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calendar_today2025/01/15

autorenew2025/01/28

【障害者雇用調査で読み解く】企業がこれから取り組むべきこと8つ

「障がい者雇用に関する調査を知りたい」
「障がい者雇用に関する調査を調べて、今後の方針を決めていきたい」

とお考えではありませんか?

障がい者雇用に関する直近の調査には、厚生労働省の「令和5年度障害者雇用の実態調査」があります。

この調査によると、

【令和5年度障害者雇用の実態調査から読み解く8つのポイント】

・障がい者雇用数は5年前から25万6,000人増加している

 

・雇用されている障がい者のうち、特に発達障がい者の雇用が増えている

 

・職業によって障がい者種別の比率が異なる

 

・障がい種別関係なく週30時間勤務が最も多いが週20時間未満の短時間勤務の間口も広がってきている

 

・障がい者雇用における賃金は上昇傾向にある

 

・「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている

 

・障がい者雇用を促進するために必要だと思う施策は「外部の支援機関の助言・援助などの支援」

 

・障がい者を雇用しない理由は「適した業務が社内にないから」が最も多い

であることがわかっています。

つまり、障がい者雇用をするにあたって課題はあるものの、多くの企業が障がい者雇用に取り組むようになってきていることが分かります。

ただし、こうした調査結果を表面的に知るだけでは、法定雇用率の達成に向けた方針を立てるのは簡単ではありません。

調査結果の表面だけをさらったとしても、どのポイントに注目すればいいのかが分かりにくく、今後どのような取り組みをしていけばいいのか、いまいち掴めないでしょう。

そこでこの記事では、厚生労働省の「令和5年度障害者雇用の実態調査」の結果を読み解き、今後企業が法定雇用率達成のために知っておくべきポイントや取り組みを詳しく解説します。

本記事で解説する内容は、以下のとおりです。

この記事から分かること
・令和5年度障害者雇用の実態調査から読み解く8つのポイント

・【調査結果から考察】障がい者雇用への取り組みを本格化するためにやるべきこと7つ

・企業は先回りして障がい者雇用に取り組むべき

この記事を読むことで、障がい者雇用に関する調査結果を理解できるだけでなく、法定雇用率達成に向けて、自社の障がい者雇用における方針を定められるようになるでしょう。

ぜひ最後までお読みください。

【目次】
1. 令和5年度障害者雇用の実態調査の概要一覧
2. 実態調査で注目すべきこと1:障がい者雇用数は5年間で25万6,000人増加している
3. 実態調査で注目すべきこと2:雇用されている障がい者のうち、特に発達障がい者の雇用が増えている
4. 実態調査で注目すべきこと3:職業によって障がい者種別の比率が異なる
5. 実態調査で注目すべきこと4:障がい種別関係なく週30時間勤務が最も多いが、週20時間未満の短時間勤務の間口も広がってきている
6. 実態調査で注目すべきこと5:障がい者雇用における賃金は上昇傾向にある
7. 実態調査で注目すべきこと6:「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている
8. 実態調査で注目すべきこと7:障がい者雇用を促進するために必要だと思う施策は「外部の支援機関の助言・援助などの支援」
9. 実態調査で注目すべきこと8:障がい者を雇用しない理由は「適した業務が社内にないから」が最も多い
10. 【調査結果から考察】障がい者雇用への取り組みを本格化するためにやるべきこと8つ
11. 企業は先回りして障がい者雇用に取り組むべき
12. まとめ


1.令和5年度障害者雇用の実態調査の概要一覧

まずは厚生労働省の「令和5年度障害者雇用の実態調査※」から、今後の方針に役立つ情報を一覧にしてまとめます。

詳しく知りたいトピックがある場合は2章以降の章をお読みください。

令和5年度障害者雇用の実態調査の注目すべき結果一覧
障がい者雇用数は5年前から25万6,000人増加している

 

障がい者雇用数が110万7,000人となり、5年前から25万6,000人増加

 

→詳しくは「2.実態調査で注目すべきこと1:障がい者雇用数は5年間で25万6,000人増加している」で解説しています。

雇用されている障がい者のうち、特に発達障がい者の雇用が増えている

 

身体障がい者:52万6,000人(増加率24.3%)

知的障がい者:27万5,000人(増加率45.5%)

精神障がい者:21万5,000人(増加率7.5%)

発達障がい者:9万1,000人(増加率133.3%)

 

→詳しくは「3.実態調査で注目すべきこと2:雇用されている障がい者のうち、特に発達障がい者の雇用が増えている」で解説しています。

職種によって障がい者種別の比率が異なる

 

→詳しくは「4.実態調査で注目すべきこと3:職業によって障がい者種別の比率が異なる」で解説しています。

障がい種別関係なく週30時間勤務が最も多いが週20時間未満の短時間勤務の間口も広がってきている

 

→詳しくは「5.実態調査で注目すべきこと4:障がい種別関係なく週30時間勤務が最も多いが、週20時間未満の短時間勤務の間口も広がってきている」で解説しています。

障がい者雇用における賃金は上昇傾向にある

 

→詳しくは「6.実態調査で注目すべきこと5:障がい者雇用における賃金は上昇傾向にある」で解説しています。

障がい者雇用にあたって「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている

 

→詳しくは「7.実態調査で注目すべきこと6:「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている」で解説しています。

障がい者雇用を促進するために必要だと思う施策は「外部の支援機関の助言・援助などの支援」と答えた企業が最も多い

 

→詳しくは「8.実態調査で注目すべきこと7:障がい者雇用を促進するために必要だと思う施策は「外部の支援機関の助言・援助などの支援」」で解説しています。

※「障害者雇用実態調査」は、民間企業における障がい者雇用の実態を把握し、その後の政策等に役立てるため、5年に1度行われています。

 

2.実態調査で注目すべきこと1:障がい者雇用数は5年間で25万6,000人増加している

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障がい者数は110万7,000人となり、平成30年の調査と比較すると5年間で25万6,000人増加していることが明らかとなっています。

また、厚生労働省「令和5年障害者雇用状況の集計結果」によると、以下のように企業が雇用する障がい者数は右肩上がりに増加していることがわかります。

出典:厚生労働省「令和5年障害者雇用状況の集計結果

障がい者雇用が増加している理由としては一般的に、

・障害者雇用促進法における法定雇用率の上昇
・企業によるダイバーシティやCSRの取り組み推進

などによるものだと言われています。

この調査結果から言えるのは、

多くの企業が障がい者の採用に積極的である
世の中に障がい者雇用に関するノウハウも蓄積されてきている

ということです。

この2つのポイントをしっかり理解しておくことで、これからの障がい者雇用の流れに乗って、方針や取り組みを決められるため、必ず押さえておきましょう。

詳しくポイントを整理すると以下のとおりです。

調査結果から分かる重要なポイント
多くの企業が障がい者の採用に積極的であり、優秀な人材の獲得競争が激しくなっている可能性がある

 

障がい者雇用数が大幅に増加しているということは、他企業も障がい者の採用に積極的である可能性があります。

 

つまり、優秀な障がい者人材の獲得競争が激しくなっている可能性が高く、自社も競争力を高める必要があるでしょう。

 

そのための取り組みとして「効果的な採用戦略」は必要不可欠であるといえます。

 

【取り組み】効果的な採用戦略を立てる(具体的な取り組み内容は10-1.効果的な採用戦略の策定を参照)

3.実態調査で注目すべきこと2:雇用されている障がい者のうち、特に発達障がい者の雇用が増えている

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」では、障がいの種類別の雇用状況を明らかにしています。

具体的な数値を確認してみると、以下のようにすべての種別で雇用人数がアップしています。

【障がいの種類別雇用状況】
  平成30年 令和5年
身体障がい者 42万3,000人 52万6,000人(増加率24.3%)
知的障がい者 18万9,000人 27万5,000人(増加率45.5%)
精神障がい者 20万人 21万5,000人(増加率7.5%)
発達障がい者 3万9,000人 9万1,000人(増加率133.3%)

この中でも特筆すべきは、発達障がい者の雇用の増加率が大きいことです。
表でも示した通り、その増加率は133.3%にもなります。

出典:令和5年度障害者雇用の実態調査をもとに作成

その理由として考えられるのは、2018年4月から発達障がいを含む精神障がい者も法定雇用率の算定基準に加えられたことです。

これによって発達障がい者の雇用が急増しています。

また、「ニューロダイバーシティ※」という、特に発達障がいのある人の特性を活かし、企業活動に生かそうとする動きを経済産業省が推進していることも追い風となっていると言えそうです。

この調査結果や背景から言えることは、

企業が発達障がい者を積極的に採用するようになってきている

ということです。

このポイントを理解しておくことで、今後の障がい者雇用の採用方針に効果的に活かせる可能性があるため、しっかり押さえておきましょう。

具体的なポイントの解説は以下のとおりです。

調査結果から分かる重要なポイント
企業が発達障がい者に対する理解を深め、積極的に採用している

 

調査結果やその背景から、企業が発達障がい者の特性や能力に対する理解を深め、積極的に受け入れていることが示唆されています。

 

発達障がい者は特定の分野で高い能力を持つ方が多いため、適切な環境を整えることで企業にとって大きな戦力となり得るでしょう。

 

そのため、社内では発達障がい者への理解と受け入れ体制の構築をすることも重要であると言えます。

 

【取り組み】発達障がい者への理解と受け入れ体制を構築する(具体的な取り組み内容は10-3.発達障がい者への理解と受け入れ態勢の構築を参照)

したがって、発達障がい者の雇用が大きく進んでいることは大きなポイントといえるでしょう。

※参考:経済産業省「ニューロダイバーシティの推進について

 

4.実態調査で注目すべきこと3:職業によって障がい者種別の比率が異なる

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」によると、以下のように職業によって障がい者種別の比率が異なっています。

【職業別の雇用者数の割合】
身体障がい者 事務的職業:26.3%

サービスの職業:15.0%

生産工程の職業:13.5%

知的障がい者 サービスの職業:23.2%

運搬・清掃・包装等の職業:22.9%

生産工程の職業:16.6%

精神障がい者 事務的職業:29.2%

専門的、技術的職業:15.6%

サービスの職業:14.2%

発達障がい者 サービスの職業:27.1%

事務的職業:22.7%

運搬・清掃・包装等の職業:12.5%

この調査結果から言えるのは、障がいの種類によって適した職種があるということです。

以下のように、障がい別の特性と業務内容の相性を明らかにすることができます。

【障がい別の特性と業務内容の相性について】

 

身体障がい者の特徴

「事務的職業」の割合が高いのは、身体障がいの場合、知的能力に制限がなく、デスクワークを中心とした事務職との親和性が高いため。

バリアフリー化された職場環境があれば、多くの事務作業に対応できる。

 

知的障がい者の特徴

「サービス職」や「運搬・清掃職」の割合が高いのは、比較的単純な作業の反復や、明確な手順が示された業務との相性が良いため。

こうした職種は具体的な作業手順を視覚的に示しやすく、習得がしやすい特徴があるという理由もあり、サービス職や運搬・清掃職の割合が高くなっている。

 

精神障がい者の特徴

事務的職業や専門的職業の割合が高いのは、多くの場合、発症前に就労経験や専門的な教育を受けている人が多いため。

また、比較的静かな環境で個別に業務を進められる事務職が、症状の安定に良い。

 

発達障がい者の特徴

「サービス職」の割合が高いのは、明確な手順や規則性のある業務との親和性が高いため。

「事務的職業」の割合が高いのは、興味のある分野に対して高い集中力を発揮できる特性があり、データ入力や書類整理などの事務作業との相性が良い傾向があるから。

このポイントを知っておくことで、今後雇用した障がい者に長く定着してもらうヒントにすることができるでしょう。

具体的なポイントの解説は以下のとおりです。

調査結果から分かる重要なポイント
適した職業とのマッチングが重要

 

調査結果から、障がいの種類によって適した職業が異なるため、障がいの種類と業務内容にはそれぞれ相性があることがわかります。

 

そのため、自社の業務内容と雇用する障がい者の特性をマッチングさせ、彼らが活躍できるポジションを特定することで、障がい者の能力を最大限に引き出すことができます。

 

したがって、自社の職務内容とうまくマッチングするように

 

・自社の職務設計を見直し、

・障がい者が働きやすく、能力を発揮しやすい環境を整える

 

といったことを行うと良いでしょう。

 

【取り組み】職務内容とマッチングさせる(具体的な取り組み内容は10-2.職務内容とマッチングさせるを参照)

 

5.実態調査で注目すべきこと4:障がい種別関係なく週30時間勤務が最も多いが、週20時間未満の短時間勤務の間口も広がってきている

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」によると、週の勤務時間別に雇用者の割合を見てみると、すべての障がい者種別で週30時間以上の勤務が最も多いことが明らかとなっています。

一方で、週20時間未満の短時間勤務をする人も一定数いることがわかります。

週の勤務時間別の雇用者の割合
身体障がい者 週30時間以上:75.1%

週20時間以上30時間未満:15.6%

週10時間以上20時間未満:7.2%

週10時間未満:1.2%

知的障がい者 週30時間以上:64.2%

週20時間以上30時間未満:29.6%

週10時間以上20時間未満:3.2%

週10時間未満:2.1%

精神障がい者 週30時間以上:56.2%

週20時間以上30時間未満:29.3%

週10時間以上20時間未満:8.4%

週10時間未満:2.7%

発達障がい者 週30時間以上:60.7%

週20時間以上30時間未満:30.0%

週10時間以上20時間未満:4.8%

週10時間未満:3.9%

この調査結果から分かるのは、週30時間以上で勤務をする障がい者が多い一方で、「週30時間未満」「週20時間未満」の短時間勤務を行う障がい者も徐々に増えてきていて、間口が広がってきているということです。

また、この結果とあわせて知っておきたい事実として「週20時間未満の障がい者雇用も雇用率にカウントする法改正が2024年4月1日から施行されたこと」があります。

国は、週10時間以上20時間未満の重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者を実雇用率において0.5人としてカウントできるように法改正を行いました。

このポイントをしっかり理解しておくことで、自社での障がい者雇用の勤務時間についても見直して、多くの障がい者に働いてもらえる職場に向けて、新たな方針を打ち出せるようになるでしょう。

具体的なポイントは以下に解説します。

調査結果から分かる重要なポイント
短時間勤務の障がい者の割合が増加し、「週30時間以上で勤務する障がい者」も「短時間勤務の障がい者」もあわせて雇用することで、法定雇用率を達成する企業が増える可能性がある

 

この調査結果と法改正の事実から考えられるのは、

 

・法改正が追い風となって短時間勤務の障がい者の割合が増加する可能性がある

・週30時間以上で勤務する障がい者、短時間勤務の障がい者の雇用も組み合わせて、法定雇用率を達成する企業が増える可能性がある

 

ということです。

 

そのため、

 

・企業は週30時間以上で勤務する障がい者、短時間勤務の障がい者の雇用も組み合わせて採用を行う

・より柔軟に勤務時間を調整できる体制を整える

 

といったことを行い、障がい者雇用の流れにうまく乗る必要があるといえるでしょう。

 

【取り組み】労働時間の最適化と多様な勤務形態を提供する(具体的な取り組み内容は10-7.多様な勤務形態の設定を参照)

6.実態調査で注目すべきこと5:障がい者雇用における賃金は上昇傾向にある

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」の障がい者雇用における平均賃金について見てみると、賃金は上昇傾向にあることが分かります。

障がい者雇用における平均賃金
身体障がい者 23万5,000円(平成30年は 21万5,000円)
知的障がい者 13万7,000円(平成30年は 11万7,000円)
精神障がい者 14万9,000円(平成30年は 12万5,000円)
発達障がい者 13万円(平成30年は 12万7,000円)

この調査結果から分かるのは、平均よりも安価な賃金では優秀な人材を確保・定着してもらうのは難しくなるということです。

このポイントを知っておかないと、

・現在雇用している障がい者が賃金の安さを理由にして退職してしまう
・賃金の安さを理由に優秀な人材を確保できない

といった事態になりかねません。

そのため、以下の具体的なポイントをしっかり確認して、自社がどのようにしていくべきなのかを考えましょう。

調査結果から分かる重要なポイント
人材確保・定着のためには適正な賃金設定をする必要がある

 

障がい者雇用の平均賃金が上昇しているということは、競争力のある給与を提示しなければ優秀な人材の確保が難しくなる可能性があります。

 

また平均賃金が上昇する流れの中で、自社の障がい者雇用の賃金が安い場合、すでに自社で働く障がい者のモチベーションや定着率の低下につながるおそれがあるでしょう。

 

こうしたことから、人材確保・定着のためには適正な賃金設定をする必要があります。

 

自社の障がい者雇用の賃金を改めて見直し、適正化していきましょう。

 

【取り組み】賃金水準の適正化を行う(具体的な取り組み内容は10-1.効果的な採用戦略の策定を参照)

7.実態調査で注目すべきこと6:「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」では、障がい者を雇用する課題として、身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、発達障がい者ともに、「会社内の適当な仕事があるか」が最も多いことが明らかとなっています。

障がい者雇用における課題について(複数回答)
身体障がい者 「会社内に適当な仕事があるか」:77.2%

「職場の安全面の配慮が適切にできるか」:47.4%

「障がい者を雇用するイメージやノウハウがない」:41.7%

知的障がい者 「会社内に適当な仕事があるか」:79.2%

「障がい者を雇用するイメージやノウハウがない」:51.6%

「採用時に適正、能力を十分把握できるか」:40.0%

精神障がい者 「会社内に適当な仕事があるか」:74.2%

「障がい者を雇用するイメージやノウハウがない」:49.6%

「採用時に適正、能力を十分把握できるか」:42.2%

発達障がい者 「会社内に適当な仕事があるか」:76.9%

「障がい者を雇用するイメージやノウハウがない」:49.7%

「採用時に適正、能力を十分把握できるか」:42.9%

この結果から、多くの企業が雇用した障がい者に割り当てる業務がないことに悩んでいることが読み取れます。

この課題について詳しく知っておくことで、障がい者にとって働きやすい職場となり、定着率向上につながる可能性があります。

そのため、以下のポイント解説をしっかり確認しておきましょう。

調査結果から分かる重要なポイント
障がい者の能力や特性に合った業務を切り出す

 

調査結果から、多くの企業が「社内に雇用した障がい者への適切な仕事がない」ことを課題と認識しています。

 

実際の現場でそうした事態が発生してしまうと、雇用した障がい者本人のモチベーションが下がってしまったり、最悪の場合は退職したりと、人材が定着しなくなります。

 

そのため、障がい者の能力や特性に合った業務を切り出すことで、雇用した障がい者の仕事を創出する必要があるでしょう。

 

【取り組み】障がい者の能力や特性に合った業務を切り出す(具体的な取り組み内容は10-6.業務の切り出しを参照)

8.実態調査で注目すべきこと7:障がい者雇用を促進するために必要だと思う施策は「外部の支援機関の助言・援助などの支援」

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」によると、障がい者雇用を促進するために必要な施策について、企業にアンケートを実施しています。

その結果は以下のとおりです。

障がい者雇用を促進するために必要な施策(複数回答)
身体障がい者 「雇入れの際の助成制度の充実」:63.0%

「外部の支援機関の助言・援助などの支援」:58.3%

「雇用継続のための助成制度の充実」:56.7%

知的障がい者 「外部の支援機関の助言・援助などの支援」:59.4%

「雇入れの際の助成制度の充実」:57.7%

「雇用継続のための助成制度の充実」:52.7%

精神障がい者 「外部の支援機関の助言・援助などの支援」:62.5%

「雇入れの際の助成制度の充実」:58.1%

「雇用事例や障がい特性・雇用管理上の留意点に関する情報提供」」52.0%

発達障がい者 「外部の支援機関の助言・援助などの支援」:62.5%

「雇入れの際の助成制度の充実」:58.0%

「雇用継続のための助成制度の充実」:53.0%

ここから分かるのは、多くの企業が外部の支援機関の助言・援助などのサポートを必要としているということです。

このポイントを把握しておかないと、自社だけで障がい者雇用に取り組んで、時間やコストが過度にかかってしまうおそれがあります。

そのため、以下のポイント解説を確認しておきましょう。

調査結果から分かる重要なポイント
障がい者雇用を促進していくためには外部支援機関へサポートを依頼する

 

この調査結果から、

 

・多くの企業にとって自社だけで障がい者雇用を進めるのは困難であること

・外部の支援機関のアドバイスやサポートが必要となっていること

 

が分かっています。

 

というのも、企業の多くはこれまでに障がい者雇用の経験がなく、知識やノウハウがないために、障がい者雇用の取り組みをうまく進めることが難しいのです。

 

その証拠に、「7.実態調査で注目すべきこと6:「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている」では、多くの企業が「社内に雇用した障がい者への適切な仕事がない」ことを課題にしていました。

 

そのため、専門的な知識やノウハウを持つ外部の支援機関と連携して、障がい者雇用に取り組んでいきましょう。

 

【取り組み】外部支援機関との連携を取る(具体的な取り組み内容は10-4.外部支援機関との連携を参照)

9.実態調査で注目すべきこと8:障がい者を雇用しない理由は「適した業務が社内にないから」が最も多い

厚生労働省「令和5年度障害者雇用の実態調査」によると、障がい者を雇用しない理由を企業に聞いたところ、「適した業務が社内にないから」という理由が最も多いことが分かっています。

障がい者を雇用しない理由(複数回答)
身体障がい者を

雇用しない理由

適した業務がないから:74.4%

施設・設備が対応していないから:38.8%

職場になじむのが難しいと思われるから:18.9%

知的障がい者を

雇用しない理由

適した業務がないから:78.3%

施設・設備が対応していないから:31.2%

職場になじむのが難しいと思われるから:25.2%

精神障がい者を

雇用しない理由

適した業務がないから:72.6%

職場になじむのが難しいと思われるから:29.1%

施設・設備が対応していないから:26.1%

発達障がい者を

雇用しない理由

適した業務がないから:77.3%

施設・設備が対応していないから:29.2%

職場になじむのが難しいと思われるから:27.5%

7.実態調査で注目すべきこと6:「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている」でも明らかになったように、この調査結果からも、障がい者を雇用しても適した業務を用意できないことが大きな課題であることが分かります。

さらに「施設・設備が対応していない」「職場になじむのが難しいと思われる」という理由も、上位にランクインしていることも注目すべき点です。

この事実を知っておくことで、自社もこの課題にぶつかる可能性が高く、具体的な対処を行うことができ、障がい者雇用を推進しやすくなります。

そのため、以下の重要ポイントを把握しておきましょう。

調査結果から分かる重要なポイント
業務の切り出しだけでなく、障がい者向けの設備導入、障がい者への理解教育を推し進めることが重要

 

「社内に適した業務がない」「施設・設備が対応していない」「職場になじむのが難しいと思われる」といった理由から、障がい者雇用を行っていない企業が多いことが分かっています。

 

これらは、これまで障がい者雇用を実施していない企業に、障がい者雇用を推進するうえで大きな障壁となります。

 

なぜなら、社内に障がい者を受け入れる姿勢や準備がなければ、雇用される障がい者側もそこで働きたいと思わないからです。

 

したがって、

 

・業務の切り出しを行う

・障がい者向けの設備を改善する

・障がい者への理解を深める教育

 

を実施して、企業も障がい者も気持ちよく働ける環境に整えることが重要です。

 

【取り組み】

・業務の切り出しを行う(具体的な取り組み内容は10-6.業務の切り出しを参照)

・施設・設備を改善する(具体的な取り組み内容は10-5.施設・設備の改善を参照)

・社内で障がい者に関する理解を深める教育を行う(具体的な取り組み内容は10-8.障がい者への理解教育の実施を参照)

 

10.【調査結果から考察】障がい者雇用への取り組みを本格化するためにやるべきこと8つ

ここまで厚生労働省の「令和5年度障害者雇用の実態調査」を読み解きながら、本格的に障がい者雇用を進めるための方針策定に役立つポイントをお伝えしました。

ここで、調査結果から読み解けるポイントを把握するだけではなく、「具体的にどうやって取り組むのか」についてもしっかりと押さえておくことが重要です。

そうすれば、障がい者雇用への取り組みを本格化する際に、より効果的な方針を策定できるようになります。

そこで10章では、これまでにお伝えしたポイントと照らし合わせながら、本格的な障がい者雇用への取り組みに向けてやるべきことを、以下8つに分けて解説します。

障がい者雇用への取り組みを本格化するためにやるべきこと8つ
・効果的な採用戦略の策定

・職務内容とのマッチング

・発達障がい者への理解と受け入れ態勢の構築

・外部支援機関との連携

・施設・設備の改善

・業務の切り出し

・多様な勤務形態の設定

・障がい者への理解教育の実施

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

10-1.効果的な採用戦略の策定

やるべきこと1つめは「効果的な採用戦略を策定」することです。

2章と6章では、以下のように重要なポイントをお伝えしました。

2.実態調査で注目すべきこと1:障がい者雇用数は5年間で25万6,000人増加している

【調査から分かる重要なポイント】

多くの企業が障がい者の採用に積極的であり、優秀な人材の獲得競争が激しくなっている可能性がある

 

6.実態調査で注目すべきこと5:障がい者雇用における賃金は上昇傾向にある

【調査から分かる重要なポイント】

適切な報酬を提示しなければ優秀な人材を確保できない可能性がある

こうしたことから、障がい者雇用において優秀な人材を確保するための「採用戦略」を策定する必要があるのです。

効果的な採用戦略を策定するためには、以下のポイントを意識しましょう。

・【ポイント1】適正な賃金を設定する

・【ポイント2】採用チャネルを多様化させる

・【ポイント3】企業ブランディングを強化する

それぞれ詳しく解説します。

 

10-1-1.【ポイント1】適正な賃金を設定する

効果的な採用戦略を策定するためのポイント1つめは「適正な賃金を設定する」ことです。

調査結果から、賃金が低くては優秀な人材を確保できないおそれがあることが示唆されました。

そのため、適切な報酬を提示し、競争力のある適正な賃金を設定する必要があります。

競争力のある適正な賃金を決めるためには、以下のように設定しましょう。

適正な賃金を設定するためのポイント
(1)一般雇用枠での採用と同じく、企業の賃金体系をもとに、労働条件と業務にあわせて決定する

 

(2)昇給・昇進など、障がい者にも公平なキャリアパスを示し、長期的な就労意欲を高める

 

(3)同業他社の平均賃金を下回らないようにする

(同業他社の障がい者雇用賃金水準は「令和5年度障害者雇用の実態調査」の産業別、規模別の賃金データを参考にしましょう。)

 

(4)賃金だけでなく、福利厚生や働きやすさを含めたトータル的な報酬を提供する

 

10-1-2.【ポイント2】採用チャネルを多様化させる

効果的な採用戦略を策定するためのポイント2つめは「採用チャネルを多様化させる」ことです。

採用のチャネルを多様化させ、より多くの人の目に触れるようにすることも一つの手です。

そのため、以下のようなチャネルを増やして、応募数を増やし、優秀な人材を確保できる確率を高めましょう。

採用チャネルとして活用できるもの一覧
・障がい者向け求人サイトや専門誌に求人情報を掲載する

 

・オンライン広告やSNSを活用し、広範囲に情報発信する

 

・ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、などと連携して人材紹介を受ける

 

・合同企業説明会やマッチングイベントに参加する

 

・特別支援学校や職業訓練校と提携し、インターンシップや職場体験の機会を提供する

 

10-1-3.【ポイント3】企業ブランディングを強化する

効果的な採用戦略を策定するためのポイント3つめは「企業ブランディングを強化する」ことです。

障がい者雇用において、企業ブランディングを強化しておくことで、他社との差別化を図る手段となり、優秀な障がい者の人材を引きつけることができます。

たとえば、自社のWebサイトに「障がい者雇用専用の特設ページ」を開設し、以下の情報を掲載するケースもあります。

障がい者社員のインタビュー

実際に働く障がい者の社員の声を、動画や記事で紹介し、どのような経験ができるのか、どのようなキャリアパスになるのかを発信する

 

職場環境の紹介

バリアフリー設計のオフィスや障がい者に配慮した設備の写真や説明を掲載する

 

サポート体制

ジョブコーチ(※)の配置など、働きやすさを支える取り組みを掲載する

 

※ジョブコーチ:障がい者の職場への適応に課題がある場合に、職場に出向いて、障がい特性を踏まえた専門的な支援を実施して、障がい者が職場に適応するようサポートする人

上記のような情報を掲載すれば、障がいのある求職者にとって、その企業が魅力的に感じられるのがイメージできるのではないでしょうか。

こうした取り組みが他社との差別化を図る手段となり、効果的な採用戦略へとつなげることができるのです。

 

10-2.職務内容とのマッチング

やるべきこと2つめは「職務内容とマッチングさせる」ことです。

4章では、以下のように重要なポイントをお伝えしました。

4.実態調査で注目すべきこと3:職業によって障がい者種別の比率が異なる

 

【調査から分かる重要なポイント】

障がいの種類によって適した職業が異なるため、障がいの種類と業務内容にはそれぞれ相性がある

そのため、以下のポイントを行うことで雇用した障がい者の能力を最大限に引き出すことができるでしょう。

・自社内の業務を細分化し、障がい者が活躍できるポジションを特定する

・障がい者の特性に合わせた職務内容や働き方を検討する

それぞれのポイントについて具体的に見ていきましょう。

 

10-2-1.自社内の業務を細分化し、障がい者が活躍できるポジションを特定する

職務内容とマッチングさせるためのポイント1つめは「自社内の業務を細分化し、障がい者が活躍できるポジションを特定する」ことです。

具体的には、以下のような流れで、自社の業務から障がい者が活躍できるポジションを見つけ出しましょう。

自社の業務から障がい者が活躍できるポジションを特定する流れ
【ステップ1】業務の全体的な洗い出し

・会社全体の業務を部署ごとに洗い出し、すべてのタスクをリストアップする

・日常業務からプロジェクト単位の業務まで、可能な限り詳しく記載する

 

 

【ステップ2】業務の細分化

 

<タスクの分解>

・各業務をさらに細かいタスクやプロセスに分解する

・例:経理業務を「データ入力」「伝票整理」「帳簿管理」などに分ける

 

<業務の特性の明確化>

・各タスクに必要なスキル、知識、経験、身体的要件を明確にする

・それぞれのタスクの負荷や、必要なコミュニケーションレベルなどを評価する

 

 

【ステップ3】適性のマッチング

 

<障がい者の特性の理解>

・障がいの種類(身体、知的、精神、発達など)ごとに特性や得意分野を把握する

・例:視覚障がい者は聴覚や触覚を活かした業務に適している場合がある

 

<業務と特性のマッチング>

・分解したタスクと障がい者の特性を照らし合わせ、適した業務を特定する

・例:データ入力やコツコツとした作業は、集中力が高い方に適している

 

 

【ステップ4】ポジションの特定・職務設計

 

<適切なポジションの設定>

・マッチングの結果から、障がい者が活躍できるポジションを新設または既存のポジションを調整する

・例:資料のデジタル化担当、ウェブアクセシビリティのテスターなど

 

<職務内容の明確化>

・職務の目的、具体的な業務内容、期待される成果を明確にする

 

10-2-2.障がい者の特性に合わせた職務内容や働き方を検討する

職務内容とマッチングさせるためのポイント2つめは「障がい者の特性に合わせた職務内容や働き方を検討する」ことです。

具体的には、以下のポイントを意識することで障がい者の特性に合わせた職務内容や働き方を考え、創出できます。

障がい者の特性に合わせた職務内容や働き方を検討するポイント
各個人の特性とニーズの把握

 

<本人との面談>

・障がいの特性、得意なこと、苦手なこと、希望する働き方をヒアリングする

・プライバシーに配慮しつつ、業務に影響する情報を共有してもらう

 

<医療・専門機関からの情報>

・必要に応じて、医師や専門家からの意見を参考にする(本人の同意が必要)

 

 

職務内容の調整

 

<業務を調整する>

・障がい者の強みを活かせるよう、業務内容を調整する

・例:細かい作業が得意な方には品質検査業務を担当してもらう、など

 

<業務量と難易度の調整>

・負担が過度にならないよう、業務量や難易度を調整する

 

 

働き方に柔軟性を持たせる

 

<勤務時間の調整>

体調や通院などを考慮し、フレックスタイム制や時短勤務を導入する

 

<在宅勤務の検討>

通勤が難しければ、テレワークを活用する など

このように、

・自社の業務からまずは障がい者にマッチする業務を特定し、
・そのうえで各障がい者の特性に合わせて職務内容を割り振る

という流れで行うことで、それぞれの障がい者に相性の良い業務に従事してもらうことができます。

ひいては、定着率アップにつながったり、自社の生産性向上にもつながったりするでしょう。

 

10-3.発達障がい者への理解と受け入れ態勢の構築

やるべきこと3つめは「発達障がい者への理解と受け入れ態勢の構築をする」ことです。

3章では、以下のように重要なポイントをお伝えしました。

3.実態調査で注目すべきこと2:雇用されている障がい者のうち、特に発達障がい者の雇用が増えている

 

【調査から分かる重要なポイント】

企業が発達障がい者に対する理解を深め、積極的に採用している

発達障がい者は特定の分野で高い能力を持つことが多いため、適切な環境を整えることで企業にとって大きな戦力となり得ます。

そのため、「発達障がい者への理解・受け入れ体制の構築」が障がい者雇用の取り組みの中で重要であるといえるでしょう。

以下のような社内教育と環境整備を行い、そのうえで発達障がい者を採用していく準備を整えていきましょう。

発達障がい者への理解を深める教育で社員に学んでもらうべきこと
管理職向け研修

・発達障がいの特性についての基礎知識

・発達障がい者への合理的配慮の事例

・コミュニケーションの取り方

・パニック時の対応方法

 

社員向け研修

・発達障がいについての基本的な理解

・具体的な配慮の方法

・チームワークの取り方

・サポートの仕方

発達障がい者の受け入れ体制構築のためにやるべきこと
職場環境の整備

・個別の作業スペースの確保

・音や光などの刺激を調整できる環境づくり

・視覚的な指示や手順書の整備

・休憩スペースの確保

 

コミュニケーションに関するルールの整備

・指示は明確で具体的に、できれば文書や図で示す

・定期的な面談時間の設定(週1回など)

・相談窓口や担当者の明確化

・チャットやメールなど、本人が得意なコミュニケーション手段の活用

なお、こうした発達障がい者への理解を深める教育や受け入れ体制構築の実施は、自社だけではハードルが高いため、

・発達障害者支援センター
・ハローワーク

などの定期セミナー・研修に参加したり、相談したりすることをおすすめします。

 

10-4.外部支援機関との連携

やるべきこと4つめは「外部支援機関との連携」です。

8章では、以下のように重要なポイントをお伝えしました。

8.実態調査で注目すべきこと7:障がい者雇用を促進するために必要だと思う施策は「外部の支援機関の助言・援助などの支援

 

【調査から分かる重要なポイント】

・多くの企業にとって自社だけで障がい者雇用を進めるのは困難である

・知識やノウハウのある外部の支援機関のアドバイスやサポートが必要となっている

こうしたことから、外部支援機関と連携を取って、障がい者雇用を進めていくことが重要です。

外部支援機関への相談は、以下を参考にどこに何を相談するべきか判断しましょう。

障がい者雇用における外部支援機関一覧
ハローワーク(公共職業安定所) 【サービス内容】

・障がい者の求職登録と職業紹介

・障がい者向け求人の開拓

・職場定着指導

・雇用率達成指導

・企業向けチーム支援の実施

 

【利用がおすすめのケース】

・障がい者の採用を始めたい、求人を出したい

・障がい者雇用の基本的な制度や助成金について知りたい

・障がい者雇用率の達成に向けたアドバイスが欲しい

地域障害者職業センター 【サービス内容】

・職業評価、職業指導

・職業準備訓練の実施

・ジョブコーチ支援

・事業主への雇用管理に関する助言

・職場復帰支援(リワーク支援)

 

【利用がおすすめのケース】

・障がい者雇用の専門的なアドバイスが必要

・職場定着に向けた具体的な支援が欲しい

・ジョブコーチによる支援を受けたい

・社内研修の実施方法について相談したい

障害者就業・生活支援センター 【サービス内容】

・就業面と生活面の一体的な支援

・職場定着に向けた支援

・生活習慣の形成支援

・健康管理・金銭管理の助言

・関係機関との連絡調整

 

【利用がおすすめのケース】

・就業面と生活面の両方での支援が必要

・長期的な定着支援を受けたい

・地域の支援機関との連携が必要

就労移行支援事業所 【サービス内容】

・就職準備のためのトレーニング

・企業実習の実施

・適性に合った職場探し

・就労後の職場定着支援

・期間は原則2年以内

 

【利用がおすすめのケース】

・職業訓練を受けた人材を採用したい

・実習を通じて適性を見極めたい

・就職後の定着支援を受けたい

 

10-5.施設・設備の改善

やるべきこと5つめは「施設・設備の改善」です。

9章では、以下のように重要ポイントをお伝えしました。

9.実態調査で注目すべきこと8:障がい者を雇用しない理由は「適した業務が社内にないから」が最も多い

 

【調査から分かる重要なポイント】

「施設・設備が対応していない」という理由も、上位にランクインしているため、障がい者雇用に向けて、障がい者向けの設備導入を行うことが重要

こうしたことから、企業は障がい者雇用に伴って、施設や設備を導入することで、障がい者雇用のハードルを下げることができるでしょう。

いきなりすべての施設・設備の改善を行うのは簡単なことではないため、まずは手軽にできる以下のような改善から行っていきましょう。

障がい者雇用における着手しやすい施設・設備の改善方法一覧
仕切りパネルの設置:デスク周りにパーティションを設置し、個別の作業スペースを確保する

・視覚的な刺激を軽減し、業務への集中を促進

・周囲の動きや光による不快感を軽減

・プライバシーの確保による心理的安全性の向上

 

視覚的な案内の整備:分かりやすい案内表示の設置

・ピクトグラム(図記号)の活用

・作業手順の視覚化(写真やイラストの活用)

・聴覚障がい者への確実な情報伝達

・作業手順の明確化による効率を向上

・初めての場所でも迷わない環境作り

 

照明環境の調整:個別の作業スペースに卓上ライトを設置

・必要に応じて遮光カーテンやブラインドを活用

・光の刺激に敏感な方への配慮、目の疲労軽減

・個人に適した明るさでの作業実現

 

音環境の改善:ノイズキャンセリングヘッドホンの導入、パーティションによる音の遮断

・必要に応じて静かな作業スペースの確保

・騒音による不快感の軽減

・集中力を妨げる音の遮断

・コミュニケーションの質の向上

 

休憩スペースの確保:既存の会議室や空きスペースの一部を活用する

・クールダウンできる静かな場所の確保

・パニック時のクールダウン場所の提供

・疲労回復による業務効率の向上

・メンタルヘルスケアの促進

 

通路の整備

・通路幅の確保(物を置かない)

・床面の段差解消(簡易スロープの設置)

・手すりの設置(後付け可能なタイプ)

 

10-6.業務の切り出し

やるべきこと6つめは「業務の切り出し」です。

7章では、以下のように重要ポイントをお伝えしました。

7.実態調査で注目すべきこと6:「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている

 

【調査から分かる重要なポイント】

・多くの企業が雇用した障がい者に割り当てる業務がないことに悩んでいる

・障がい者の能力や特性に合った業務を切り出すことで、雇用した障がい者の仕事を創出する必要がある

したがって、企業は以下のポイントを参考にしながら「業務の切り出し」に取り組んでいきましょう。

業務の切り出しを行う際の流れ
【ステップ1】部署を決める

【ステップ2】業務を洗い出す

【ステップ3】タスクまで細分化する

【ステップ4】作業内容・時間・優先度等で業務を比較する

【ステップ5】慣れるためのサポートをする

【ステップ6】業務を任せる

 

なお、業務の切り出しについてさらに詳しく知りたい方は、「【障がい者雇用】業務の切り出しの基礎知識|正しい方法とポイント3つ」の記事もぜひご覧ください。

 

また、当社JSHが作成したホワイトペーパー「業務の切り出し課題解決に向けた事例集」もぜひご活用ください。

 

10-7.多様な勤務形態の設定

やるべきこと7つめは「多様な勤務形態の設定」です。

5章では、以下のように重要ポイントをお伝えしました。

5.実態調査で注目すべきこと4:障がい種別関係なく週30時間勤務が最も多いが、週20時間未満の短時間勤務の間口も広がってきている

 

【調査から分かる重要なポイント】

・法改正が追い風となって短時間勤務の障がい者の割合が増加する可能性がある

週30時間以上で勤務する障がい者、短時間勤務の障がい者の雇用も組み合わせて、法定雇用率を達成する企業が増える可能性がある

以上のことから、障がい者雇用を行う企業は、

・企業は週30時間以上で勤務する障がい者、短時間勤務の障がい者の雇用も組み合わせて採用を行う
・より柔軟に勤務時間を調整できる体制を整える

を行う必要があります。

具体的には、以下のようにさまざまな勤務形態を設定したり、柔軟な勤務体制の整備をしたりして、さまざまな勤務時間で働く障がい者を雇用できる体制を整えましょう。

多様で柔軟な勤務形態の設定の仕方
多様な勤務形態を設定する

・週30時間以上のフルタイム勤務

・週20-30時間の短時間勤務

・週10-20時間の超短時間勤務(2024年4月から算定対象)

を選べるようにする

 

障がいの種類・程度に応じて労働時間を柔軟に設定する

・働くうえでのこだわりや特性

・どのくらいの労働時間だと無理のない範囲で働けるのか

をヒアリングして労働時間を決める

 

なお、障がい者の労働時間を決める際のポイントを以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてお読みください。

 

障がい者の労働時間に制限はあるのか?|適正な労働時間を設定するコツを解説します

 

10-8.障がい者への理解教育の実施

やるべきこと8つめは「障がい者への理解教育の実施」です。

5章では、以下のように重要ポイントをお伝えしました。

9.実態調査で注目すべきこと8:障がい者を雇用しない理由は「適した業務が社内にないから」が最も多い

 

【調査から分かる重要なポイント】

・「職場になじむのが難しいと思われる」などの理由から、障がい者雇用を行っていない企業が多い

以上のことから、障がい者雇用を行う企業は障がい者への理解教育を推し進めていくことが重要です。

ただし、障がい者への理解教育を自社で進めるためには、講師を務める人に、

・障がい特性に関する深い理解
・適切な配慮や支援方法の知識
・最新の法制度や支援制度の情報

などが必要となります。そのため、外部機関に依頼して教育を行うことをおすすめします。

具体的には、以下の外部機関を目的に合わせて活用しましょう。

障がい者の理解教育を実施する際に活用できる外部機関
【基礎的な障がい理解のための研修】

 

地域障害者職業センター

・障がい特性に応じた職場での配慮事項の指導

・企業内研修のサポート

・事業主や従業員向けの障がい理解促進セミナー

・ジョブコーチによる実践的な指導方法の提供

 

以下のサイトには各地域の障がい者職業センターへのリンクが一覧となっていますので、利用を検討されている方はご覧ください。

 

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」

 

 

【実践的な知識の習得】

 

障害者就業・生活支援センター

・企業の人事担当者への障がい特性の説明

・職場での具体的な配慮事項のアドバイス

・職場の従業員向け研修の実施

・生活面での支援方法に関する助言

 

以下のサイトのPDFには、各地域の障害者就業・生活支援センター一覧が掲載されていますので、利用を検討されている方はご覧ください。

厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて

【あわせて読みたい】

 

障がいの種類ごとの特徴などを詳しく理解したい場合は以下の記事もあわせてお読みください。

 

障がいの種類は?わかりやすく分類するなら身体・知的・精神の3種類

 

 

また障がい者雇用について、さまざまな視点で相談できる先を探している場合は、以下の記事もあわせてお読みください。

 

障がい者雇用の相談先一覧|選び方から相談すべきことまで一挙解説

 

11.企業は先回りして障がい者雇用に取り組むべき

「障害者雇用実態調査」を読み解き、重要なポイントや取り組みを理解して、今後の方向性が明確になってきたのではないでしょうか。

今回お伝えしたことをもとにして、障がい者雇用の方向性を定めたら、先回りして、早めに障がい者雇用に取り組んでいくべきです。

なぜなら、障がい者雇用市場での競争が激化する中、先回りして取り組むことで優秀な人材を確保しやすくなるからです。

2024年12月現在の法定雇用率は2.5%となっておりますが、2026年7月には2.7%へ引き上げられることが決まっており、障がい者雇用は今後ますます推進されていくことが予想されます。

今から取り組めば、余裕を持って施設や設備の整備を行ったり、社内の障がい者理解の教育を丁寧に進めたりといったこともできるでしょう。

こうしたことから、企業は先回りして障がい者雇用に本格的に取り組んでいきましょう。

ただし、すぐには障がい者雇用に向けて設備や業務を用意するのは難しいケースもあるかと思います。

設備や業務の用意に時間や手間がかかって、自社で行うのが難しいという場合は、「10-4.外部支援機関との連携」で解説したような外部機関のほかにも、民間の就労支援へサポートを依頼することをおすすめします。

すぐに障がい者雇用の本格化に踏み切りやすくなるでしょう。

障がい者雇用の取り組み方に困っている場合はコルディアーレ農園へご相談ください

「障がい者雇用に取り組んでいるけど、これから本格化する際に何をしていいのかわからない…」という方は、ぜひJSHのコルディアーレ農園にご相談ください。

 

「コルディアーレ農園」は農園型障がい者雇用支援サービスとして、地方在住の障がいのある方と、障がいのある方の採用・定着にお困りの企業様をつなぐサポートをしています。

 

・採用ノウハウがなく、障がい者雇用は難しい

・障がい者の特性に合わせた仕事の切り出し方がわからない

 

障がい者の雇用への取り組みにお悩みの企業様はぜひ「コルディアーレ農園」へ一度お問い合わせください。

 

コルディアーレ農園について聞く

 

 

12. まとめ
この記事では、障がい者雇用における調査として、厚生労働省の「令和5年度障害者雇用の実態調査」を読み解き、以下8つのポイントを解説しました。

・障がい者雇用数は5年前から25万6,000人増加している

 

・雇用されている障がい者のうち、特に発達障がい者の雇用が増えている

 

・職業によって障がい者種別の比率が異なる

 

・障がい種別関係なく週30時間勤務が最も多いが週20時間未満の短時間勤務の間口も広がってきている

 

・障がい者雇用における賃金は上昇傾向にある

 

・「社内に適当な仕事がない」ことが最大の課題となっている

 

・障がい者雇用を促進するために必要だと思う施策は「外部の支援機関の助言・援助などの支援」

 

・障がい者を雇用しない理由は「適した業務が社内にないから」が最も多い

また、障がい者雇用への取り組みを本格化するためにやるべきこととして、以下の8つをご紹介しました。

・効果的な採用戦略の策定

・職務内容とのマッチング

・発達障がい者への理解と受け入れ態勢の構築

・外部支援機関との連携

・施設・設備の改善

・業務の切り出し

・多様な勤務形態の設定

・障がい者への理解教育の実施

本記事の内容が、障がい者雇用の本格化に向けて模索しているご担当者様の参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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