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calendar_today2022/07/09

autorenew2023/12/14

障がい者雇用における法定雇用率とは?計算方法や企業への影響を解説

障がい者雇用における法定雇用率とは、障害者雇用促進法43条第1項に基づき、事業主が常時雇用している労働者のうち一定割合は障がい者を雇用しなければならないことが義務付けられたものです。

 

直近では2024年1月に段階的な法定雇用率の引き上げが決定いたしました。
2024年4月以降は以下の数字となっております。

2024年4月以降の法定雇用率
事業者区分 法定雇用率
民間企業 2024年 2.5% (40人ごとに1人以上雇用)
2026年 2.7% (37.5人ごとに1人以上雇用)
国・地方公共団体等 2024年 2.8% (36人ごとに1人以上雇用)
2026年 3.0% (33.5人ごとに1人以上雇用)
都道府県等の教育委員会 2024年 2.7% (37.5人ごとに1人以上雇用)
2026年 2.9% (34.5人ごとに1人以上雇用)

2024年4月以降で民間企業の場合、従業員が40人未満であれば障がい者の雇用義務はありませんが、40人以上いる企業についてはこの法定雇用率に基づき1人以上の障がい者の雇用が義務付けられているのです。
ただし、この法定雇用率を達成するためには企業で雇用すべき障がい者数を算出するための計算方法や、対象となる障がい者を正しくカウントする方法を理解しておく必要があります。

そこで、この記事では障がい者雇用における法定雇用率について理解を深めるためのポイントを解説します。

本記事のポイント
◎法定雇用率に基づく企業が雇用すべき障がい者数の計算方法やカウント方法が分かる
◎法定雇用率の達成状況が企業に与える影響を解説
◎障がい者を採用する方法や法定雇用率を高めるポイントを紹介

上記のポイントを押さえると、法定雇用率を達成できるだけでなく企業の社会的信頼まで高めることができます。
企業として法定雇用率を達成するメリットを感じると同時に、障がい者雇用を推進して法定雇用率を達成できるように、是非最後まで読み進めていただければ幸いです。

 

【目次】

1.障がい者雇用における法定雇用率とは

2.必ず知っておくべき!企業の法定雇用障がい者数の計算方法とカウント方法

3.障害者雇用における法定雇用率が企業に与える影響は大きい!【恩恵・罰則】

4.障がい者を採用するための4つの方法

5.法定雇用率を高めるために企業が取り組むべき8つのこと

6.障がい者雇用のハードルが高く感じるなら「障がい者支援サービス」がおすすめ!

7.まとめ

 


1.障がい者雇用における法定雇用率とは

冒頭でも触れたように、障がい者雇用における法定雇用率とは障害者雇用促進法43条第1項に基づき、事業主が常時雇用している労働者のうち一定割合は障がい者を雇用しなければならないことが義務付けられたものです。

法定雇用率は障害者雇用促進法の前身となる1960年に制定された身体障害者雇用促進法で初めて定められて1976年に義務化されて以来、何度も改正が行われて段階的に引き上げられてきました。
ここでは、法定雇用率について正しく理解できるよう、以下の2つの観点から深掘りしてご紹介します。

障がい者雇用における法定雇用率とは
現在の法定雇用率
法定雇用率のこれまでの推移

法定雇用率について理解を深めていきましょう。

 

1-1.現在の法定雇用率

障がい者雇用における現在の法定雇用率は、2021年3月以降に以下のように改定されました。
法定雇用率について理解を深めていきましょう。

2021年3月以降の法定雇用率
事業主区分 法定雇用率
民間企業 2.3% (43.5人ごとに1人以上雇用)
国・地方公共団体等 2.6% (38.5人ごとに1人以上雇用)
都道府県等の教育委員会 2.5% (40人ごとに1人以上雇用)

このように事業主の区分によって法定雇用率は異なり、民間企業については国・地方公共団体や都道府県等の教育委員会よりもやや低めに設定されています。

民間企業の場合、従業員が43.5人未満であれば障がい者の雇用義務はありませんが、43.5人以上いる企業についてはこの法定雇用率に基づき1人以上の雇用が義務付けられているのです。

このように事業主の区分によって法定雇用率は異なり、民間企業については国・地方公共団体や都道府県等の教育委員会よりもやや低めに設定されています。
民間企業の場合、従業員が43.5人未満であれば障がい者の雇用義務はありませんが、43.5人以上いる企業についてはこの法定雇用率に基づき1人以上の雇用が義務付けられているのです。

法定雇用率の算出方法

障がいの有無に関わらず誰もが共生できる社会を目指すだけでなく、2018年からは対象障がい者に身体障がい者・知的障がい者だけでなく精神障がい者も加えらえるようになったこともあり、法定雇用率は引き上げ傾向にあります。
なお、法定雇用率は社会の情勢を反映できるように5年ごとに見直しが行われています。

 

1-2.法定雇用率のこれまでの推移

法定雇用率は直近の2021年3月に改定されましたが、これまで5度も段階的に見直されて引き上げられてきました。
民間企業における法定雇用率のこれまでの推移は以下の通りで、法定雇用率が義務化された1976年の1.5%と2021年以降の現在を比較すると、0.8%も引き上げられていることが分かります。

法定雇用率の引き上げが行われてきた経緯やその背景、今後の予測については「障がい者雇用で押さえるべき マクロ環境5選」で詳しくご紹介しているので、参考にしてみましょう。

 

 


2.必ず知っておくべき!企業の法定雇用障がい者数の計算方法とカウント方法

障がい者雇用における法定雇用率について分かったところで、「自社の場合、何人の障がい者を雇用すればよいのだろうか」と考える方は多いことと思います。
そこで、ここでは企業の法定雇用障がい者数の計算方法とカウント方法について解説します。

 

2-1.企業の法定雇用障がい者数の計算方法

企業が雇用すべき法定障がい者数は、以下の計算方法で導き出すことができます。

企業の法定雇用障がい者数の計算方法
法定雇用障がい者数 = { 常用労働者数 + (短時間労働者数×0.5)} × 2.3%

※常用労働者・・・1週間の労働時間が30時間以上の労働者のこと
※短時間労働者・・・1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の労働者のこと

なお、短時間労働者よりも1週間の労働時間が短いアルバイトやパートスタッフは含めずに計算します。

たとえば、以下の従業員を雇用している企業があるとします。

・8時間勤務の正社員が100人
・週20~30時間勤務のパートスタッフが20人
・週20時間未満勤務のアルバイトスタッフが5人

この場合、先程の計算方法に当てはめると、労働時間が週20時間未満のアルバイトスタッフを含まない以下の計算式が組み立てられます。

{100+(20×0.5)}× 2.3%=2.53≒2人

法定雇用障がい者数を求める際、小数点以下は切り捨てとなるので、この企業の場合2人の障がい者を雇用する義務があることが分かるのです。

 

2-2.要注意!法定雇用率の対象となる障がい者とカウント方法

計算によって導き出された法定雇用率を企業が達成する際に気を付けなければならないのは、法定雇用率の対象となる障がいの種類は決められていることと、労働時間と障がいの程度によってカウント方法が異なることです
つまり、法定雇用率を達成できるだけの人数を雇用していると思っていたのに実際には判断基準とずれていたり、1人が0.5人扱いになったりして達成できていないケースがあるのです。

 

2-2-1.法定雇用率の対象となる障がい者

まず、法定雇用率の対象となる障がい者は以下の通りです。

種類 判断基準
身体障がい者 ・身体障害者福祉法による「身体障害者手帳」を所持
・障がいの程度によって1~7級の等級が決められている
知的障がい者 ・都道府県知事が発行する「療育手帳」を所持
・障がいの程度によってA(最重度)・B(重度)・C(軽度)に区分されている
精神障がい者 ・精神保健福祉法による「精神障害者保健福祉手帳」を所持
・障がいの程度によって1~3級の等級が決められている

このように、手帳を所持していることを必ず確認する必要があります。

 

2-2-2.法定雇用率における障がい者のカウント方法

次に、障がい者を1人雇用したとしても労働時間や障がいの程度によって2人と見なしたり0.5人と見なしたりする場合があるので、法定雇用率においては以下のカウント方法を参考にしてみましょう。

1週間の労働時間 30時間以上
(常用労働者)
20時間以上30時間未満
(短時間労働者)
身体障がい者 重度以外 1 0.5
重度(身体障害者手帳が1級・2級) 2 1
知的障がい者 重度以外 1 0.5
重度(療育手帳の区分がA) 2 1
精神障がい者 1 0.5または1※

※短時間労働者の精神障がい者は以下の2つの要件を満たした場合のみ「1人」とカウントする
 ①新規雇用から3年以内、または精神障がい者保健福祉手帳取得から3年以内
 ②2023年3月31日までに雇用され、精神障がい者保健福祉手帳を取得
法定雇用障がい者数が2人の企業の場合、常用労働者を2人雇用する以外に、以下のような雇用方法も検討することができるのです。

・重度ではない身体障がい者の常用労働者1人と短時間労働者2人
・重度身体障がい者・重度知的障がい者の常用労働者1人
・精神障がい者の常用労働者1人と短時間重度身体障がい者・短時間重度知的障がい者1人 など

障がい者雇用数計算表はこちらから


3.障害者雇用における法定雇用率が企業に与える影響は大きい!【恩恵・罰則】

企業が雇用すべき障がい者の人数の計算方法やカウント方法が分かったところで、法定雇用率を達成している企業はどれくらいあるのかが気になりますよね。
以下の厚生労働省の「令和2年障害者雇用状況の集計結果」によると民間企業での雇用障がい者数は57万8,292人で、法定雇用率を達成している企業は48.6%に及んでいます。

参考:厚生労働省「令和2年障害者雇用状況の集計結果

 

このように法定雇用率の達成企業と未達成企業は半々という状況になっていますが、ここではそれぞれの場合で企業にはどのような影響があるのかを紹介します。
法定雇用率は企業に義務付けられたものなので、達成すれば恩恵があり、未達成の場合は罰則があることを知っておきましょう。

 

3-1.法定雇用率を達成した企業が受けられる恩恵

法定雇用率を達成した企業には以下の3つの恩恵があります。

法定雇用率を達成した企業が受けられる恩恵
経済的な優遇措置を受けられる
社会的信頼を高められる
人材不足解消に繋がる

これらの恩恵はどのようなものか参考にしてみましょう。

 

3-1-1.経済的な優遇措置を受けられる

以下のように法定雇用率が未達成の企業からは障害者雇用納付金が徴収される一方で、達成企業にはその納付金を元に調整金や報奨金が支給されるという経済的な優遇措置があります。

障害者雇用給付金制度の概要

参考:厚生労働省「障害者雇用納付金制度の概要

 

この障害者雇用納付金制度で納付金が徴収される対象となるのは、法定雇用率が未達成かつ常用労働者100人超の企業です。
未達成の事業主からは法定雇用障がい者数と現状の雇用人数の差に合わせて納付金が徴収され、不足1人当たり月額5万円支払うことになります。
一方で法定雇用障がい者数を超過している場合、法定雇用率達成の事業主には超過1人当たり月額2.7万円の調整金が、障がい者を多数雇用する中小企業事業主には超過1人当たり月額2.1万円の報奨金が支払われます。
障害者雇用納付金制度では障がい者を雇用する時に作業施設などの設置・整備、必要な介助等の措置を講じると助成金をもらうことができるほか、他にも以下のような各種助成金があります。

各種助成金
助成金名 内容
特定求職者雇用開発助成金 障がい者を継続雇用する企業が利用できる
トライアル雇用助成金 障がい者を試行雇用する企業が利用できる
障害者雇用安定助成金 ジョブコーチの援助が必要な障がい者のためにジョブコーチを受け入れた企業が利用できる
人材開発支援助成金
(障害者職業能力開発コース)
障がい者の職業能力の開発・向上を目的に職業能力訓練施設や設備を整備したり、実際に訓練を行う企業が利用できる

このように法定雇用率を達成するにあたって手厚い経済的な優遇措置があるので、「障がい者を雇用しても余計な人件費がかかるだけになったらどうしよう」と金銭的な不安を感じてしまう企業にとっても大きなメリットを感じられるようになっているのです。

 

3-1-2.社会的信頼を高められる

企業として義務を果たすために障がい者雇用に注力していることをホームページなどで積極的にPRすれば、社会的信頼を高められます。

なぜなら、障がい者を雇用するにはその人の障がい特性に合わせて職場環境を整えたり、接し方や指導方法の配慮をしたりすることが必要不可欠で、工夫しながら障がい者雇用に取り組む企業の姿勢は尊敬されるべきものだからです。
物や情報にあふれた現代社会では、消費者の購買意欲は企業イメージに大きく左右されるように変わりつつあります。
たとえば、似た商品を扱うA社とB社があった場合、A社が法定雇用率を達成している一方でB社が未達成であることを知れば、消費者はA社の取り組みを応援したい気持ちからA社の商品を選ぶ可能性が高くなります。
このように法定雇用率を達成することで企業イメージから社会的信頼を高めることができ、結果的に収益にまで影響を与えることが期待できるのです。

 

3-1-3.人材不足解消に繋がる

障がい特性に配慮しながら適切な業務を切り出せば、障がい者も企業に貢献できる人材に育ち人材不足解消に繋がります。

たとえば、身体障がい者は社内環境や在宅ワーク環境を整えれば即戦力となる可能性がありますし、作業スピードは遅くても正確な作業ができる知的障がい者は一般社員が慢心からミスをおこしてしまう現場でも常に確実に仕事を進めることが期待できます。
雇用した障がい者が社員の一員として活躍できるように配慮すれば、法定雇用率を達成すると同時に社内の人材不足解消に繋がる可能性があるのです。

 

3-2.法定雇用率を未達成の企業が受ける罰則

法定雇用率が未達成の企業には、以下の3つの罰則があります。

法定雇用率を未達成の企業が受ける罰則
障害者雇用納付金を徴収される
行政指導が入る
社名が公表される

これらの罰則はどのようなものなのか参考にしてみましょう。

 

3-2-1.障害者雇用納付金を徴収される

2-1-1.経済的な優遇措置を受けられるでもご紹介したように、法定雇用率が未達成の企業からは障害者雇用納付金が徴収されることとなります。
法定雇用率が未達成かつ常用労働者100人超の企業は法定雇用障がい者数と現状の雇用人数の差に合わせて納付金が徴収され、不足1人当たり月額5万円支払うことになります。
たとえば法定雇用障がい者数が2人の企業でまったく障がい者を雇用していない場合、毎月の納付金の徴収額は10万円になるので、経済的な負担は決して少なくはありません。
年間額に換算すると120万円になるので、このようにずっと多額の障がい者雇用納付金を徴収されるのであれば、調整金や報奨金、助成金をもらいながら自社で障がい者雇用を進めることを検討するのがおすすめです。

 

3-2-2.行政指導が入る

法定雇用率が未達成の企業には、ハローワークによる行政指導が入ります。

まず翌年1月から始まる2年間の雇用計画の作成が命じられ、計画作成後にその計画通りに遂行できていないことが判明すると1年目の12月に計画を適正に実施するように勧告されることとなります。
行政指導は事業主にとって決して気持ちのいいものではありませんし、現状を知っている一部の社員も複雑な気持ちになってしまいます。

 

3-2-3.社名が公表される

行政指導が入ってもなお雇用状況が改善されない場合は、計画期間が終了してから9か月間にわたって特別指導が行われてから厚生労働省のホームページで社名が公表されることとなります。

インターネットやSNSが普及している現在、社名公表後は法定雇用率を達成していない事実があらゆる人に知られてしまうこととなり、以下のような影響が予想されます。

対象 考えらえる影響
顧客 ・企業に対するイメージが低下する
・その企業の商品は購入しない
取り引き先 ・社名公表されている企業と取り引きがあることを後ろめたく感じる
・自社まで企業イメージが下がっては困るので、似た商品を取り扱う企業があれば取り引き先を変更することを検討する
社員 ・モヤモヤして集中力が続かない
・会社の経営方針と合わないと感じて転職を考える
就活生 ・この会社に未来を託せるのか悩む
別の企業に就職しようと考える

社名公表によって企業イメージが低下することは企業の存続に関わることなので、社名公表の影響についてさらに詳しくご紹介している「障がい者雇用で社名が公表される!公表基準とリスクを避ける方法を解説」を参考にしてみましょう。

 

 


4.障がい者を採用するための4つの方法

障がい者雇用における法定雇用率が企業に与える影響が分かったところで、法定雇用率を達成できていない企業は早速障害者の採用方法を検討していることと思います。

障がい者を採用するための方法には以下の4つがあります。

障がい者を採用するための方法
ハローワークによる職業紹介サービスを利用する
民間職業紹介業者を利用する
特別支援学校に求人票を提出する
障がい者を対象とした合同説明会で募集する

それぞれのメリット・デメリットや向いている企業についてもご紹介するので、参考にしてみましょう。

 

4-1.ハローワークによる職業紹介サービスを利用する

ハローワークによる職業紹介サービスは障がい者を採用する企業にもっとも広く利用されている方法で、ハローワークの障がい者専門の窓口に求人情報を提出すると、ハローワークの職員が求人募集内容にふさわしい障がい者を企業に紹介してもらえます。

ハローワークの職業紹介サービスのメリット・デメリットは以下の通りです。

ハローワークの職業紹介サービスのメリット・デメリット
メリット ・求職中の多くの障がい者に出会える
・コストがかからない
デメリット ・経験やスキルなど千差万別な障がい者がいる
・何となく採用すると定着しない可能性がある

ハローワークによる職業紹介サービスは求職中の多くの障がい者に出会える一方で、企業として任せたい業務や希望する人物像をしっかりイメージして求人募集しなければ採用しても定着しない可能性があるので、求人票には業務内容や希望条件・資格等の詳細を記入しておきましょう。

ハローワークによる職業紹介サービスが向いている企業は、以下のような企業です。

ハローワークの職業紹介サービスが向いている企業
・コストをかけずに障がい者を採用したい企業
・任せたい業務や採用したい人物像が明確で、詳細情報を盛り込んだ求人募集ができる企業

 

4-2.民間職業紹介業者を利用する

民間職業紹介業者とは民間のキャリアアドバイザーが求人募集内容にふさわしい障害者を企業に紹介する業者で、中には障がい者専門の民間職業紹介業者もいるので、独自のノウハウでその企業にぴったりな障がい者を紹介してもらうことができます。

民間職業紹介業者を利用するメリット・デメリットは以下の通りです。

民間職業紹介業者を利用するメリット・デメリット
メリット ・高いスキルを持った障がい者に出会える可能性が高い
・採用するまでハローワークよりも手厚いサポートがある
デメリット ・大手企業や有名企業が多く高待遇の求人を出しているため、他社との採用競争が厳しい
・コストがかかる

民間職業紹介業者を利用するのが向いている企業は、以下のような企業です。

民間職業紹介業者を利用するのが向いている企業
・コストがかかっても確実に障がい者を雇用したい企業
・障がい者を人材として活用したい企業

 

4-3.特別支援学校に求人票を提出する

特別支援学校とは2007年まではろう学校、盲学校、養護学校と呼ばれていた学校が一本化されたもので、特別支援学校に求人票を提出することで就職を希望している障がい者の採用に繋がります。

特別支援学校への求人票提出のメリット・デメリットは以下の通りです。

特別支援学校への求人票提出のメリット・デメリット
メリット ・障がい者のできることとできないこと、性格などが採用前に分かりやすい
・コネクションができるため、今後継続的に卒業生を採用しやすい
デメリット ・近隣に特別支援学校がない場合は手間がかかる
・就業経験がない障がい者がほとんどである

特別支援学校に求人票を提出すると教師や就職支援スタッフお墨付きの就労意欲の高い障がい者を採用できますが、これまでの就業経験がないことがほとんどなので、採用後は丁寧な指導が必要となる可能性があります。

特別支援学校への求人票提出が向いている企業は、以下のような企業です。

特別支援学校への求人票提出が向いている企業
・卒業したばかりの就労意欲が高い障がい者を雇用したい企業
・特別支援学校とのコネクションを作りたい企業

 

4-4.障がい者を対象とした合同説明会で募集する

障がい者を対象とした合同説明会は民間職業紹介業者などの主催で数多く開催されていて、合同説明会で就職を希望する障がい者に対して求人募集情報を提供します。

障がい者を対象とした合同説明会での募集のメリット・デメリットは以下の通りです。

障がい者を対象とした合同説明会で募集するメリット・デメリット
メリット ・実際に障がい者に会うことができる
・他社と情報交換するなどして他社の採用活動を参考にできる
デメリット ・企業の知名度で判断されたり、他社と待遇面を比較されたりしやすい
・ブースに障がい者が来なければ労力に見合わない

障がい者を対象とした合同説明会では実際に障がい者やその家族に会って話せるので、働いてもらうとしたらどんな仕事を任せられそうかイメージを膨らませることができる一方で、知名度が低い企業や他社より待遇面が劣る企業ではブースに障がい者を呼び込むのが難しく感じることがあります。

障がい者を対象とした合同説明会での募集が向いている企業は、以下のような企業です。

障がい者を対象とした合同説明会での募集が向いている企業
・障がい者と交流しながら採用活動を進めたい企業
・自社の社風や環境などをPRして採用活動に活かせる企業

 

 


5.法定雇用率を高めるために企業が取り組むべき8つのこと

障がい者を採用するための方法が分かったところで、企業の中にはこれまで障がい者を採用したことがあるもののすぐに退職して結果的に法定雇用率が未達成になってしまっている企業もあることと思います。
これから障がい者を採用する企業にとっても採用後にその障がい者を継続雇用して法定雇用率を維持することは、大きな課題となります。
そこで、「採用」「環境」「育成」での課題に分けて、以下の法定雇用率を高めるために企業が取り組むべき8つのことをご紹介します。

法定雇用率を高めるために企業が取り組むべき8つのこと

職場実習や職場体験を受け入れる
求人票はできるだけ詳しく書く
面接では働く意欲と障がいの内容を確認する

障がい者が安全に働ける環境を整える
社内規定の見直し・整備をする
スタッフ全員が障害への理解を深める

障がい者への業務の切り出しを重視する
ジョブコーチ制度を利用する

これらを参考にして障がい者の職場定着を促進しましょう。

 

5-1.採用に課題がある場合

応募があった障がい者を何となく採用しているようでは、実際に雇用してからお互いに「こんなはずではなかった」と思っても当然です。

障がい者の採用時には以下の3つのポイントを大切にしましょう。

採用に課題がある場合の企業が取り組むべきこと
職場実習や職場体験を受け入れる
求人票はできるだけ詳しく書く
面接では働く意欲と障がいの内容を確認する

5-1-1.職場実習や職場体験を受け入れる

障がい者を雇用した経験がない企業はまずは障がい者を雇用するイメージを掴むために、職場実習や職場体験の受け入れをするのがおすすめです。

職場実習や職場体験を受け入れるメリットは、以下の通りです。

企業が職場実習や職場体験を受け入れるメリット
・どのような障がい特性を持つ障がい者が自社で働けるのかが分かる
・障がい特性に合わせてどのような業務を任せればよいのかが分かる
・障がい者との接し方や職場環境の整え方のイメージが湧く

このように実際に障がい者に職場に来てもらって初めて分かることが多いので、職場実習や職場体験を受け入れて障がい者と一緒に働くイメージを膨らませましょう。

 

5-1-2.求人票はできるだけ詳しく書く

採用活動の際に欠かせない求人票は、障がい者が応募しやすいように以下の内容をできるだけ具体的に詳しく書くのがおすすめです。

・給与
・勤務時間
・資格・能力
・業務内容
・特記事項

任せたい業務内容を想定している場合は、たとえば一般事務であれば「午前中が忙しい」「電話対応はなし」「エクセルを使用するが、文字・数字の入力ができれば構わない」というように、求人票を見た障がい者がその業務内容ができるか判断できるように書きましょう。
勤務時間や業務内容にとくにこだわらない場合は「応相談」、資格・能力については「不問」「未経験者も活躍しています」と書いても構いません。
特記事項には「エレベーターあり」「障がい者用トイレはなし」「音声読み上げソフト導入済み」など、職場環境がイメージできる内容を記載しておきましょう。

 

5-1-3.面接では働く意欲と障がいの内容を確認する

採用時には面接をしますが、面接では働く意欲はもちろんのこと、企業として採用後に配慮できるかを判断するために以下のように障がいの内容を確認する必要があります。

項目 内容
障害について ・先天性障害か、中途障害か
・疾病の後遺症や合併症によるものか
症状 ・発症後からの経過
・現在の症状
・今後症状が変化する可能性はあるか
服薬状況 ・現在服薬しているか
・服薬以外の処置(透析やインシュリン注射など)が必要か
通院状況 ・業務時間内に通院することがあるか
障害に対する配慮 ・配属先でどのような配慮が必要か

スキルや経験が足りなくても働く意欲がある障がい者は採用後に企業に貢献しようとしてくれるはずですし、障がいの内容を事前に確認しておくことで職場環境をスムーズに整えることができます。

 

5-2.環境に課題がある場合

採用がうまくいったとしても、社内環境が整っていなければ障がい者が働き続けることは難しくなってしまいます。

障がい者を受け入れるための社内環境の整備には、以下の3つのポイントを参考にしましょう。

環境に課題がある場合の企業が取り組むべきこと
障がい者が安全に働ける環境を整える
社内規定の見直し・整備をする
スタッフ全員が障害への理解を深める

 

5-2-1.障がい者が安全に働ける環境を整える

障がい者を受け入れるためには安全に働ける環境を整えることが大切なので、以下のポイントを参考にしましょう。

障がい者が安全に働ける環境を整えるポイント
身体障がい者 ・段差をなくし、スロープや手すりを設置する
・通路の幅を広くとる
・通路には通行の妨げになる物を置かない
知的障がい者 ・ハサミや裁断機などの危険物の扱いに気を付ける
・写真付きのマニュアルを作成する

環境は障がい特性に合わせて配慮する必要がありますが、とくに精神障がい者については暗闇が苦手だったり何らかのきっかけでパニック症状を引き起こしたりとさまざまなケースが考えられるので、一人ひとりに合わせて配慮しましょう。
バリアフリーやマニュアル作成は障がい者だけでなく、一般社員にとっても業務の効率化に繋がります。

障がい者を雇用する時に作業施設などの設置・整備、必要な介助等の措置を講じると、障害者雇用納付金制度の助成金を申請できるので、うまく助成金を活して障がい者が安全に働ける環境を整えましょう。

 

5-2-2.社内規程の見直し・整備をする

障がい者は一般社員よりも柔軟な対応や配慮が必要となる場面が生じやすいので、バリアフリーについてはできる範囲で取り入れる他に、以下のように社内規定の見直しや整備を行う必要があります。

・有給休暇・傷病休暇の日数を増やす
・フレックスタイム制度や在宅ワーク制度、短時間勤務制度を導入する
・時間単位で有給休暇を取得できるようにする
・休職・復職のサポート体制を整える

障がいの関係で通院しなければならない時も社内規定が整備されていれば、障がい者は遠慮なく休暇申請しやすくなります。

 

5-2-3.スタッフ全員が障がいへの理解を深める

これまで障がい者を雇用したことのない職場では、障がい者を採用しても周囲のスタッフが遠巻きに眺めているだけだったり、避けるような行動を取ったりして障がい者が孤立してしまうことがあるので、スタッフ全員が障がいへの理解を深めることが大切です。

障がい者が就業する前にスタッフ全員に周知することはもちろんのこと、説明会を開催するのがおすすめです。

説明会では以下の内容を伝えましょう。

・障がい者雇用には法定雇用率があり、障がいの有無にかかわらず共生できる社会を作るために達成しなければならないこと
・今回雇用する障がい者にどのような業務を割り当てる予定なのか
・障がい者に配慮すべきこと
・障がい者と接していて困ったことがあれば担当者に伝えてほしいこと

説明会で障がい者雇用を進めなければならないことをスタッフ全員に理解してもらうと同時に、障がい者を迎え入れる気持ちの準備ができます。

 

5-3.育成に課題がある場合

採用や職場環境の整備がうまくいったとしても、就業してからの育成がうまくいかなければ障がい者は早期で退職して、法定雇用率が低下する可能性があります。

障がい者雇用における定着率については社会的課題となっていて、実態や定着率を高めるための詳しいノウハウについては「障がい者雇用の定着率は?|定着率をあげるための対策5つ」で詳しくご紹介しているので、参考にしてみてください。

障がい者の育成時には以下の2つのポイントを参考にしましょう。

育成に課題がある場合の企業が取り組むべきこと
障がい者への業務の切り出しを重視する
ジョブコーチ制度を利用する

 

5-3-1.障がい者への業務の切り出しを重視する

障がい者を育成していくためには、適性に合わせた業務の切り出しが非常に重要になります。

なぜなら、以下のように障がい者に任せた業務が適切でなければ労働意欲が低下する可能性があるからです。

業務の切り出しが与える障がい者への影響
業務の切り出し 障がい者への影響
簡単すぎる ・労働意欲が低下する
適切である ・働きがいを感じられる
難しすぎる ・労働意欲が低下する
・早期に離職する可能性がある

なお、業務の切り出しは一度行ったらおしまいではなく、障がい者の習熟度や意欲に合わせて定期的に調整する必要があります。

 

5-3-2.ジョブコーチ制度を利用する

障がい者を雇用したことがない企業は、障がい者とのコミュニケーションの取り方や業務の切り出し方法で悩むこともありますが、そんな時には定着支援をしてくれる「ジョブコーチ制度」を利用するのがおすすめです。

ジョブコーチ制度とは厚生労働省が障がい者の就労支援をするために生まれた制度で、専門知識を持ったジョブコーチが派遣されて企業と障がい者の双方を直接的に支援してもらうことができます。

障がい者の育成面で困ったことがあれば、ジョブコーチの意見を参考にして見直してみましょう。

 


6.障がい者雇用のハードルが高く感じるなら「障がい者支援サービス」がおすすめ!

ここまで障がい者雇用における法定雇用率を達成するために企業が取り組むべきことをご紹介しましたが、「募集しても採用に至らない」「スタッフの障がい者雇用への理解が得られない」「定着率が悪くて採用を繰り返している」など、自社に取り入れるにはハードルが高いと感じる企業もあることと思います。

そんな企業におすすめなのが「障がい者支援サービス」なので、その内容や導入が向いている企業についてご紹介します。

 

6-1.障がい者雇用支援サービスとは?

障がい者雇用支援サービスとは、以下の図にあるように企業は障がい者を直接雇用するものの、障がい者はA社が用意した環境で働くという採用方法です。

障がい者雇用支援サービスの仕組み

この障がい者雇用支援サービスの特徴は、以下の3つです。

障がい者雇用支援サービスの特徴
・障がい者募集・採用の手間がかからない
・自社での障がい者への業務切り出し・内容調整が不要
・障がい者が安心して長期間働ける環境が整備されている

障がい者雇用支援サービスを利用すると、障がい者の募集や採用だけでなく、雇用してからの業務の切り出しや環境整備もすべてA社に任せることができます。

 

6-2.障がい者雇用支援サービスの利用が向いている企業

この障がい者雇用支援サービスの利用が向いている企業は、障がい者雇用において以下の悩みがある企業です。

障がい者雇用支援サービスの利用が向いている企業
・募集してもなかなか採用に至らない企業
・スタッフから障がい者雇用への理解が得られない企業
・定着率が悪くて採用を繰り返している企業

障がい者雇用支援サービスを利用すればこれらの悩みを解決して障がい者雇用を進め、法定雇用率を達成することに繋げられます。

 

6-3.障がい者雇用への理解不足でお困りなら、株式会社JSHにおまかせ

法定雇用率を達成するだけでなく障がいの有無に関わらず誰もが共生できる社会を目指すためにも障がい者雇用を推進したいと思っていても、現場スタッフからは以下のような否定的な意見が多く、障がい者雇用への理解を得られない企業もあることと思います。

現場スタッフの障がい者雇用についての否定的な意見
・障がい者とのコミュニケーションの取り方が分からない
・障がい者と一緒に働いたら自分の負担が増えるのではないか
・障がい者に配慮できるほど余裕がない、自分のペースを乱されたくない

このような否定的な意見がある企業で法定雇用率を達成するには、地方農園を活用している株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスの利用がおすすめです。

 

株式会社JSHでは以下のように障がい者雇用を推進したい企業と地方在住の障がい者の橋渡しをして、地方を中心に展開している農園で障がい者の雇用を請け負っているので、企業のスタッフの意見を尊重しながら法定雇用率を達成することを可能にします。

都市部よりも求人募集が少なくて就職しにくい地方在住の障がい者の雇用を創出するだけでなく、障がい者は安心して長期間働ける環境が整備された農園で働くことができます。

株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスにご興味を持たれた方は、以下の画像をクリックしてこの機会に資料を読んでみてください。


株式会社JSHでは、
「募集しても採用につながらない…」
「業務の切り出しがうまくできない…」
「何かとトラブルが多く、定着率が低い…」
といった障がい者雇用に関する様々な課題を持つ企業様に向けて、 採用から定着まで包括的なサポートサービスを提供しています。

▼JSHの障がい者雇用支援サービスについて

※無料でダウンロード可能です。

詳細資料はこちら


7.まとめ

当記事では、障がい者雇用における法定雇用率について解説しました。
最後にポイントを振り返ってみましょう。
現行の法定雇用率は以下の通りです。

2021年3月以降の法定雇用率
事業主区分 法定雇用率
民間企業 2.3% (43.5人ごとに1人以上雇用)
国・地方公共団体等 2.6% (38.5人ごとに1人以上雇用)
都道府県等の教育委員会 2.5% (40人ごとに1人以上雇用)

法定雇用率に基づく企業が雇用すべき障がい者数は以下の計算方法で求められます。

企業の法定雇用障がい者数の計算方法

法定雇用障がい者数 = ( 常用労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5 ) × 2.3%

法定雇用率を達成した企業には以下の恩恵があります。

法定雇用率を達成した企業が受けられる恩恵
経済的な優遇措置を受けられる
社会的信頼を高められる
人材不足解消に繋がる

法定雇用率が未達成の企業には以下の罰則があります。

法定雇用率を未達成の企業が受ける罰則
障害者雇用納付金を徴収される
行政指導が入る
社名が公表される

当記事の内容を参考に障がい者雇用を進めて、法定雇用率を達成できるようになることを願っています。

この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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