コラム詳細
2024/12/13
autorenew2024/12/13
障がい者も無期転換ルールが適用される!雇用の注意点・助成金まで解説
障がい者雇用を進めている企業やこれからスタートさせようとしている企業の中には、
「無期雇用ルールは障がい者雇用でも適用されるのか?」
「無期雇用と有期雇用、どちらで雇用を進めればよいかを考えている」
など、雇用形態についてどうしようかお悩みの方もいるかもしれません。
【補足】
・無期雇用とは:期間を決めずに、定年まで働き続けるのが基本となる雇用形態 ・有期雇用とは:期間が決まっており、契約を更新しなければ期間満了で雇用が終了する雇用形態 ・無期転換ルールとは:有期雇用の従業員であっても、更新のあと5年が経つと無期雇用に転換されるルール |
結論から言うと、当然ながら障がい者雇用も、通常と同様に、無期転換ルール(5年ルール)が適用されます。
つまり、期間の定めがある「有期雇用」で障がい者を採用した場合であっても、契約更新後、通算5年を超えると無期雇用に転換されます。
そのため、有期雇用契約で雇う場合も、無期転換を前提として雇用する準備や心構えをしておいたほうが良いということになります。
この記事を読むとわかること
・有期雇用の従業員でも、更新のあと5年が経つと無期雇用に転換される ・5年ルール(無期転換ルール)について、会社側が正当な理由なく断ることはできない ・無期転換した場合には、キャリアアップ助成金という制度を活用できる ・障がい者を正式雇用する前に、「障害者トライアル雇用」を活用するのもおすすめ |
「障がい者雇用を進めたいけれども不安…」という企業担当者こそ、ぜひこの記事を最後まで読んで、無期雇用や有期雇用について理解を深めてください。
※この記事の内容は、2024年12月確認時点の情報を掲載しています。労働契約法の改正や助成金制度の変更により、ルールや助成金の内容・金額などが変わる可能性があるため、最新の情報をご確認ください。 |
【目次】
1. 障がい者雇用でも「5年ルール(無期転換ルール)」は適用される
2. 【注意点】有期雇用契約で雇用する時も無期転換を考慮する必要がある
3. 障がい者雇用で無期転換した場合に使える「キャリアアップ助成金」を活用しよう
4. 長期雇用が不安なら「障害者トライアル雇用」も上手く活用しよう
5. まとめ
1. 障がい者雇用でも「5年ルール(無期転換ルール)」は適用される
まず結論から述べると、障がい者雇用も、通常と同様に、無期転換ルール(5年ルール)が適用されます。その根拠や制度概要について詳しく解説していきます。
1-1. 障がい者にも無期転換ルール(5年ルール)が適用される理由
「有期契約労働者の無期転換ルール(5年ルール)」は、当然ながら障がい者にも適用されます。その理由としては、適用除外の条件に、障がい者が含まれていないからです。
無期雇用ルール(5年ルール)の適用が除外される労働者は、以下のようなケースです。
無期雇用ルールの適用が除外される5つのケース
(1)国家公務員、地方公務員など、労働契約法の適用が除外されている労働者 (2)船員など、労働契約法第18条の適用が除外されている労働者 (3)年収1,075万円以上の高度専門職に該当する有期雇用労働者 (4)定年後に引き続き雇用される有期雇用労働者 (5)大学や研究開発法人の研究者・教員など(5年が10年に延長) |
参考:高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について
障がいのある方は無期雇用ルールの適用除外には載っていないため、無期雇用ルールも適用されるということです。
つまり、1年や3年など期間の定めがある「有期雇用」で障がい者を雇用した場合も、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者から申込みがあれば無期雇用契約に転換されます。
契約社員やパート・アルバイトなど期間の定めのある雇用契約条件で雇用する場合にも、必ず事前に知っておくべき大切なルールです。
1-2. 無期転換ルール(5年ルール)とは
改めて「有期契約労働者の無期転換ルール(5年ルール)」の内容を解説していきます。このルールは、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期雇用契約に転換されるものです。
契約期間が決まっている契約社員などが、通算5年が経つ時に「無期雇用契約に転換してほしいです」と申し出ることで、無期雇用契約に転換してもらえるという制度です。
有期雇用契約・無期雇用契約とは?
有期雇用契約とは、「契約期間1年」や「契約期間3年」など期間の定めがある雇用契約を結んで、会社で働いていることをいいます。具体的には、契約社員やアルバイト、パートタイムなどが該当します。
一方で、無期雇用契約とは、雇用期間に定めのない労働契約のことをいい、正社員などが該当します。
※アルバイトやパートタイムであっても、契約内容によって無期雇用に該当する場合もあります。 |
無期転換ルール(5年ルール)では、従業員から申し出があった場合に無期雇用契約が成立するため、会社側は、正当な理由なく、無期転換を断ることはできません。
例えば、契約社員として「契約期間:3年」の雇用契約で働いていた方が、4年目に同じ契約を1回更新したとします。この場合、5年が経過した時点で無期転換を希望すれば、無期雇用契約に転換されます。
2. 【注意点】有期雇用契約で雇用する時も無期転換を考慮する必要がある
今回紹介した「有期契約労働者の無期転換ルール(5年ルール)」を踏まえた上で、障がい者を有期雇用で雇う場合に注意すべきポイントを解説します。
2-1. 不当な「雇い止め」は違法になる可能性がある
前述した通り「有期契約労働者の無期転換ルール(5年ルール)」では、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期雇用契約に転換されます。そして原則として、正当な理由が無い限り、この申し出を企業側が断ることはできません。
正当な理由がある場合に契約を更新しないのは違法ではありませんが、無期転換ルールを逃れようとする「雇い止め」とみなされてしまうと、労働契約法第16条に違反する可能性があるので注意しましょう。
2-2. 無期転換ルールを回避するための雇い止めも無効になる可能性がある
「有期契約労働者の無期転換ルール(5年ルール)」が適用されるのは有期雇用契約が更新されて通算5年を超えた時です。
しかし、これよりも前に、無期転換を回避するために労働者を雇止めや解雇することもまた、望ましいことではありません。仮に裁判になった場合には「無効」と判断される可能性は高いと考えられます。
2-3. 有期雇用契約であっても無期転換を考慮しておくようにしよう
2-1や2-2で述べた通り、有期雇用契約であっても、無期転換ルールによって無期雇用契約になる可能性があることや、不当な理由での雇い止めや解雇が無効になる可能性があることをしっかり認識しておくべきです。
つまり、契約期間を定めて雇用する場合であっても「契約満了で辞めてもらおう」という態度ではなく、問題が無ければ雇い続ける心づもりで受け入れることが望ましいといえます。
次の章で解説する「キャリアアップ助成金(無期転換した場合に受給できる助成金)」や、その次の章で解説する「トライアル雇用」などの制度もうまく活用して、前向きに進めていきましょう。
3. 障がい者雇用で無期転換した場合に使える「キャリアアップ助成金」を活用しよう
ここまで示した通り、1年や3年のつもりで雇用した場合にも、無期雇用に転換しなければならないルールがあるため、雇用主は注意しておく必要があります。場合によっては「この無期転換ルールがあると雇いづらい」と考える方もいるかもしれません。
ここからは、こうした場合に活用できる助成金についても解説しておきます。
3-1. キャリアアップ助成金(障害者 正社員化コース)の概要
無期転換ルールに関連して、障がいのある有期雇用労働者(契約社員・パート・派遣社員など)を正社員や無期雇用に転換した場合に使える「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」が用意されています。
助成条件に該当する場合には、対象者1人あたり45万円〜120万円(支給対象期間1年間)の助成金を受け取ることができます。
※中小企業以外の場合は、33万円〜90万円となります。
3-2. キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)を受けられる条件
使える条件は、以下のいずれかを継続的に講じた場合です。
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)の概要
・有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換する措置 ・無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する措置 |
3-3. キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)の支給額
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)の支給額は、以下の表のとおりです。
支給対象者 | 措置内容 | 支給総額 | 支給対象期間 | 各支給対象期
における支給額 |
重度身体障がい者、重度知的障がい者、および精神障がい者 | 有期雇用から
正規雇用への転換 |
120万円
(90万円) |
1年
(1年) |
60万円×2期
(45万円×2期) |
有期雇用から
無期雇用への転換 |
60万円
(45万円) |
30万円×2期
(22.5万円×2期) |
||
無期雇用から
正規雇用への転換 |
60万円
(45万円) |
30万円×2期
(22.5万円×2期) |
||
重度以外の身体障がい者、重度以外の知的障がい者、発達障がい者、難病患者、
高次脳機能障害と診断された者 |
有期雇用から
正規雇用への転換 |
90万円
(67.5万円) |
45万円×2期
(33.5万円※×2期) ※第2期の支給額は34万円 |
|
有期雇用から
無期雇用への転換 |
45万円
(33万円) |
22.5万円×2期
(16.5万円×2期) |
||
無期雇用から
正規雇用への転換 |
45万円
(33万円) |
22.5万円×2期
(16.5万円×2期) |
※( )内は中小企業以外の額 支給対象者1人あたり、上記の額を支給します。
重度の障がい者のほうが支給額が多く、また、無期転換だけでなく「正規雇用」に転換する場合に支給額が多くなります。
正規雇用とは、いわゆる「正社員」のことで、契約期間の定めがなく、所定労働時間勤務し、社会保険の加入義務がある雇用形態のことをいいます。
3-4. キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)の支給を受ける方法
キャリアアップ助成金の支給を受けるには、以下のようなステップに沿った手続きが必要となります。
キャリアアップ助成金の支給を受けるステップ
(1)事前にキャリアアップ計画を作成して、ハローワークに提出する (2)無期雇用や正社員への転換規定がない場合には、就業規則を改定する (3)就業規則に基づいた無期転換や正社員化をおこなう (4)取組後、6カ月の賃金の支払いをおこなう (5)キャリアアップ助成金の支給を申請する(6カ月の賃金を支払った日の翌日から2カ月以内) (6)支給審査が行われた後、支給が決定する |
事前に「キャリアアップ計画」を作成して提出しなければならないなど、支給を受けるためには少し複雑な手続きが必要となります。
確実に助成金を受け取るためには、管轄の労働局またはハローワークに相談しながら、不備が無いよう進めていきましょう。
4. 長期雇用が不安なら「障害者 トライアル雇用」も上手く活用しよう
「障がい者を雇用したいけれど無期転換ルールが気になるし、マッチするか不安」という場合には、厚生労働省の「障害者トライアル雇用」という制度も上手く活用しましょう。
障害者トライアル雇用とは、原則3カ月間のトライアル雇用期間を経て、障がい者の適性や能力を見極め、継続雇用に繋げるきっかけを作ることを目的とした制度です。
トライアル雇用の期間が満了した時点で、雇用を継続するかどうかを企業が判断することが可能です。
正式な雇用契約を締結する前にお試しで雇用できるため、この期間に障がい者も企業もお互いに対する理解を深め、雇用における不安を軽減できます。
さらに詳しく知りたい方は、別記事「障害者トライアル雇用の全ガイド|期間・求人・助成金を含む制度内容」もぜひ参考になさってください。
5. まとめ
本記事では「障がい者雇用における無期転換ルール」や「無期雇用・有期雇用」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
障がい者雇用でも「5年ルール(無期転換ルール)」は適用される
・理由としては、適用除外の条件に、障がい者が含まれていないから
・有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期雇用契約に転換されるルールのこと |
有期雇用契約で障がい者を雇用する時も無期転換を考慮する必要がある
・不当な「雇い止め」は違法になる可能性がある
・無期転換ルールを回避するための雇い止めも無効になる可能性がある ・有期雇用契約であっても無期転換を考慮しておくようにしよう |
障がい者雇用で無期転換した場合に使える「キャリアアップ助成金」
・障害者正社員化コースは、障がいのある有期雇用労働者(契約社員・パート・派遣社員など)に使える
・対象者1人あたり45万円〜120万円(支給対象期間1年間)の助成金を受け取ることができる |
障がい者雇用において、無期雇用はもちろん有期雇用契約を行う場合にも、その先を考えた採用計画を立てることが大切です。
「障害者トライアル雇用」や外部の障がい者雇用サービスをうまく活用しながら、障がい者雇用を積極的に進めていきましょう。障がい者雇用や定着について何かお困りごとがある場合には、ぜひお気軽に当社JSHにご相談ください。
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