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calendar_today2020/09/11

autorenew2023/11/06

【障がい者雇用】世界の障がい者雇用制度!今後の日本の法定雇用率の展望

2021年3月に障がい者法定雇用率が「2.3%」へ引き上げられる予定があるように、障がい者を取り巻く「考え方」「雇用制度」「支援体制」は日々変化しています。

これは日本だけでなく世界も同様です。

現在、世界の国々ではどのような障がい者雇用制度が定められているのでしょうか。代表的な国の制度を比較する中で、障がい者雇用の二極化する考え方が見えてきましたのでまとめました。

今後の日本の障がい者雇用制度の展望にも関わる部分も多くあるかと思われます。是非、ご覧ください。

 

日本の障がい者雇用制度の変遷

世界の障がい者雇用制度の紹介

①ドイツの制度

②フランスの制度

③韓国の制度

④アメリカの制度

⑤イギリスの制度

二極化する障がい者雇用に対する考え方

まとめ

 

日本の障がい者雇用制度の変遷

日本で初めて法定雇用率の制度が制定されたのは1960年のこと。

当初は義務付けというより努力目標のような形で、工場など現場的事業所は「1.1%」、事務的事務所は「1.3%」という雇用率が定められていました。

 

1976年になると雇用率は努力目標から義務雇用へと変わっていきます。

このタイミングで民間企業の法定雇用率は「1.5%」へと引き上げられました。

 

当初、法定雇用率の対象は「身体障がい者」のみでしたが、

段階的に「知的障がい者」や「精神障がい者」などにも対象の枠が広げられ、

それにあわせて法定雇用率の引き上げも行われてきました。

 

そして2020年8月現在、日本の法定雇用率は「2.2%」で

来年2021年3月には0.1%引き上げられた「2.3%」になる予定です。

 

世界の障がい者雇用制度の紹介

日本の障がい者雇用は前述の通りですが、日本以外ではどのような障がい者雇用制度を実施しているのでしょうか。

今回は代表的な5つの国を例にあげまして、日本との比較や制度内容をご紹介します。

 

①ドイツの制度

実は、日本の障がい者雇用制度はドイツの制度をもとにつくられた背景があります。

そのため、制度の内容は日本と似ている部分が多々見受けられます。

 

まず、雇用制度上の障がい者の定義です。

日本と同様にドイツでも定義づけがされているのですが、その範囲は日本より広いものとなっています。

 

ドイツでは障がい度が50以上の障がい者を雇用制度上における障がい認定の対象としています。(※障がい度が30~40でも福祉制度上は障がい者と認定されます。)

この障がい度とは援護局で鑑定されるもので、主治医と援護局の内部医師の鑑定意見等をもとにして0~100を10単位で区切った数値で判定されます。

 

ドイツの全人口に占める障がい度50以上の人数は約9.5%で、

日本の全人口に占める障害者手帳保持者4.4%と比べると倍以上の数字となっていて、雇用制度上の障がい者の対象の範囲が日本よりも広いと言えます。

 

対象の範囲が広いためか、ドイツの法定雇用率は「5%」で日本の「2.2%」の倍以上、実雇用率に関してもドイツは「4.6%(2016年時点)」で日本の「約2.1%」の倍以上となっています。

 

法定雇用率が未達成であった企業へのペナルティも、日本でいう納付金制度の考え方と似ています。

少し違うところは“雇用率に応じて段階的にペナルティ額が決まる”というところです。

 

雇用率 基準額
3~5% 不足人数 × 125€/月
2~3% 不足人数 × 220€/月
0~2% 不足人数 × 320€/月

 

障がい者を雇用する義務は従業員が20名以上の事業所に対して課せられ、雇用率が法定雇用率の5%に近ければ近いほどペナルティの基準額が少なくなります。

ペナルティの基準額は雇用率が0~2%でも年間約49万円なので、日本の60万円に比べると負担は少ないですね。

 

日本と同様に、障がい程度による複数カウント制度もあります(最大3カウント)。

ドイツの雇用制度の特徴である障がい度では、50未満であっても年齢(若年成人)等の条件を満たせばカウント対象となるケースもあります。

 

②フランスの制度

フランスでの障がい者の定義は福祉制度上の定義に加え、国際生活機能分類( ICF) の「障がい」の捉え方を基本としています。

障がい者認定は県障がい者センター内にある障がい者権利自立委員会が、センター内の学院チームが鑑定した能力低下率(0~100 %)の範囲に応じて実施します。

ICFの考え方を大まかに言うと、医学的な知見だけではなくコミュニティへの参加など生活の部分でも何かしらのハードルがあるのであれば、それも障がいと見なしましょうといったものです。この考え方を含めることで障がいの枠組みは当然広くなります。

 

国際生活機能分類(ICF)についての詳細はこちらをご確認ください。

雇用義務はドイツと同じく従業員20名以上の事業所が負います。

フランスの法定雇用率は6%が定められていますが、実雇用率は2014年時点で3.3%とやや低い数値となっています。

 

法定雇用率が未達成であった企業へのペナルティは“企業規模”に応じて段階を設けています。

企業規模が大きくなればなるほど社会的責任があるだろうという理由でペナルティが増えていく仕組みです。

 

企業規模 基準額
20~199人 不足人数×最低賃金時給×400倍
200~749人 不足人数×最低賃金時給×500倍
750人以上 不足人数×最低賃金時給×600倍

 

ドイツでは最も大きなペナルティ基準でも1人あたり年間約49万円でしたが、フランスでは約77万円(企業規模が750人以上の場合)と、未達成時のペナルティが厳しいのが特徴です。

 

フランスでは障がい者権利自立委員会から障がい者労働認定を受けた障がい者は、雇用率のカウントに含まれるといった制度も存在します。

 

ほかにも

・1か月の労働時間が規定の半分未満の短時間労働者は0.5カウントする

・重複カウント制度はない(2005年に廃止)

・雇用義務の50%までみなし雇用が認められている

 (日本でいう作業所のような組織に業務を発注した額に応じてカウントする)

などもフランスの障がい者雇用制度の特徴としてあげられます。

 

③韓国の制度

韓国の障がい者雇用制度は比較的新しく、日本の制度をベースとしながら欧米の要素も取り入れた制度と言われています。

雇用制度上の障がい者の定義は1989年に心身障がい者福祉法から改正された“障がい者福祉法”で定められており、日本の手帳制度と類似する登録制度が規定されています。

韓国の全人口に占める障がい者登録者の割合は約5%で、日本の全人口に占める障害者手帳保持者4.4%より少し高い数値となっています。

 

法定雇用率は、常時50人以上の労働者を雇用する民間企業に対しては2.7%、

国・地方自治体・公共機関に対しては3%が課せられ、実雇用率は2014年時点で2.48%です。

こちらも日本と比較するとそれぞれ少し高い数値であることがわかります。

(日本の法定雇用率は2.2%で実雇用率は約2.1%)

 

法定雇用率が未達成であった企業へのペナルティは、雇用達成率に応じて段階的にペナルティ額が決まる仕組みとなっています。

 

達成率 負担金
75%以上 不足人数×75万7000ウォン/月
50-75%未満 不足人数×83万2700ウォン/月
25~50%未満 不足人数×90万8400ウォン/月
~25% 不足人数×98万4100ウォン/月

※ 障がい者を一人も雇用してない場合

126万6270ウォン/月

 

達成率が低ければ低いほど負担金が増え、達成率0%の企業に関しては日本の倍近い1人当たり年間約103万円の負担金が必要となります。

このペナルティに段階を設けていることや負担金の額が日本よりも大きいことが、日本と同じような仕組みでありながら韓国の実雇用率のほうが高い理由と考えられます。

 

他の特徴としては、日本の特例子会社にあたる「標準事業場」の制度や

2010年より試験的に導入が始まったダブルカウント制度もあります。

 

④アメリカの制度

これまでにご紹介したドイツ・フランス・韓国の3ヶ国には企業に対して障がい者雇用義務がありましたが、これからご紹介するアメリカ・イギリスは企業に対して障がい者雇用義務を設けていません。

 

アメリカでは2013年より連邦政府と年間1万ドル以上の契約をする民間企業に、被雇用者の7.0%を直接雇用する目標を設定しています。ただ、これは義務ではなくあくまで努力目標のため、達成しなくても罰則はありません。

 

なぜ、障がい者の雇用義務を設けていないのか。

それは「雇用義務制度が障がい者の能力を強調しがちとなり、かえって障がい者差別につながり得る」という考え方が根底にあるからです。

 

また、日本とは異なる労働市場の考え方も影響していると言えます。

アメリカをはじめ欧米諸国の多くでは業務ありきの「ジョブ型」雇用が推進されており、障がい者も例外ではないため、単純に雇用を創出するのが良いというわけではないと考えられています。

 

そういった背景から企業には雇用義務を設けていませんが、そのかわりに社会という大きな枠組みの中で障がい者の雇用の促進を行う仕組が作られています。

 

例として支援組織のサポートがあげられます。州により温度差はあるものの支援組織のサポートが非常に充実しており、日本では企業に任されている“サポート”の部分が支援組織に集約されています。これにより障がい者を雇用する際の、企業側の負担が少なくなります。

また、障がい者を雇用するにあたっての合理的配慮にかかったコストに対して税額控除や所得控除の仕組みも存在します。

 

⑤イギリスの制度

1944年~1995年まではイギリスでも障がい者雇用法に基づいて3%の法定雇用率が義務付けられていましたが、1995年に制定された障がい者差別禁止法により法定雇用率制度は廃止となりました。

アメリカ同様、雇用義務制度自体が差別につながり得るという考え方です。

イギリスでも支援組織のサポートを充実させ、企業が障がい者を雇用する際の負担を軽減する仕組みが作られています。

 

また、イギリスでは障がい者が仕事に関連する困難に対して援助を行う仕組みや、障がい者を新たに雇用する際に6週間分の賃金を事業主へ助成する制度なども整えられています。

 

二極化する障がい者雇用に対する考え方

5つの国の制度を比較する中で、障がい者雇用に対する考え方が二極化していることが見えてきました。

ただ、どの国も入り口は同じ「障がい者差別の禁止」「合理的配慮義務」の考えからスタートしています。

 

入り口は同じであっても日本・ドイツ・フランス・韓国では、その考えから障がい者雇用義務制度がつくられ、企業の社会的責任のもとに障がい者雇用を推進していく形となりました。

 

・イタリア(7%)

・オーストリア(4%)

・ギリシア(8%)

・中国(1.5%)

・台湾(1%)

なども雇用義務を設けている国として知られています。

※()内はその国の法定雇用率

 

一方、アメリカやイギリスのように“雇用義務制度そのものが差別につながる”という理由で、企業ではなく社会の大きな枠組みで障がい者雇用を推進している国として

・カナダ

・ノルウェー

・スウェーデン

・デンマーク

・オーストラリア

・ロシア

・シンガポール

などが挙げられます。

 

まとめ

二極化する考え方がありましたが、それぞれの国の文化・歴史をもとに今の形となっていて、どちらの考え方が良い・悪いというものではありません。

 

各国の障がい者を取り巻く「考え方」「雇用制度」「支援体制」に違いはあれど、障がい者に対する合理的配慮義務を負う企業の社会的責任が年々強くなりつつあることに違いはありません。

 

昨今の日本においては、法定雇用率の上昇や同一労働同一賃金の考え、ESGやSDGsの機運とともに高まるダイバーシティ経営への関心などがあります。

今後、障がい者雇用への取り組みは企業として“あたりまえ”になり、

外部からの企業評価にもつながる重要な項目になっていくことでしょう。

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この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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