コラム詳細
2025/02/20
autorenew2025/02/20
障がい者雇用の『5つの努力義務』とは│怠った場合の罰則や影響・取組事例
「障がい者雇用について調べていたら、『努力義務』という言葉が出てきたが、努力義務とはどういう意味?」
「『努力義務』と『義務』はどう違うのか? 努力義務なら取り組まなくても問題ないのか?」
障がい者雇用を推進している企業の経営者や人事担当者の方が、障がい者雇用における努力義務について詳しく知りたくて、検索したのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、法的には「努力義務」は「守るように努めるべきこと」なので、絶対に取り組まなくてはならないものではなく、罰則等もありません。
しかしながら、サポートが必要な障がい者の方を雇用する以上、彼らが働きやすくなるように、努力義務にも積極的に取り組むスタンスでいることは、非常に重要になります。
具体的に何をすればいいのかというと、企業が取り組むべき主な5つの努力義務は、以下の通りです。
障害者基本法 | 雇用の促進と安定 |
障害者雇用促進法 | 苦情の自主的解決 |
障がい者雇用推進者の選任 | |
短時間勤務で働く障がい者の勤務時間の柔軟な設定 | |
障害者差別解消法 | 合理的配慮を提供するための環境の整備 |
これらの努力義務に取り組まないと、以下のリスクがあります。
努力義務を怠った時の3つのリスク |
・雇用した障がい者が早期退職しやすい、定着しない
・雇用障がい者数を増やす際に対応が遅れやすい ・企業イメージが悪化する可能性がある |
障がい者の方が働きやすい企業になるために、努力義務には出来るものから取り組むべきですし、実際には大多数の企業が当たり前のこととして、取り組んでいるのが現状です。
この記事では、以下のポイントについて詳しくご紹介します。
この記事で分かること |
・障がい者雇用における「努力義務」は必ずしも取り組まなくて構わないが、積極的に取り組むスタンスが必要
・障がい者雇用における企業が取り組むべき主要な5つの努力義務 ・努力義務を怠っても罰則はないが、3つのリスクがある ・障がい者雇用における努力義務は、出来るものから取り組むべき ・企業での障がい者雇用における努力義務の取り組み事例 ・努力義務のハードルが高いと感じるようであれば、社外の支援サービスを活用するのもおすすめ |
障がい者雇用における「努力義務」について理解を深め、あなたの企業で障がい者雇用を推進できるように、ぜひ最後まで読み進めていただけると幸いです。
【目次】
1. 障がい者雇用における「努力義務」とは
2. 障がい者雇用において企業が取り組むべき主な努力義務5つ
3. 努力義務を怠っても罰則はないが、3つのリスクがある
4. 障がい者雇用における努力義務は出来るものから取り組んでいこう
5. 企業での障がい者雇用における努力義務の取り組み事例
6. 努力義務のハードルが高いと感じるなら社外の支援サービスも活用しよう
7. まとめ
冒頭でもお伝えした通り、障がい者雇用における「努力義務」は、以下のように、「守るように努めるべきこと」なので、絶対に取り組まなくていいですし、罰則もありません。
努力義務 | ・守るように努めるべきこと
・罰則はなし |
義務 | ・必ず行わなければならないこと
・法的拘束力があり、違反すると行政罰や刑事罰が科される |
しかしながら、サポートが必要な障がい者の方を雇用する以上、努力義務についても、積極的に取り組むスタンスでいることは、非常に重要になります。
主な「努力義務」は、以下の通りです。
対象 | 内容 | 罰則 |
全ての企業 | ・雇用の促進と安定
・苦情の自主的解決 ・短時間勤務で働く障がい者の勤務時間の柔軟な設定 ・合理的配慮を提供するための環境の整備 |
なし |
雇用障がい者数が
4人以下の企業 |
・障がい者雇用推進者の選任 | なし |
一方で、主な「義務」は以下の通りです。
対象 | 内容 | 罰則 |
全ての企業 | 差別的取扱いの禁止
合理的配慮の提供 |
最高20万円の過料
(報告の怠慢、虚偽の報告があった場合) |
障がい者を雇用する企業 | 障がい者の解雇時の
「解雇届」の提出 |
30万円以下の罰金
(報告の怠慢、虚偽の報告があった場合) |
常用労働者数が
40人以上の企業 |
法定雇用率以上の雇用 | 不足1人当たり月額5万円の
障害者雇用納付金の徴収 ※常用労働者が100人以上の企業 |
障がい者の雇用状況の毎年の報告 | 30万円以下の罰金
(報告の怠慢、虚偽の報告があった場合) |
|
雇用障がい者数が
5人以上の企業 |
障がい者職業生活相談員の選任 | なし |
このように「義務」には法的拘束力があり、違反したり、違反があったことをきちんと報告しなかった場合には、罰金や過料、障害者雇用納付金を支払わなければいけません。
罰則がある「義務」は優先して取り組む企業は多いですが、障がい者の方が働きやすい企業になるために、「努力義務」についても、出来ることから取り組むべきです。
2. 障がい者雇用において企業が取り組むべき主な努力義務5つ
障がい者雇用における努力義務には法的拘束力はありませんが、障がい者の方が働きやすくなるように、積極的に取り組まなければなりません。
障がい者の方に関する法律を元に、企業が取り組むべき主な努力義務を挙げると、以下の5つがあります。
障害者基本法 | 雇用の促進と安定 |
障害者雇用促進法 | 苦情の自主的解決 |
障がい者雇用推進者の選任 | |
短時間勤務で働く障がい者の勤務時間の柔軟な設定 | |
障害者差別解消法 | 合理的配慮を提供するための環境の整備 |
努力義務の内容をしっかりと理解できるように、参考にしてみましょう。
2-1. 雇用の促進と安定
障害者基本法には、以下のように、「障がい者雇用の促進と安定」に関する努力義務が定められています。
第19条2 事業主は、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の機会を確保するとともに、個々の障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。 |
引用:障害者基本法
具体的には、以下の3つの取り組みによって、障がい者の方が長く働けるように努めなければなりません。
(1)障がい者の能力を正当に評価する
・障がいによる苦手なことがあっても、マイナス評価を下さない ・個々の能力や特性に合った頑張りや成長を評価する仕組みを整備する
(2)適切な雇用の機会を確保する ・障がいを理由に、新しい従業員の採用を取り消さない ・既存の従業員が障がい者になった場合、退職を迫らない
(3)個々の障がい者の特性に応じた雇用管理を行う ・個々の能力が発揮できる仕事がある部署に配置する ・適切な評価に基づき、最低賃金を下回らない給与体系を構築する ・障がい者のモチベーションを維持できるように、評価を給与に反映させる |
雇用した障がい者の方の一人ひとりを尊重し、その方の障がい特性に合わせて、評価方法や管理方法を改善していくことが求められるのです。
2-2. 苦情の自主的解決
障害者雇用促進法には、以下のように、「障がいのある従業員から受け付けた苦情を自主的に解決する」という努力義務が定められています。
第74条4 事業主は、第35条及び第36条の3に定める事項に関し、障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。 |
引用:障害者雇用促進法
障がいがある方を雇用した後、企業が優位に立って、何でも言い聞かせようとするスタンスでいてはいけません。
障がいがある方の申し出をないがしろにせず、以下のように、困ったり悩んだりしている事柄を改善していくことが重要になります。
・仕事内容が合わなくて辛い
→仕事内容の変更を検討する
・仕事を進める上で、配慮してほしいことがある →具体的に希望する内容をヒアリングし、職場で共有して、配慮を心がける
・通院のために遅刻や早退させてほしい →社内制度の見直しや、仕事内容の調整を行う |
2-3. 障がい者雇用推進者の選任
同じく障害者雇用促進法には、以下のように、「障がい者雇用推進者」の選任が、努力義務として定められています。
第78条2 事業主は、その雇用する労働者の数が常時第43条第7項の厚生労働省令で定める数以上であるときは、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる業務を担当する者を選任するように努めなければならない。
一 障害者の雇用の促進及びその雇用の継続を図るために必要な施設又は設備の設置又は整備その他の諸条件の整備を図るための業務
二 第43条第7項の規定による報告及び第81条第1項の規定による届出を行う業務
三 第46条第1項の規定による命令を受けたとき、又は同条第5項若しくは第6項の規定による勧告を受けたときは、当該命令若しくは勧告に係る国との連絡に関する業務又は同条第1項の計画の作成及び当該計画の円滑な実施を図るための業務 |
引用:障害者雇用促進法
以下の3つの業務を担当する障がい者雇用推進者を選ぶように、努めることが求められているのです。
(1)障がい者が働きやすくなるように施設や設備などを整える
・段差をなくす、エレベーターや多目的トイレを設置するなどのバリアフリー工事 ・視覚障がい者のための拡大読書器、音声読み上げ機能アプリの導入など ・周囲の視線や雑音が気になる精神障がい者のための、ついたての準備など
(2)各種届出を行う ・常用労働者が40名以上の企業は、毎年一回、厚生労働省令で定めるところにより、障がい者雇用状況を厚生労働大臣に報告「義務」あり ・障がい者を解雇する場合、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所長に届け出る「義務」あり
(3)障がい者の雇入れに関する計画作成や、計画をスムーズに実施できるように動く ・法定雇用率を達成していない企業は、「障がい者雇入れ計画書」の提出を命じられる |
社会全体として障がい者雇用を推進していくために、どの企業でも担当者となる「障がい者雇用推進者」を設置するように努めるべきだ、とされているのです。
なお、以下のように、今後、企業における雇用障がい者数が5人以上になる場合は、「障がい者職業生活相談員」の選任が義務になるので、注意しましょう。
雇用障がい者数が4人までの企業 | 「障がい者雇用推進者」の選任 | 努力義務 |
雇用障がい者数が5人以上の企業 | 「障がい者職業生活相談員※」の選任 | 義務 |
※「障がい者職業生活相談員」は、資格認定講習を修了するなどして資格を有する従業員から選任し、障がい者の方の職業生活に関する相談や指導を行う
2-4. 短時間勤務で働く障がい者の勤務時間の柔軟な設定
障害者雇用促進法では、以下のように、「短時間勤務で働く障がい者の勤務時間の柔軟な設定」が、努力義務として定められています。
第80条 事業主は、その雇用する障害者である短時間労働者が、当該事業主の雇用する労働者の所定労働時間労働すること等の希望を有する旨の申出をしたときは、当該短時間労働者に対し、その有する能力に応じた適切な待遇を行うように努めなければならない。 |
引用:障害者雇用促進法
障がいがある方が一般企業で雇用される場合、仕事内容や職場環境、体調面の不安から、短時間勤務で働き始める方がいらっしゃいます。
徐々に慣れて自信がつき、そのような方から「勤務時間を伸ばしたい」と申し出があった時に、勤務時間を長く設定するように努めることが求められているのです。
反対に、これまでは長時間勤務で働いていた方が体調を崩した場合は、以下の対応を心がけましょう。
・勤務時間を短くする
・テレワークや、早出遅出出勤、フレックスタイム制を導入する ・休憩時間の分割や、延長を認める |
このように、勤務時間を柔軟に設定すると、障がい者の方が無理せず働きやすくなるので、努力義務ではありますが、積極的に取り組んでいきましょう。
障がい者雇用における短時間勤務も法定雇用率の算定が可能 |
短時間勤務であっても、以下に当てはまる障がい者の方が週10時間以上働く場合は、法定雇用率の算定対象となります。(0.5人カウント)
・重度身体障がい者(身体障害者手帳の等級が1級・2級) ・重度知的障がい者(療育手帳の区分がA(最重度・重度)) ・精神障がい者
週20時間以上30時間未満で働く場合については、以下の障がい者の方が法定雇用率の算定対象となります。(0.5人もしくは1人とカウント)
・身体障がい者 ・重度身体障がい者(身体障害者手帳の等級が1級・2級) ・知的障がい者 ・重度知的障がい者(療育手帳の区分がA(最重度・重度)) ・精神障がい者
詳しくは、「障がい者雇用の短時間勤務は算定(カウント)対象?カウントや取り組み方を具体的に解説」をご覧ください。
最新の調査結果に基づく、障がい者の方の勤務時間については、「障がい者雇用の勤務時間|最新調査結果と雇用率カウント早見表で解説」で、ご紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてみましょう。 |
2-5. 合理的配慮を提供するための環境の整備
障害者差別解消法では、以下のように、「合理的配慮を提供するための環境の整備」が、努力義務として定められています。
第5条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 |
引用:障害者差別解消法
第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 |
引用:障害者差別解消法
障害者差別解消法では、以下の3つのポイントが重要ですが、2024年11月時点で努力義務となっているのは、「合理的配慮を提供するための環境の整備」だけです。
不当な差別的取扱いの禁止 | 義務 |
合理的配慮の提供 | 【施行時】努力義務
↓ 【2024年4月改正後】義務 |
合理的配慮を提供するための環境の整備 | 努力義務 |
努力義務のままとなっている「合理的配慮を提供するための環境の整備」は、具体的には、以下のような内容です。
(1)施設構造の改善や設備の整備
・段差をなくす、エレベーターや多目的トイレを設置するなどのバリアフリー工事 ・視覚障がい者のための拡大読書器、音声読み上げ機能アプリの導入など ・周囲の視線や雑音が気になる精神障がい者のための、ついたての準備など
(2)関係職員に対する研修 ・従業員向けに障がい者雇用研修を行い、障がいや合理的配慮の必要性について理解を深め、お互いを尊重できるようにする |
障がい者の方が職場で安心して過ごせるように、できることから環境の整備に取り組んでみましょう。
「合理的配慮の提供」とは |
「合理的配慮の提供」は、障害者差別解消法が施行された当時は努力義務でしたが、2024年4月から全ての企業の「義務」となりました。
合理的配慮とは、「障がいがある方が仕事や生活をする上で直面する、困り事や課題を取り除くために、本人の意志を尊重しつつも、企業にとって負担になり過ぎない範囲で調整すること」です。
障がい者の方と同じ目線に立って、どうしたら働きやすくなるのか考えていかなければなりません。
「負担になり過ぎない範囲」とされていますが、職場における合理的配慮は、何をどこまで提供したらよいのか迷う方は多いと思います。
合理的配慮の具体例について、「合理的配慮の具体例まとめ|場面別・障がい別に提供のポイントを紹介」で詳しくご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。 |
障がい者雇用における企業が取り組むべき5つの努力義務が、お分かりになったと思います。
これらを怠っても、「努力義務」なので、特に罰則はありません。
しかし、努力義務に取り組まなければ、以下の3つのリスクがあるので、ぜひ参考にしてください。
努力義務を怠った時の3つのリスク |
・雇用した障がい者が早期退職しやすい
・雇用障がい者数を増やす際に対応が遅れやすい ・企業イメージが悪化する可能性がある |
3-1. 雇用した障がい者が早期退職しやすい
努力義務を怠ると、あなたの企業で雇用した障がい者が早期退職しやすくなります。
なぜなら、どの努力義務の内容も、障がい者の方を尊重し、働きやすい職場にしていくために定められたものだからです。
義務はもちろんのこと、努力義務についても積極的に取り組む企業は、障がい者の方が安定して長く働ける可能性が高まります。その結果、法定雇用率についても達成されやすくなるでしょう。
一方で、「努力義務だから」と積極的に取り組まない企業では、以下のような理由で、障がい者の方がすぐに辞めてしまう可能性があります。
・正当に評価されず、尊重されていないと感じる
・担当者がいなくて、社内の誰に相談していいか分からない ・勇気を出して相談しても、何も変わらない ・希望通りの勤務時間で働けない ・適切な合理的配慮が提供されず、体力的・精神的に辛い |
このように早期退職しやすくなると、結果的に法定雇用率を達成できない上に、採用コストがかさむ事態に繋がる恐れがあるのです。
3-2. 雇用障がい者数を増やす際に対応が遅れやすい
努力義務を怠ると、あなたの企業で、以下のようなきっかけで雇用障がい者数を増やす際に、対応が遅れやすくなります。
・法定雇用率の引き上げ
・企業の規模の拡大 |
努力義務を怠っている企業では、障がい者一人ひとりに向き合う機会が不足しやすく、障がい者雇用に関する知識やノウハウが培われません。
そうなると、どうしても柔軟な雇用ができなくなってしまいます。
具体的には、以下のような状態になりがちです。
・施設や設備、制度が整備されていないため、特定の障がい者しか雇用できない
・特定の障がい者に割り当てる仕事しか、社内に見出せない |
その結果、雇用障がい者数を増やしたいタイミングで増やせず、思うように法定雇用率を達成できない事態になる可能性があります。
3-3. 企業イメージが悪化する可能性がある
努力義務を怠ると、企業イメージが悪化する可能性もあります。
なぜなら、努力義務はほとんどの企業で積極的に取り組まれているため、「障がい者雇用に前向きに取り組んでいない」という良くない印象を持たれるからです。
ここで「SDGs」を持ち出すと大きな話になりますが、SDGsの8番目に掲げられている、以下の「働きがいも経済成長も」という目標を達成するには、障がいがある方を含めた雇用促進が必要になります。
2025年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施されたアンケートでは、7割以上の学生が、「SDGsに取り組んでいると志望度が上がる」と回答しました。
この結果は、障がい者雇用における努力義務を怠ることで、優秀な求職者があなたの企業に応募しなくなる可能性があることを示唆しています。
求職者のみならず、社会全体で社会貢献に対する意識が高まっているため、努力義務を怠った場合に取引先や投資家も同様に、良い印象は持たないでしょう。
このように努力義務を怠ると、「障がい者雇用に前向きに取り組んでいない」と、企業イメージが悪化する可能性があるため、出来ることから取り組んでいく必要があります。
4. 障がい者雇用における努力義務は出来るものから取り組んでいこう
障がい者雇用における努力義務を怠ると、雇用した障がい者が早期退職しやすいだけでなく、企業イメージまで悪化する可能性があります。
「2.障がい者雇用における企業が取り組むべき主な努力義務5つ」で、ご紹介した5つの努力義務については、出来るものから積極的に取り組んでいきましょう。
大多数の企業は、以前から当たり前のこととして、取り組んでいるからです。
あなたの企業においても、努力義務にも積極的に取り組んで、障がい者の方が働きやすい環境を整備し、社会のスタンダードに合わせていきましょう。
どのように取り組めばいいのかについては、次章で事例をご紹介します。
努力義務に取り組もうとしても、どのようにすればいいのか分からない方は多いのではないでしょうか。
以下の3社の取り組み事例をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
企業での障がい者雇用における努力義務の取り組み事例 |
・A社:バリアフリーな店づくりと障がい者雇用研修
・B社:苦情を改善・共有する仕組みと障がいのある社員自ら行うサポート ・C社:障がい者の希望に合わせた勤務時間の設定 |
5-1. A社:バリアフリーな店づくりと障がい者雇用研修
衣料品の製造小売をしているA社では、全ての努力義務に取り組んでいますが、特に以下の2つに対する取り組みが顕著なので、ご紹介します。
・2-1. 雇用の促進と安定 |
「雇用の促進と安定」については、A社では法定雇用率を達成するだけにとどまらず、「1店舗に1名以上の障がい者を雇用する」との目標を掲げ、実際に10年以上にわたり、この目標をほぼ達成してきました。
これは、障がい者の方に歩み寄り、意見に耳を傾けて、共に働く仲間として受け入れているからこそ、出来たことではないでしょうか。
「合理的配慮を提供するための環境の整備」についても、障がいのある従業員だけでなく、来店する幅広いお客様も、快適に過ごせるバリアフリーな店づくりを推進しています。
また、障がいのある従業員のそれぞれの能力と可能性を広げられるように、店長や社員向けの障がい者雇用研修を行い、お互いを尊重して理解を深めることにより、パフォーマンスの向上に繋げています。
5-2. B社:苦情を改善・共有する仕組みと障がいのある社員自ら行うサポート
金融業のB社でも、全ての努力義務に取り組んでいますが、特に以下の2つに対する取り組みが素晴らしいので、ご紹介します。
・2-2. 苦情の自主的解決 |
「苦情の自主的解決」については、障がいのある従業員が働く上で困っていることを申し出てサポートを受けられる窓口や担当者が設置されているのは、B社では当然のことです。
さらに、障がい者の方自身が以下のような内容を発信し、毎月優秀な案に対して表彰を行い、苦情を苦情だけで終わらせず、改善・共有する仕組みを作り上げています。
・自身の障がい特性に対して有効なサポートの提言
・自身の苦手な領域に対する工夫方法 |
「障がい者雇用推進者の選任」については、B社では、障がいのある社員自らがジョブコーチや障がい者職業生活相談員の資格を取得し、企業全体のサポートを行っています。
(雇用障がい者数が5名以上の企業は、障がい者雇用推進者ではなく、障がい者職業生活相談員を選任しなければなりません。)
ジョブコーチとは、障がい者の方が企業でスムーズに就労できるように、職場のサポート体制を整える役割を担う立場のことです。
障がいのある従業員の可能性を広げるだけでなく、新しく雇用された障がい者の方にとっても、さまざまな方からサポートを受けられることは、安心に繋がるでしょう。
5-3. C社:障がい者の希望に合わせた勤務時間の設定
人材派遣サービスなどを提供するC社においても、全ての努力義務に取り組んでいますが、特に以下の取り組みが画期的なので、ご紹介します。
・2-4. 短時間勤務で働く障がい者の勤務時間の柔軟な設定 |
C社では、重度の障がいがある方も活躍できるように、「フルリモートワーク(在宅勤務)かつ週30時間未満の短時間勤務」という、より柔軟な働き方ができる募集を行っています。
特に働き始めの頃は、緊張や疲れによって体調を崩しやすい障がい者の方の、「短時間勤務から働き始めたい」という希望に添う働き方を提唱したのです。
さらに、少しずつ慣れるにつれて自分のペースを掴み、「もう少し長く働きたい」と思った時には、C社では障がい者の方の希望に合わせて、勤務時間を柔軟に設定しています。
6. 努力義務のハードルが高いと感じるなら社外の支援サービスも活用しよう
多くの企業が積極的に努力義務に取り組んでいることを知って、「自社で同じようにできるだろうか……」と不安に思われる方もいるのではないでしょうか。
努力義務まで取り組むのはハードルが高いと感じるなら、社外の支援サービスには以下の4つがあるので、悩みに応じて活用するのがおすすめです。
障がい者雇用において利用できる社外の支援サービス4つ |
・ハローワーク
・地域障害者職業センター ・障害者就業・生活支援センター ・障がい者雇用支援サービスを行う民間企業 |
あなたの企業の障がい者雇用を推進できるように、社内で抱え込まずに、参考にしてみましょう。
6-1.ハローワーク
障がい者雇用に関する基本的な情報を教えてくれるハローワークでは、努力義務についても、無料相談できます。
以下のようなお悩みがある場合は、ハローワークに相談してみましょう。
・どれから取り組めばいいか分からない
・苦情の解決方法が分からない ・障がい者雇用推進者に、社内の誰を選任したらよいか分からない ・障がい者の勤務時間について相談したい ・合理的配慮を提供するための環境を、どのように整備すればいいか分からない |
ハローワークでは、他の機関と連携して、あなたの企業の障がい者雇用をサポートしてくれるので、「どこに相談すればいい?」「こんなことを相談してもいいのかな?」という時も、受け付けてもらえます。
厚生労働省「障害者に関する窓口」より、相談窓口の住所や電話番号をご確認ください。
6-2.地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、ハローワークよりも専門的な支援が、無料で受けられます。
以下のようにお考えの場合は、地域障害者職業センターに相談してみましょう。
・「努力義務」以前の、事業主支援計画の策定について相談したい
・障がい者職業カウンセラーに相談して、より具体的な支援を受けたい |
地域障害者職業センターは各都道府県に設置されているので、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」より、住所や電話番号をご確認ください。
6-3.障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、障がい者本人を中心に企業や家族に対しても、無料で支援してくれます。
就業面だけでなく、その基盤となる生活面に問題があるのではないかと感じている、以下のような場合は、ぜひ相談してみましょう。
・職場で努力義務に取り組んでも、プライベートな部分までは目が届かないが、長く働けるように、障がい者の生活リズムや健康管理のサポートをしたい
・職場定着率が低迷しているものの、改善方法が分からない |
障害者就業・生活支援センターは全国に設置されているので、「令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧」より、住所や電話番号をご確認ください。
6-4.障がい者雇用支援サービスを行う民間企業
障がい者雇用支援サービスを行う民間企業は、他の相談先とは違って、サービスによっては有料となりますが、企業のニーズに合わせた柔軟なサポートをしてくれます。
以下のように、企業にぴったりのサポートを受けたい場合は、ぜひ相談してみましょう。
・企業の仕事内容や職場環境に適した障がい者雇用の方法を知りたい
・企業の規模や配置に合わせた「努力義務」への取り組み方法を提案してほしい |
社外の支援サービスを活用することで、障がい者雇用を進める中で行き詰まっていた部分が、速やかに解決するはずです。
障がい者雇用支援サービスを活用するなら
JSHのコルディアーレ農園にご相談ください |
「自社で努力義務に積極的に取り組むのは難しそう。企業のニーズに合わせた柔軟なサポートをしてくれる障がい者雇用支援サービスが気になる!」という方は、多いのではないでしょうか。
JSHでは、農園型の「障がい者雇用支援サービス」をご提供しているので、障がい者雇用に関することなら、何でもご相談いただければ幸いです。
JSHは、企業さまに屋内型農園の「コルディアーレ農園」の区画と水耕栽培設備を貸し出し、主に九州在住の障がい者人材をご紹介しています。
障がい者の方には環境が整備された農園で、葉物野菜やハーブなどの栽培に携わっていただいています。
コルディアーレ農園では、精神科勤務経験のある看護師が唯一常駐するなど、多数の有資格者による手厚いサポートがあるため、高い定着率を期待していただけます。
弊社の農園型障がい者雇用支援サービスを導入いただいている企業さまは200社弱で、その継続率は99%(2024年6月時点)にも上ります。
まずは、お気軽に下記ボタンからコルディアーレ農園の資料をご請求ください。
|
7. まとめ
障がい者雇用における努力義務について、詳しくご紹介させていただきました。改めて、ポイントをおさらいしましょう。
障がい者雇用における「努力義務」とは、必ず取り組まなくて構いませんが、障がいのある従業員の方が働きやすくなるように、積極的に取り組むスタンスは非常に重要です。
企業が取り組むべき主な努力義務は、以下の5つです。
障害者基本法 | 雇用の促進と安定 |
障害者雇用促進法 | 苦情の自主的解決 |
障がい者雇用推進者の選任 | |
短時間勤務で働く障がい者の勤務時間の柔軟な設定 | |
障害者差別解消法 | 合理的配慮を提供するための環境の整備 |
努力義務を怠っても罰則はありませんが、以下の3つのリスクがあります。
・雇用した障がい者が早期退職しやすい
・雇用障がい者数を増やす際に対応が遅れやすい ・企業イメージが悪化する可能性がある |
努力義務は、出来ることから取り組んでいきましょう。
世の中の企業の努力義務への取り組み事例として、以下の3社をご紹介しました。
・A社:バリアフリーな店づくりと障がい者雇用研修
・B社:苦情を改善・共有する仕組みと障がいのある社員自ら行うサポート ・C社:障がい者の希望に合わせた勤務時間の設定 |
努力義務まで取り組むのはハードルが高いと感じる企業は、以下の4つの社外の支援サービスの活用を検討してみましょう。
・ハローワーク
・地域障害者職業センター ・障害者就業・生活支援センター ・障がい者雇用支援サービスを行う民間企業 |
この記事を元に、あなたの企業においても努力義務に積極的に取り組んで、障がい者雇用を推進できることをお祈りしています。
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