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calendar_today2023/12/25

autorenew2024/04/01

障がい者雇用における合理的配慮とは?障がい別の事例や進め方を解説

障がい者雇用における合理的配慮とは、2016年に改正された障害者雇用促進法障がいがある人もない人も雇用機会や待遇を平等に確保できるようにすべての企業に対して義務付けられたものです。

合理的配慮は以下の3つのポイントを守ることで実現しやすくなります。

合理的配慮の3つのポイント
障がい者差別を禁止する
就労機会や待遇を平等に確保する
相談体制を整備する

障がい者によって障がいの特性や種類、程度が異なるため、一人ひとりに合わせた合理的配慮を進めるためには以下の4ステップが大切です。

ただし、しっかりとポイントを押さえて進めなければ、合理的配慮をしているつもりでも障がい者は居心地が悪く感じて早期に退職してしまう可能性があります。
そこで、この記事では障がい者雇用における合理的配慮について理解を深めるためのポイントを解説します。

本記事のポイント
◎障がい者雇用における合理的配慮とはどういうことかポイントや具体例を交えて解説
◎違反した場合のリスクについて紹介
◎合理的配慮を進めるための流れとポイントが分かる
◎障がい別の合理的配慮の事例を紹介

上記のポイントを押さえると、あなたの企業でも障がい者に合理的配慮ができるようになります。

企業として合理的配慮に基づいた職場を提供することで、企業にとっても障がい者にとっても働きやすい環境になるように、是非最後まで読み進めていただければ幸いです。

 

【目次】

1.障がい者雇用における合理的配慮とは

2.違反しても罰則はないが、合理的配慮をおこなうのがおすすめ

3.企業が障がい者雇用で合理的配慮を進めるための4ステップとポイント

4.【障がい別】障がい者雇用における合理的配慮の事例とポイント

5.まとめ

 


1.障がい者雇用における合理的配慮とは

冒頭でもお伝えしたように、障がい者雇用における合理的配慮とは、2016年に改正された障害者雇用促進法で障がいがある人もない人も雇用機会や待遇を平等に確保できるようにすべての企業に義務付けられたものです。
「合理的配慮ってどういうこと?」「どうして必要なの?」という方に向けて、以下の4つの観点から障がい者雇用における合理的配慮についてご紹介します。

・2016年に法律で義務化
・合理的配慮の3つのポイント
・合理的配慮の具体例
・対象となる障がい者

この機会に合理的配慮について理解を深めましょう。※民間企業については、2024年4月1日から『努力義務』から『義務』に改正されます。

1-1.2016年に法律で義務化

2006年に以下のように障がい者への合理的配慮について述べられた国連で採択された障害者権利条約は2014年に日本で障害者権利条約が批准され、国内での効力を持たせるために2016年に障害者差別解消法が施行、障害者雇用促進法が改正されて、合理的配慮が義務化されました。

第二条 定義
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

引用:外務省 障害者権利条約

障害者差別解消法と障害者雇用促進法は以下のように対象分野と合理的配慮の義務付けが異なっていて、雇用分野に特化した障害者雇用促進法では行政機関だけでなく、すべての民間企業においても障がい者への合理的配慮が法的に義務付けられています。

障害者差別解消法 障害者雇用促進法
対象分野 雇用分野以外のあらゆる分野 雇用分野に特化
合理的配慮の義務 行政機関:法的義務
民間企業:努力義務
行政機関:法的義務
民間企業:法的義務

なお、2021年5月には障害者差別解消法が改正されて2024年5月までに施行されるため、行政機関だけでなく民間企業においても雇用分野だけでなくあらゆる分野において障がい者への合理的配慮が法的義務化されることになりました。

★「過度の負担にならない」かどうかは事業主が判断する

障害者権利条約では合理的配慮は「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」つまり、障がい者と他のスタッフとのバランスを保つことができて、企業にとって過度な負担にならないように実行するものだとされています。
反対に言えば、企業に過度な負担になるようであれば雇用している障がい者に対して合理的配慮をしなくても構いません。
過度な負担になるかどうかは、以下の企業にとって過度の負担となる事例を参考に企業への影響の大きさを踏まえて事業主が判断します。

企業にとって過度の負担となる事例
・合理的配慮によって生産力やサービスの質が低下する
・企業の立地状況や規模、所有形態によっては合理的配慮をするための設備整備や人材確保が難しい
・合理的配慮をするには費用負担が大きいため、企業の財務状況がひっ迫する
・合理的配慮がしたくても必要な公的支援が受けられない

なお、障がい者雇用における合理的配慮は事業主と障がい者が十分に話し合い、双方の意見を尊重した上でできる範囲でおこなうことが大切です。

1-2.合理的配慮の3つのポイント

法律で義務化されている合理的配慮は、以下の3つのポイントを守ることで実行しやすくなります。

合理的配慮の3つのポイント
障がい者差別を禁止する
就労機会や待遇を平等に確保する
相談体制を整備する

具体的にご紹介します。

 

1-2-1.障がい者差別を禁止する

合理的配慮のためにまず実行すべきことは、障がい者差別を禁止することです。
障がいがあることを理由に障がい者を排除しようとしたり、不利な条件を押し付けたりする行動は差別に該当するので、絶対にやめましょう。
一方で、以下のことは結果的に障がいのない人と差をつけることになるものの、障がい者が働きやすくするためにおこなうことなので、差別には該当しません。

・障がい者を雇用するために障がい者のみを対象にした求人募集をする
・障がい者が研修内容を理解できるように特別内容の研修をおこなう
・合理的配慮に応じた措置を実施する

このように障がい者雇用において合理的配慮をするためには、まずは障がい者差別を禁止することが重要です。

 

1-2-2.就労機会や待遇を平等に確保する

合理的配慮の中身として重要なのは、就労機会や待遇を平等に確保することです。
身長が低い人は脚立がなければ高い場所にある資料を手に取って読めないように、ハンディキャップがある障がい者は合理的配慮がなければ同じスタートラインに立つことができません。
障がい者が職場で能力を発揮できるように以下のようなことは避け、合理的配慮によって支障となっている状況を改善・調整して、就労機会や待遇を障がいのない人と平等になるようにしましょう。

・障がいがあるから採用しない
・障がいを理由に他の人と賃金の差をつける
・能力や実績があるのに、障がいがあるというだけで昇進させない

ただし、障がいの種類や程度、必要となる配慮の内容は一人ひとり異なるため、企業と障がい者の双方でどうすれば平等にできるのかよく話し合って合理的配慮の内容を決める必要があります。

 

1-2-3.相談体制を整備する

合理的配慮を進める上で欠かせないのが、相談体制を整備することです。
合理的配慮の内容は入社時に決めたらおしまいという訳ではなく、障がいの程度や置かれている状況の変化に応じて定期的に見直す必要があります。
相談体制には以下のようなものがあるので、複数を整備して障がい者が不安を抱える前に相談に対応できるようにしましょう。

・月に一度フォローアップ面談をおこなう
・サポート担当者を決める
・差別を含めた職場のあらゆる課題を相談できる窓口を設ける

 

1-3.合理的配慮の具体例

合理的配慮のポイントだけではイメージが掴みにくい方に向けて、実際に障がい者雇用をする際に障がい種別に合わせてどのような合理的配慮をすればよいのか以下の具体例を参考にしてみましょう。

障がいの種類 合理的配慮の具体例
視覚障がい ・通勤時の混雑を避けられるようにフレックスタイム活用時差通勤を認める
・障がい特性に合わせて音声読み上げソフトを導入する
聴覚障がい ・障がい特性に合わせてPCチャットによる筆談や、手話を活用する
・障がい者が読唇できる場合は、はっきりとした口の動きを心がける
肢体不自由 移動頻度が少なくてすむ業務を割り当てる
・移動しなくてもいいように必要なものは手の届く範囲に配置する
精神障がい 業務手順をマニュアル化して迷いや不安が生じる要素を取り除く
・その人のトラウマに関わることは避けられるようにする

障がい別のより具体的な合理的配慮の事例については、4.【障がい別】障がい者雇用における合理的配慮の事例とポイントで紹介しているので、参考にしてみましょう。

このように合理的配慮は障がい特性に合わせて、その障がい者が就業しやすいように環境や働き方を整えることが大切です。

★英語では合理的配慮を何と言う?

英語では合理的配慮のことを「reasonable accommodation」といい、「reasonable」は合理的、「accommodation」は便宜・調整という意味があります。
日本では「合理的配慮」と訳されているため、障がい者に配慮するのもしないのも自由で、できる人だけ配慮すればいいというような印象を持たれがちです。
しかし、英語本来の意味合いを踏まえると、過度の負担にならない限りは障がい者の権利を守るために障がい者にとってハンディキャップとなる部分を合理的に調整していく必要があることに気付かされます。

 

1-4.対象となる障がい者

障害者雇用促進法第2条第1号によると、障がい者雇用における合理的配慮の対象となる障がい者は以下の通りです。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 障害者
身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。

引用:障害者雇用促進法

このように障害者雇用促進法では障害者手帳を所持しているかどうかや就業時間についての対象制限はなく、長期にわたって就業生活に制限や困難がある人が合理的配慮の対象となっています。
ただし、就業生活でハンディキャップを得るほどの障がいの程度ではない人や病気やケガなどで一時的に就業生活で制限が必要になっただけの人は合理的配慮の対象外となります。

 


2.違反しても罰則はないが、合理的配慮をおこなうのがおすすめ

障がい者雇用における合理的配慮とはどんなものかが分かったところで、障害者差別解消法・障害者雇用促進法で義務化されている合理的配慮をしなかった場合にどんな罰則があるのかが気になるところかとおもいます。
結論から言うと、雇用している障がい者に合理的配慮をしなくてもそれ自体については助言や指導勧告がおこなわれるだけで罰則はありません。
令和2年の障がい者差別と合理的配慮に関する企業への助言・指導数は以下の通りで、助言をしても改善されない場合に取り組み方法や障がい者への謝罪といった指導勧告がおこなわれてきました。

障がい者差別に関する助言・指導数
平成30年度 令和元年度 令和2年度
助言 15 13 9
指導 0 0 0

参考:厚生労働省 「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務 に係る相談等実績(令和2年度)」を公表しました

合理的配慮に関する助言・指導数
平成30年度 令和元年度 令和2年度
助言 50 63 45
指導勧告 22 0 0

参考:厚生労働省 「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務 に係る相談等実績(令和2年度)」を公表しました

このように合理的配慮をしなくても助言や指導勧告のみで罰則はありませんが、以下のように「合理的配慮をしなかったこと」への報告を怠ると罰金を支払わなくてはならなかったり、地域によっては条例違反になったりするだけでなく、職場定着率にも大きな影響があるので、実行することをおすすめします。

合理的配慮をしないと生じるリスク
報告を怠ると罰金を支払う必要がある
条例違反となり、公表される場合がある
障がい者の職場定着率が低下する

それでは詳しくご紹介します。

 

2-1.報告を怠ると罰金を支払う必要がある

障がい者雇用で合理的配慮をしないこと自体に罰則はありませんが、障害者差別解消法では以下のように合理的配慮をしなかったり差別したりした時に事業者は報告することが求められていて、未報告や虚偽の報告をすると20万円以下の罰金を支払う必要があることが規定されています。

(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。第六章 罰則
第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

引用:障害者差別解消法 第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置

合理的配慮を実行することは義務付けられていますが、もし実行できなかった場合でも正確に報告することで罰金を支払わなくてすむため、障がい者雇用に真摯に向き合う必要があります。

 

2-2.条例違反となり、公表される場合がある

全国の都道府県や自治体では以下のように障がい者への差別をなくすためのさまざまな条例があるため、合理的配慮をしなければ条例違反となる可能性があります。

都道府県・自治体 条例
東京都 東京都障害者差別解消条例
千葉県 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例
大阪府 大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例
横浜市 横浜市障害を理由とする差別に関する相談対応等に関する条例
仙台市 仙台市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちをつくる条例

どの条例も障がい者への差別をしたり、合理的配慮をしなかったりした企業には注意や勧告措置が取られます。
とくに大阪府の大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例では、障がい者への合理的配慮をしない企業に合議体が障がい者と企業の間に入ってあっせんしますが、企業がそのあっせん案を受託しなかったり従わなかったりした場合は勧告され、さらに勧告に従わないとその旨を公表されます
地域に根差した企業であり続けるためには注意や勧告措置であっても企業イメージの低下に繋がるため、条例違反しないように合理的配慮を推進しましょう。

 

2-3.障がい者の職場定着率が低下する

従業員が100名以上いる民間企業では障がい者の法定雇用率が2.5%(40人に1人の割合で障がい者を雇用する)と定められているため、障がい者を雇用しても職場定着率が低くてすぐに退職してしまっては法定雇用率を達成できなくなってしまいます。

しかし、厚生労働省のデータによると、以下のように障がい者の職場定着率は新規学卒就職者と比較して極めて低く、合理的配慮をしなければさらに低下する可能性があります。

参考:厚生労働省職業安定局「障害者雇用の現状等
参考:厚生労働省職業安定局「新規学卒者の離職状況

障がい者の退職理由は以下のように、障がいの進行や合併症など病気の発症といったやむを得ないものもありますが、労働条件の不一致や職場環境の課題といった合理的配慮で解決できる理由で退職している障がい者が多くいるのが現状です。

障がい者の主な退職理由
障がいの進行や合併症などの病気を発症した
           労働条件や業務内容が合わない ← 合理的配慮で改善可能
          職場環境に課題がある ← 合理的配慮で改善可能
          職場の雰囲気が合わない ← 合理的配慮で改善可能
          評価方法に不満がある ← 合理的配慮で改善可能

そのため、雇用する障がい者一人ひとりに合わせて合理的配慮をすることができれば、退職を考える理由がなくなって障がい者の職場定着率を高めることができます。
なお、障がい者を雇用した際の職場定着率の詳しい実態や障がい者雇用の定着率があがらない企業が抱える課題について知りたい方は「【最新数値】障がい者雇用の定着率は?|定着率をあげるための対策5つ」を参考にしてみましょう。

 

 


3.企業が障がい者雇用で合理的配慮を進めるための4ステップとポイント

罰則はなくても障がい者雇用においては合理的配慮を実行した方がよいことが分かったところで、企業としてはどうすれば障がい者に対してスムーズに合理的配慮ができるようになるのか流れやポイントが知りたい人も多いのではないでしょうか。
そこで、企業が障がい者雇用で合理的配慮を進めるための以下の4ステップに基づいて、その時に重要となるポイントを詳しくご紹介します。

 企業が障がい者雇用で合理的配慮を進めるための4ステップ
 ❶障がい者からの申し出を受ける
 ❷配慮する内容について話し合う
 ❸合理的配慮を実行する
 ❹定期的に見直しをする

ぜひ参考にしてみてください。

 

3-1.【STEP①】障がい者からの申し出を受ける

まず、障がいは人によって特性や程度が異なるため気付けない可能性があるので、障がい者を採用する際には障がい者の方から合理的配慮が必要であることを申し出てもらう必要があります
障がい者の中には合理的配慮が必要であることを申し出なければ企業が対応できないことを知らない人もいれば、合理的配慮をしてほしいと申し出たら採用されなくなるのではないかと不安に思っている人もいます。
そこで、企業は障がい者が合理的配慮を申し出やすいように以下の2つのポイントを実行しましょう。

障がい者が合理的配慮を申し出やすくするためのポイント
採用面接時に合理的配慮が必要かどうか本人の希望を聞く時間を設ける
合理的配慮を申し出ても企業ができる範囲であれば採用可否に関係しないことを伝える

なお、採用後にその障がい者に対して合理的配慮をしやすくするために以下のことを確認しておきましょう。

確認項目 具体的な内容
障がいについて ・先天性障がいか、中途障がいか
・疾病の後遺症や合併症によるものか
・障害者手帳を所持している場合は、等級を確認する
・障害者手帳を所持していない場合は、医療受給証や医師の診断書を確認する
症状 ・発症後からの経過
・現在の症状
・今後症状が変化する可能性はあるか
服薬状況 ・現在服薬しているか
・服薬以外の処置(透析やインシュリン注射など)が必要か
通院状況 ・業務時間内に通院することがあるか

このように障がい者を採用する際には、障がい者が合理的配慮が必要であることを申し出やすいように心がけると同時に、その人の障がいについて理解を深めましょう。

 

3-2.【STEP②】配慮する内容について話し合う

障がい者が望むことすべてに対して合理的配慮をすると企業に過度の負担が強いられる可能性があるので、障がい者と企業の双方で配慮する内容について話し合います。
配慮する内容について話し合う時に気を付けたいポイントは、以下の3つです。

配慮する内容について話し合う時のポイント
配慮してほしい内容について意見を聞く
プライバシーに配慮する
双方が合意できる配慮内容にする

参考にしてみましょう。

 

3-2-1.配慮してほしい内容について意見を聞く

まずは、どのような合理的配慮が必要か内容について障がい者に意見を聞きましょう。
実際に働く場所を見学したり業務内容や一日の流れを体験したりして、危険を感じることや困ることに対してどんな合理的配慮があればよいのか一緒に考えます。
とくにトイレについては企業が気付きにくい部分なので、現在の仕様で問題ないか、変更が必要な場合はどのようなトイレが必要なのかを確認しましょう。

 

3-2-2.プライバシーに配慮する

障がいの特性や種類もプライバシーの一部なので、合理的配慮の内容を話し合う際には内容だけでなく職場のどの範囲まで合理的配慮が必要であることを伝えるかについても配慮する必要があります。
配属する部署の全員のスタッフが障がいへの理解を深め、合理的配慮ができることが一番望ましい職場環境ですが、以下のような障がい者がいることも忘れてはなりません。

・不当な差別を受けた経験があるため、同じチームの人以外には障がいがあることを知られたくない精神障がい者や発達障がい者
・暗闇でパニック症状が出ることは部署全体で共有していてほしいが、その原因となった出来事については知られたくない精神障がい者

障がい者が働きやすい環境を作れるように、一人ひとりに合わせて内容だけでなくプライバシーに配慮してどの範囲まで合理的配慮が必要であることを伝えるかについても検討する必要があるのです。

 

3-2-3.双方が合意できる配慮内容にする

企業は障がい者の希望に合わせて合理的配慮の内容を決定しますが、双方が合意できるものにすることがとても重要です。

なぜなら、企業の財務状況が悪い場合やオフィスが所有ビルではなく賃貸テナントの場合は物理的に障がい者の希望通りの合理的配慮ができないことがあるからです。
このような場合、企業は過度の負担になるため障がい者の希望に合わせることができませんが、雇用する障がい者が合意できるように「なぜできないのか」「代わりにどのようなことができるのか」を丁寧に伝える必要があります。

3-3.【STEP③】合理的配慮を実行する

企業と障がい者の双方が合理的配慮について合意できたら、実際に合理的配慮を実行しながら働き始めることになります。
「今日から〇〇さんに合理的配慮をしましょう」と言っても配属された部署のスタッフがすぐに実行できる訳ではないので、以下のポイントに気を付けましょう。

合理的配慮を実行する時のポイント
合理的配慮についての説明会を開催する
合理的配慮に関するルールを作成する
障がい者のサポート担当者を決める

それぞれについて詳しくご紹介します。

 

3-3-1.合理的配慮についての説明会をする

職場では常に目の前にある重要度が高い仕事や納期が短い仕事に対応するために時間に追われているので、実際には障がい者への合理的配慮については後回しにされがちです。
しかし、障がい者も同じように働くためには合理的配慮が必要不可欠なので、対象者に短時間の説明会に参加してもらいましょう。
説明会の目的は障がいへの理解を深めることを促進して合理的配慮の必要性を感じてもらうことで、障がい者の受け入れ準備を整えられます。

 

3-3-2.合理的配慮に関するルールを作成する

合理的配慮に関するルールを書面で作成しておくと、障がい者への対応に困った時に参考にできるだけでなく、今後上司や同僚が替わってもすぐに見ることができます。
合理的配慮に関するルールには、例として以下のようなものがあります。

・通院のため月に一度午後休暇を取得する
・体調の変化を感じたらいつでも休憩室を利用できる
・身体的負担を軽減するために専用の装置や器具を使用する

このように「通院のため月に一度午後休暇を取得する」といったものが盛り込まれていても、障がい者本人の口から毎月午後休暇の取得を申し出るのは負担に感じやすいものです。
そこで、周囲のスタッフが理解しておくことでさりげなく休暇申請を促すことができるので、合理的配慮に関するルールを作成したらしっかりと共有するようにしましょう。

 

3-3-3.障がい者のサポート担当者を決める

障がい者のサポート担当者を決めておくと、障がい者が実際に働いてみて困ったことをすぐに相談できるので、合理的配慮の質を高めることができます。
障がい者が働きやすいと感じるかどうかは、ほんの些細な心がけで変わります。
たとえば、視覚障がいのある人にいきなり話しかけても声だけでは誰であるかを認識しづらいため、先に名乗ることで会話がスムーズになります。
急いでいると名乗ることを忘れがちですが、障がい者本人が「間違っていたら申し訳ありませんが、〇〇さんですか?」と毎回聞くのはかなりの労力です。
そこで、障がい者の横の席にいるサポート担当者が「名乗ってから用件を話すようにしてください」と毎回注意すれば、障がい者はぐんと働きやすくなるのです。

 

3-4.【STEP④】定期的に見直しをする

障がい者に対する合理的配慮は最初に決めた内容をずっと変えないのではなく、定期的に見直しをして改善していくことが大切です。
なぜなら、障がいの程度が変わる可能性があるだけでなく、職場に合理的配慮を定着させるもっと良い方法があれば積極的に取り入れるべきだからです。
おすすめなのは、月に1回障がい者とサポート担当者、直属の上司を交えたフォローアップ面談をおこない、現在の合理的配慮の内容が適切であるかや何か困っていることがないかを確認し、見直せる部分については新たに検討することです。
合理的配慮の変更点については書面でのルールについても書き換え、対象者に周知を徹底するようにしましょう。

 

 


4.【障がい別】障がい者雇用における合理的配慮の事例とポイント

 

企業が障がい者雇用で合理的配慮を進めるための流れとポイントが分かったところで、障がいの種類に応じて具体的にはどのような合理的配慮をすればいいのか分からない方は多いと思います。
そこで、以下の障がい別に合理的配慮の事例をご紹介します。

・身体障がい
・知的障がい
・精神障がい
・発達障がい

障がい者を雇用する際の参考にしてみましょう。

 

4-1.身体障がいへの配慮事例

身体障がいの場合、以下のようにどの部分に障がいがあるかによって合理的配慮の事例が異なります。

身体障がいの種類
視覚障がい
聴覚障がい
肢体不自由
内部障がい

それぞれについて詳しくご紹介します。

 

4-1-1.視覚障がい

視覚障がい者というとまったく視力がない人を思い浮かべるかもしれませんが、人によって視力や見える範囲、ものの見え方はさまざまです。
その人の障がいの程度や内容に合わせて合理的配慮を検討する必要がありますが、視覚障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

視覚障がい者への合理的配慮の事例
採用時 ・ビルの入口まで出迎える
・白杖を使用する視覚障がい者を誘導する時には杖を持っていない方に立ち、肘に手をかけてもらう
・名刺に頼らず、聞き取りやすい自己紹介をする
入社後 音声読み上げソフトを導入する
・職場の備品を使いやすいように定位置を決める
・声をかける時は誰か分かるように名乗ってから用件を伝える
・状況を伝える時には「これ」や「それ」といった代名詞を避ける
・ラッシュ時の混雑を避けるため、フレックスタイム時差通勤を活用する

視覚障がい者は音声読み上げソフトがあれば、メールでのやり取りやエクセルでの入力・計算、資料の作成などが可能です。

コミュニケーションを取る際には誰か分かるようにまず名乗ることと、見えにくい人の立場ならどう説明してもらったら分かりやすいかを考えて「これ」や「それ」といった代名詞を避けてより具体的に話すことを意識しましょう。

4-1-2.聴覚障がい

聴覚障がい者についても聞こえ方や聞き取れる内容は人それぞれなので、その人がもっともコミュニケーションを取りやすい方法を取り入れることが大切です。
聴覚障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

聴覚障がい者への合理的配慮の事例
採用時 筆談できる用意をしておく
・読唇できる場合は、大きな声でゆっくりはっきりと話す
入社後 ・障がい特性に合わせて筆談や音声を文字化するアプリを入れた携帯やタブレット、手話を使い分ける
・読唇できる場合は、肩などに触れてこちらを見てもらってから話しかける

音声を文字化するアプリケーションを入れた携帯やタブレットがあれば、少しだけタイムラグはあるもののコミュニケーションを取ることができます。

読唇できる障がい者については、必ず話す人の方を見てもらってからゆっくりはっきりと話すようにしましょう。

 

4-1-3.肢体不自由

「肢体不自由」とは身体の動きに関する器官が病気やケガによって損なわれ、歩行や筆記といった日常生活の動作が難しい状態のことをいいます。
肢体不自由の障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

肢体不自由の障がい者への合理的配慮の事例
採用時 ・会社の入り口からできるだけ近い場所を面接場所にする
入社後 ・通勤の労力を軽減できるように在宅ワークを導入する
移動頻度の少ない業務を割り当てる
・極力移動しなくていいように必要な備品や書類は手の届く範囲に配置する

障がいのある部分や程度によって制限されることも多いので、一人ひとりに合わせた合理的配慮をすることが大切です。

 

4-1-4.内部障がい

「内部障がい」とは、臓器における機能障がいやヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいがあることをいいます。
一見しただけでは障がいがあることが分かりづらいですが、障がいが進行して体力が低下している場合は業務量を減らしたり、通院のための休暇が必要になったりといった合理的配慮が必要になります。
内部障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

内部障がい者への合理的配慮の事例
採用時 ・体調が悪くなったらすぐに休憩スペースを利用するように伝える
入社後 ・通院や通院や急な体調不良に備えて、普段から情報を共有できるチーム体制をとる
・体調が悪くなったらすぐに休憩スペースを利用できる

障がい者本人が同意するなら通院日程をあらかじめチーム全員で共有しておけば、納期までのペース配分を検討しながらチームで協力して仕事を進めることができます。

 

4-2.知的障がいへの配慮事例

知的障がい者も障がいの程度や苦手とすることは人それぞれですが、物事の判断や臨機応変な対応、空気を読むことが難しいことが多いのが特徴です。

知的障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

知的障がい者への合理的配慮の事例
採用時 分かりやすい言葉を選び、場合によってイラストを用いる
入社後 ・あいまいな指示ではなく、具体的かつ端的に説明する
理解度に合わせて業務を割り当てる
・仕事を覚えやすいように分かりやすいマニュアルを作成する
・すぐに質問できるようにサポート担当者を決める

知的障がい者は単純作業でもコツコツと取り組み続けられる高い集中力があり真面目な方も多いので、一人ひとりに合わせて合理的配慮をすれば一生懸命働いてくれる可能性が高くなります。

 

4-3.精神障がいへの配慮事例

「精神障がい」とはうつ病や躁うつ病、統合失調症、てんかんといった障がいのことで、人によって症状が現れる状況や頻度、程度は異なります。

精神障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

精神障がい者への合理的配慮の事例
採用時 他のスタッフの出入りがない場所を面接場所にする
入社後 ・追い詰めないように適切な業務量を割り当てる
体調が変動するサインが見られないか気に掛ける
・ストレスに弱いので、失敗しても大丈夫だと思える声掛けをする
・こまめに休憩を取るように伝える

精神障がい者は不安を感じやすい性質があるので、たとえ失敗しても「これくらいみんなやったことがある失敗なので、大丈夫ですよ。」と安心感を与えらえれるような声掛けをしましょう。

また、表情が曇ってきたり、業務が滞り始めるなどのサインが見られる場合は休憩を促したり、分からない部分はどこかを尋ねたりして気に掛けることが大切です。

 

4-4.発達障がいへの配慮事例

「発達障がい」とは脳機能の発達が関係している先天的な障がいで、生まれながらにして脳の働きに偏りがあってコミュニケーションが取りにくかったり、集中力が続かなかったりします。

発達障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

発達障がい者への合理的配慮の事例
採用時 ・説明を明確におこなう
入社後 ・やるべき仕事の内容、手順、役割分担をマニュアル化して明確にする
・障がい特性を理解してコミュニケーションをする
・ルールにこだわりやすいので、変更がある時には事前に伝える
・指示や注意は具体的におこなう
・音や光に敏感な場合は、パーテーションイヤホンの使用を認める

発達障がい者の中には人と話している最中でも注意がそれてしまって視線が合わなかったり、いきなり違う話題を話し始めたりする人がいますが、障がい特性の一部だと理解してコミュニケーションを取りましょう。
音や光に敏感な発達障がい者はパーテーションやイヤホンの使用を認めると、集中力を維持しやすくなります。

合理的配慮が難しいと感じている企業には「障がい者雇用支援サービス」がおすすめ
障がいに合わせて合理的配慮をするのは難しい感じている企業には「障がい者雇用支援サービス」がおすすめです。

▼障がい者雇用支援サービスとは?

障がい者雇用支援サービスとは、以下の図にあるように企業は障がい者を直接雇用するものの、障がい者はA社が用意した環境で働くという採用方法を利用するものです。

この障がい者雇用支援サービスを利用するメリットは、以下の3つです

障がい者雇用支援サービスを利用するメリット
・障がい者募集・採用のサポートにより採用のミスマッチを防げる
障がいに合わせてどのような合理的配慮をすればよいかをノウハウをもとに判断できる
・障がい者が安心して長期間働ける環境が整備されている

 

このように障がい者雇用支援サービスを利用すると、障がい者の募集や採用だけでなく、合理的配慮についてもすべてA社に任せることができます。

▼早期退職にお悩みなら、株式会社JSHのサービスがおすすめ

雇用している障がい者への合理的配慮だけでなく、早期退職にお悩みの企業には、株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスがおすすめです。

株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスは、以下のように障がい者雇用を推進したい企業と就業意欲の高い地方在住の障がい者を繋いで、地方を中心に展開している農園で障がい者の雇用支援をおこなっているため、職場の定着率が高いのが特徴です。

この株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスを利用すれば企業は障がい者を雇用して、実際に働く場所は株式会社JSHの農園であるため、以下のように合理的配慮について頭を悩まさずにすみます。

障がい者への合理的配慮をするのは難しいという企業の声(一例)
・障がい者にどう接すればいいのか分からない
・障がい者に合理的配慮ができるほど経済的にも余裕がなく、社内の理解が得られない
・周囲のスタッフの負担が大きくなるのではないか

なお、株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスがおすすめである理由は次の3つです。

  • 障がいに対する知識や障がい者雇用実績が豊富なJSHが障がい者募集から採用、定着までをサポート
  • 企業は障がい者に対する合理的配慮の課題を解決することができるだけでなく、自社内でのノウハウの蓄積も実現できる
  • 障がい者が安心して働ける環境が整備されているため、早期離職者が非常に少ない

合理的配慮を実現しながら定着率の高い障がい者を雇用できる株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスを利用してみませんか?

 


株式会社JSHでは、
「募集しても採用につながらない…」
「業務の切り出しがうまくできない…」
「何かと社内トラブルが多く、定着率が低い…」
といった障がい者雇用に関する様々な課題を持つ企業様に向けて、 採用から定着まで包括的なサポートサービスを提供しています。

▼JSHの障がい者雇用支援サービスについて

※無料でダウンロード可能です。

詳細資料はこちら


5.まとめ

いかがでしたか?
障がいについてあまりよく知らない方が読んでもご理解いただけるように、この記事では障がい者雇用における合理的配慮とはどういうものなのか基礎知識や具体的な進め方まで詳しく解説しました。
障がいはさまざまな種類がある上に人によって現れる症状や程度が異なるため、障がい者一人ひとりに合わせて合理的配慮をすることが大切です。
この記事の内容をご参考にしていただき、企業での障がい者雇用で合理的配慮を進められることを願っていますが、難しいと判断した場合は是非ご相談ください。

 

この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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