体例>
品質確認の作業ミスをした障がい者に対して上司が注意したが、
無視されたことから手をあげる暴行を複数回行った。
性的虐待
障がい者にわいせつな行為をする/させること
<具体例>
障がい者にわいせつな会話を繰り返し、
本人から事業主に相談があったにも関わらず改善しなかった。
心理的虐待
障がい者に対する暴言や拒絶的な対応、差別的言動、その他心理的外傷を与える言動を行うこと
<具体例>
障がい者の社内ルール違反を繰り返し注意したのに改善しなかったため、感情的になり「アホ」などと人格を無視した発言をした。
放置等による虐待
障がい者を衰弱させるような減食や長時間の放置、上記3つの虐待と同様の行為を放置すること
<具体例>
障がい者に具体的な指示をしないことから円滑な業務が出来ていないにも関わらず、ミスが起こった際に厳しい口調で叱責した。
経済的虐待
障がい者の財産を不当に処分すること、その他障がい者から不当に財産上の利益を得ること
<具体例>
障がい者入社時の約定賃金額が時給換算で地域別最低賃金より約20円下回り、
さらに半年後、本人に相談なく地域別最低賃金を約50円下回る変更がされていた。
3.虐待の詳細【虐待の種類別・障がい別・業種別】
2019年に実際に虐待が認められたケースの詳細を見ていきましょう。
虐待の種類別
最も多い虐待の種類は「経済的虐待」で、全体の約85%を占めています。
<図:障がい者が受けた虐待の種類>
参考:厚生労働省『令和元年度使用者による障害者虐待の状況等』
経済的虐待の代表例である「最低賃金額を下回る」事態が発覚した場合は、
労働基準監督署から最低賃金額との差額を支払うよう是正指導が行われます。
障がい別
障がいの種類別に見てみると、最も虐待の人数が多かったのは「知的障がい者」で全体の約46%でした。
<図:虐待を受けた障がい者の障がいの種類>
参考:厚生労働省『令和元年度使用者による障害者虐待の状況等』
一方、障がい別の雇用数は身体障がい者が最も多く、次いで知的障がい者、その後に精神障がい者となっています。
つまり、発達障がい者を除くと、障がい別の雇用数と虐待件数とは逆転しており、
知的障がい者への虐待発生率が高い状況にあることが分かります。
虐待の種類×障がい別
虐待の種類と障がい別に掛け合わせると、どのような虐待が多いのか見てみましょう。
<図:障がいの種類・虐待の種類別の虐待件数>
身体的虐待 | 性的虐待 | 心理的虐待 | 放置等による虐待 | 経済的虐待 | |
身体障がい | 6 | 1 | 13 | 5 | 139 |
知的障がい | 14 | 1 | 20 | 11 | 317 |
精神障がい | 4 | 5 | 22 | 2 | 191 |
発達障がい | 4 | 1 | 7 | 1 | 20 |
その他 | 0 | 2 | 1 | 0 | 9 |
参考:厚生労働省『令和元年度使用者による障害者虐待の状況等』
先述の通り最も件数が多いのは経済的虐待で、その中でも知的障がい者の人数が最も多く、
次に人数の多い精神障がい者と比べて約125名ほどの差があります。
業種別
次に、虐待が起きている職場の業種別のデータを見てみます。
<図:虐待が認められた事業所の業種内訳>
参考:厚生労働省『令和元年度使用者による障害者虐待の状況等』
最も虐待件数の多かった業種は「製造業」、次いで「医療、福祉」、「卸売業、小売業」でした。
ただし、そもそも障がい者の実雇用率は業種によって大きく違いがあるため、
虐待件数と実雇用率との関係性を調べてみました。
<図:虐待件数の多い10業種の虐待件数割合と、実雇用率>
参考:厚生労働省『令和元年度使用者による障害者虐待の状況等』
厚生労働省『令和元年 障害者雇用状況の集計結果』
※『令和元年 障害者雇用状況の集計結果』では、”農業・林業”、”その他”にあてはまる業種がないため上記グラフでは除いています。
2つのデータを俯瞰して見てみると、やや関係していそうな傾向が見られなくはないものの、
数値の動きに規則性はあまりなく、単純に「障がい者雇用率が高い業種だから虐待件数も多い」という
数値的な関連性は見られませんでした。
4.まとめ
この記事では、厚生労働省からリリースされたレポートを元に障がい者雇用における虐待の現状を解説しました。
虐待の件数は昨年と比べて減少しているものの、まだまだ多く報告されています。
障がい者雇用を行う際は、一般的な雇用と同じくハラスメントや虐待へ気を配るとともに、
障がいによる差別等をなくし合理的に配慮しながら雇用していく必要があります。
しかし、障がい者雇用を行う上では課題も多く、悩みを抱えている担当者様も多いのではないでしょうか。
株式会社JSHでは、
「募集しても採用につながらない…」
「業務の切り出しがうまくできない…」
「何かとトラブルが多く、定着率が低い…」
といった障がい者雇用に関する様々な課題を持つ企業様に向けて、
採用から定着まで包括的なサポートサービスを提供しています。
障がい者雇用にお悩みの担当者様は、ぜひお問い合わせください。
---------------------------------------------------
▼JSHの障がい者雇用支援サービスについて詳しくはこちら
地方の農園を活用した障がい者雇用支援サービス『コルディアーレ農園』
---------------------------------------------------
おすすめ記事
-
2025年4月15日
autorenew2025/04/15
法定雇用率達成に向けた、雇用障がい者数の計算をシミュレーション付で解説
「法定雇用率を達成するために、詳しい計算の仕方を知りたい」 「自社で法定雇用率を達成するために必要な、障がい者の雇用人数を正確に把握したい」 このように、法定雇用率で自社に求められる障がい者の雇用人数を計算する方法をきち […]
詳細を見る
-
2025年4月11日
autorenew2025/04/11
障害者差別解消法を守るために就労面ですべき3つの取組みを徹底解説
「障がい者雇用を進めるにあたって、障害者差別解消法という法律を知った。対応が求められる事例はサービスを提供する局面ばかりのようだけれど、企業として就労面で気を付けることはないのか」 「障害者差別解消法を遵守するために、就 […]
詳細を見る
-
2025年4月8日
autorenew2025/04/08
【事例あり】障がい者雇用のよくあるミスマッチと回避のための取り組み
「障がい者雇用の課題の一つとしてよく挙げられる『ミスマッチ』とは、具体的にどのようなものなのだろう?」 「障がい者雇用におけるミスマッチを回避するためには、どんな取り組みが必要だろうか?」 障がい者雇用について検索をして […]
詳細を見る