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てんかん症状がある方の障がい者雇用の実態|企業事例や採用前後の対応も解説

「てんかんの方の障がい者雇用は一般的なのだろうか?実態が知りたい。」
「てんかんの方に自社で働いてもらえるのだろうか?」

障がい者雇用の担当としてこのようにお悩みや疑問がある中で、情報を集めたくてこの記事に辿り着いたのではないでしょうか。

実は、てんかんのある方も障がい者雇用枠で多数活躍しており、安定して働いている事例も少なくありません。

厚生労働省の調査によると、令和5年6月時点で障がい者雇用枠で働く精神障がい者の方は約21.5万人と推計され、そのうち精神障がい者手帳を所持する約19.9万人にのぼります。

さらに、手帳を所持している約19.9万人のうち、約6.3%に当たる1.25万人が「てんかんのある方」であることが分かっています。

参考:厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査結果報告書

※てんかんのある方=精神障がい者に分類される

てんかんの方には、法的に制限されている仕事や、特性上従事することが難しい仕事もあるため、「てんかんがあると採用・雇用が難しい」といったイメージをお持ちの方も多いかもしれません。

しかし実際には、1.25万人の方が就労していることからもわかるように、適切に準備・配慮を行えば、安定して働いてもらえる可能性が高いのです。

そこでこの記事では、「てんかん症状がある方の障がい者雇用の実態」について、詳しく解説していきます。他にも、この記事を読むことで以下の内容が分かります。

この記事を読めば分かること
・てんかん症状がある方の障がい者雇用の実態

・実際に雇用している企業の取り組み

・てんかんの方が難しい仕事・従事しやすい仕事

・てんかんの方を採用するときにやるべき準備や配慮

てんかんのある方の採用に際して、不安を最小限にしたい担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

【目次】
1. てんかん症状がある方の障がい者雇用の実態
2. 障がい者雇用でてんかんの方を雇用している企業の事例
3. てんかんの方が従事しづらい仕事
4. てんかんの方が従事しやすい仕事
5. てんかんの方に必要な準備・配慮を行えば、障がい者雇用枠で安定的な就労は可能
6. 【全9項目】てんかんのある方を障がい者雇用で採用するためにやるべきこと
7. てんかんの方の障がい者雇用には外部機関や民間のサービスを積極的に活用しよう
8. まとめ


1.てんかん症状のある方の障がい者雇用の実態

はじめに、てんかんのある方の障がい者雇用の実態についてご紹介します。

厚生労働省が調査・公表したデータによると、令和5年6月時点のてんかんのある方の障がい者雇用の実態は、下図の通りになります。

参考:厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査結果報告書

※てんかんのある方=精神障がい者に分類される

報告書によると、令和5年6月時点で障がい者雇用枠で働いている精神障がいのある方の数は、推計約21.5万人にのぼります。

このうち、92.7%(約19.9万人)が精神障害者保健福祉手帳を所持しており、さらにその中の約6.3%(約1.25万人)が「てんかんの方」という結果になっています。

とはいえ、厚生労働省が公表した「厚生労働省におけるてんかん対策」という資料でも確認できる通り、そもそも精神障がい者全体の中で、てんかんを患っている方の割合が約5〜6%程度です。

したがって、てんかんのある方の障がい者雇用率約6.3%というのは、ごく自然な割合であることが分かります。

また、てんかんのある方を含む精神障がい者の平均勤続年数は、5年3ヶ月です。

身体障がい者 12年2ヶ月
精神障がい者 5年3ヶ月
知的障がい者 9年1ヶ月
発達障がい者 5年1ヶ月

上記の通り、身体障がい者・知的障がい者・発達障がい者の平均勤続年数と比較すると短いですが、てんかんなどの精神障がいがある方でも実際に雇用され、継続的に働いている方は多数いることが確認できます。

 

2.障がい者雇用でてんかんの方を雇用している企業の事例

1章では、実際の数字で見ることでてんかんのある方の障がい者雇用の全体像や、傾向がお分かりいただけたかと思います。

続いて2章では、「実際にてんかんの方を雇用している企業」や「てんかんの方の働き方」についての事例をご紹介します。

実際にてんかんのある方を雇用している企業や働き方の事例
情報通信業A社の事例

総合リゾート業B社の事例

情報サービス業C社の事例

「てんかんがあっても働ける」という状況がどのようなものなのか、実情を把握して具体的にイメージを掴むために、ぜひこのまま読み進めてください。

 

2-1.情報通信業A社の事例

情報通信業A社は、従業員218名のうち186名が障がいのある方という、特例子会社として高い雇用実績を持つ企業です。

そのうち16名がてんかんのある方で、14名は正社員として親会社と同じオフィスで業務を行っています。

具体的には、

・休職した方の復職支援
・就労移行支援
・新入社員研修

といった業務を担当している方もおり、パソコンでの業務が中心です。

この会社で実際に働くAさんは、以下のように話しています。

「てんかん=厄介者」というレッテルを貼られてしまったように感じたことがあり、とても辛かった。

だけど職場では発作時の対応が事前に共有されていて、そっとそばに付き添ってもらえているため、安心して働けている。

参考:日本てんかん協会「てんかんのある人に就労の機会を!」

他にもA社では、てんかんのある方の雇用を実現・安定させるために、以下のような取り組みを行っています。

面接時の症状説明を重視している 発作の特徴や治療歴を自分の言葉で説明できるかを大切にしている
独自カルテの作成を行う 発作時の対応を詳細に記録し、必要に応じて主治医・家族・支援機関と共有できる体制を整えている
緊急連絡カードを携帯している 発作が起きた際にもすぐに周囲が対応できる仕組みを整えている
ピアサポート制度を導入している 異なる障がい特性のある社員同士でペアを組み、お互いに支援している

(結果的に、発作の頻度が減るなど精神的な安定にも繋がっている)

ジョブ・ローテーションで適性を見極めている 適した業務を見つけて割り当てることで、自己肯定感の向上と職場定着を実現している

参考:日本てんかん協会「てんかんのある人に就労の機会を!」

このようにA社では、発作時の対応が職場で事前に共有されていることで、てんかんのある従業員も安心して日々の業務を行えています。

 

2-2.総合リゾート業B社

総合リゾート業を運営するB社では、就労支援機関からの紹介を通じててんかんの方を継続的に採用しており、在籍しているのは約10名です。

B社では、はじめは事務支援センターでの名刺作成やDM封入といった軽作業からスタートし、業務への慣れや適性を見ながら少しずつステップアップする仕組みを導入しています。

実際に事務支援センターでの軽作業からスタートし、人事部に異動になったBさんは、以下のように話しています。

私の場合は発作の前兆があり自分で危険を回避できるため、発作時はそのままにしてもらっている。

発作から戻った時に周囲がざわついていないのが嬉しい。

参考:日本てんかん協会「てんかんのある人に就労の機会を!」

他にも、B社がてんかんのある方の雇用を実現・安定させるために、以下のような取り組みを行っています。

支援機関からヒアリングを行っている 採用前に、支援機関から発作の種類や対処法などをヒアリングして、業務内容や勤務時間などを調整している
段階的な業務ステップで無理なくスタートしている 名刺作成・DM封入などの軽作業からスタートし、適性を見ながら他の部署への配属を行っている
日誌で発作の傾向を可視化・共有している 毎日日誌を書いてもらい、発作が起こりやすい時間帯や環境を特定することで、席替えなどの対応を行っている
周囲に理解してもらう工夫を取り入れている 前兆がある方には机上に「発作中」のサインを置いてもらい、誤解やトラブルを回避している
作業環境を整えている 休憩室や、発作中に倒れにくいような大きな椅子を用意している

参考:日本てんかん協会「てんかんのある人に就労の機会を!」

このようにB社では、軽作業からスタートして自分のペースで業務の幅を広げていくことで、てんかんのある方も無理なく働けています。

 

2-3.情報サービス業C社

情報サービス業を中心とするC社では、「すべての人にチャンスを」という理念のもと、障がいの種類に関わらず積極採用を行っています。

令和5年5月時点では203名の障がいのある方を雇用しており、その中にはてんかんのある方も含まれています。

この会社では、面接時に専門資格を持つ社員が同席し、服薬状況や体調管理について丁寧にヒアリングを行います。それが、「この会社は小さなことも気にかけてくれる」という安心感に繋がっていると考えられます。

また、「てんかんのために寒さを感じやすくなる」といった当事者からの申告に対して、柔軟に対応しているのも大きな安心感に繋がります。

C社で行っている、てんかんのある従業員の雇用・定着を実現するための取り組みは、以下の通りです。

面接時の症状説明を重視している 応募者本人から、症状や発作の頻度などを説明してもらうことを重視している
専門資格を持つ社員が面接に参加している 専門資格を持つ社員が面接に参加し、服薬状況や体調管理について詳しくヒアリングしている
一人ひとりに合った合理的配慮を提供している 出勤時間・在宅勤務・席の配置など、一人ひとりに合わせた個別対応を徹底している
各社員に相談担当者を配置している 「フォロワー」と呼ばれる相談社員をつけ、月1回以上の面談を行っている
日常的な声掛けや気配りを意識している フォロワー以外の社員も日常的に声掛けしたり、小さな変化に気を配ったりすることを意識している

参考:てんかんinfo「一人ひとりと『向き合う』ことで道が開ける」

このようにC社では、てんかんの従業員が自分の症状や希望をきちんと伝えられる関係性の中で、無理なく働き続けることができています。

 

3.てんかんの方が従事しづらい仕事

2章で紹介した事例から、てんかんの方と企業の相互理解を深め体制を整えれば、就業・雇用することが可能であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

しかし、てんかんの方には

法的に制限されている仕事

特性上従事が難しい仕事

があるため、どんな仕事でも就業できるわけではありません。

そこで3章では、「てんかんの方には従事が難しい2種類の仕事」について、それぞれを詳しく解説していきます。

自社の業務の中で、てんかんの方が従事しづらい業務がどれなのかを把握しておきましょう。

 

3-1.法的に制限されている仕事

てんかんのある方には、従事することが法的に制限されている仕事があります。

例えば、以下のような職種・業務が挙げられます。

航空機の操縦や運航に関わる仕事

航空法第31条

・航空機のパイロットや副操縦士

・航空管制官

・航空整備士(高所作業などの一部業務)

・客室乗務員

船舶の操縦や運航に関わる仕事

船員労働安全衛生規則第30条

・船舶操縦士

・航海士

・機関士

・漁師

銃砲や刀剣類を所持・取り扱う仕事

銃砲刀剣類所持等取締法第5条

・猟師や狩猟関連の仕事

・警察官や自衛官

・武装警備員

・刀剣職人や武具製造業

大型車両や第二種免許が必要な仕事

道路交通法第103条

・バスの運転手

・タクシー運転手

・トラック運転手

・クレーン車や特殊大型車両の操作

これらは発作による事故のリスクが非常に高く、事故によって自分自身や他の人の生命・身体・財産に重大な影響を与える仕事です。

したがって、てんかんの方自身や周りの人の安全を守るためにも、法的な就業制限が設けられています。

ただし、大型免許や第二種免許が必要な仕事であれば「5年間投薬なしでも発作がなく、今後も再発の恐れがない場合」場合のみ、医師の診断のもと免許取得が許可されるため従事できる可能性があります。

 

3-2.特性上従事が難しい仕事

てんかんのある方は、法的に制限はされていないものの、症状や発作の特性上、従事が難しいとされる仕事もあります。

例えば、以下のような職種・業務が挙げられます。

高所作業や危険を伴う機械操作を行う仕事 ・建設作業員

・電気工事士

・通信設備技術者

・重機オペレーター

・溶接工

・鉱山・採掘作業員 など

交代勤務や夜勤などのシフト勤務がある仕事

※日勤なら問題ないが、夜間勤務は避けるべき

・看護師や介護士

・製造ラインオペレーター

・コンビニエンスストア店員

・倉庫作業員や夜間配送ドライバー

・テレビ局スタッフ など

水中や水辺で作業する仕事 ・ダイバー

・潜水業務を伴う水族館スタッフ

・ライフセーバー

・港湾作業員 など

火を扱う仕事 ・調理師

・鍛治職人

・消防士

・製鉄所作業員 など

これらは、「危険が伴う作業」や「一人で行う作業」であることが多く、働き方によって発作を引き起こす可能性がある仕事です。

てんかんは突然意識を失ったり、体の一部が痙攣するなどの発作が起こる可能性があるため、本人や周囲の安全を確保できない恐れがある場合には、どうしても従事が難しい場合があります。

また、てんかんの発作は睡眠不足や不規則な生活によって起こりやすいため、生活リズムが乱れやすい夜勤を含むシフト制の働き方は避けた方が良いとされています。

これらの仕事は、絶対に従事できないわけではありませんが、発作の頻度や症状・服薬状況などを踏まえて、医師と相談しながら就業の可否を決めなければなりません。

 
4.てんかんの方が従事しやすい仕事

てんかんのある方は、その症状や発作によって、どうしても従事できない業務や、従事しづらい業務があります。しかしそれ以外の業務であれば、発作のリスクに配慮しながら安定して働くことは可能です。

あくまでも一例に過ぎませんが、例えば以下のような職種なら、てんかんの特性を踏まえても働きやすいでしょう。

デスクワーク中心で身体的な負担が少ない仕事 ・事務職

・品質管理や検査業務

自分のペースで柔軟に働ける仕事 ・ライター

・プログラマー

・Webデザイナー

・動画編集

多数の人と行う仕事 ・店舗販売員(商品陳列や接客など)

・内勤営業

・工場内での軽作業

規則正しい生活リズムを守れる仕事 ・図書館司書

・研究職

このように、

・自分のペースで進められて心身への負担が少ない仕事
・急に発作が起こっても危険が少ない仕事

であれば、てんかんのある方でも安定して仕事を続けやすいでしょう。

もちろん本人の希望や状況にもよりますが、てんかんの方を採用する際は、上記2点を満たす業務を中心に従事してもらうことをおすすめします。

 
5.てんかんの方に必要な準備・配慮を行えば、障がい者雇用枠で安定的な就労は可能

ここまでの内容を踏まえてもうお分かりのように、当事者としっかり対話して本当に必要な準備・配慮を行えば、てんかんの方の安定的な就労が叶います。

2.実際にてんかんのある方を雇用している企業や働き方の事例」でご紹介した3社でも、採用前にてんかんの症状や頻度・必要な対応について、当事者とヒアリングをするところから始まっていました。

ヒアリング後には、聞き取った内容を元に企業側でできる配慮や対応について考え、その方の症状や特性に合わせた「本当に必要な配慮」を提供できています。

その結果、てんかんがある方も安心して働くことができ、企業にとっても安定した雇用関係が築けていると言えるでしょう。

このように、当事者としっかり対話して一人ひとりに柔軟な対応を行うことで、てんかんの方でも問題なく雇用でき、安心して長く働いてもらうことができます。

では、具体的にどのような対応を行うべきなのでしょうか。続けて解説するので、ぜひこのまま読み進めてください。

 
6.【全9項目】てんかんのある方を障がい者雇用で採用するためにやるべきこと

6章では「てんかんのある方を障がい者雇用で採用するべきためにやること」をご紹介します。

「採用前・採用決定時・採用後にやるべき全9項目」をチェックリストにまとめましたので、ご覧ください。

採用前にやるべきこと □本人と面談を行い、症状や必要な配慮について丁寧に聞き取る
□会社が提供できる「合理的配慮」の範囲を決める
□配属先や業務内容を洗い出し、安全性を確保する
□助成金制度を確認・活用する
採用決定時にやるべきこと □職場で発作が起きた際の対応を決めておく
□相談窓口や相談担当者を配置する
□関係部署やチームと情報を共有する
採用後にやるべきこと □休憩スペースや勤務環境を工夫する
□就労支援機関と連携を図る

 

6-1.採用前にやるべきこと

5章でもお伝えしたとおり、てんかんのある方の採用・就業をスムーズにするためには、まず「当事者との対話」と「症状への理解」それから「利用できる支援の有無を確認」することが不可欠です。

なぜなら、てんかんは人によって症状や必要な配慮が異なるため、一律の対応ではなく個別の状況に応じた準備と判断が必要だからです。

また、企業側としても安全な職場環境の整備と継続的なサポートを行うために、合理的配慮の可否や範囲・助成制度の活用を事前に検討しておく必要があります。

そのためには、採用前に以下の取り組みを行いましょう。

本人と面談を行い、症状や必要な配慮について丁寧に聞き取る

面接時には、てんかんの症状や特性について詳しくヒアリングを行う

【例】

・最後に発作が起きた時期や頻度

・発作時の対処方法

・職場に求める配慮の内容

・発作の情報を社内で共有していい範囲

会社が提供できる「合理的配慮」の範囲を決める

本人との面談内容から、会社側でどんな合理的配慮が可能かを考える

【例】

・固定シフトで生活リズムを整えやすくする

・チラつきの少ないモニターを導入する など

配属先や業務内容を洗い出し、安全性を確保する

てんかんのある方が従事しやすい部署や業務を洗い出し、任せる業務を選定する

【例】

・データ入力や資料作成

・ライティングやデザイン

・商品陳列などの軽作業 など

助成金制度を確認・活用する

助成金や補助金を使って企業の負担を減らし、サポートの幅を広げる

【例】

特定求職者雇用開発助成金

トライアル雇用助成金

障害者雇用納付金制度に基づく助成金 など

このような取り組みを行うことで、そもそもの採用の可否を判断していくといいでしょう。

 

6-2.採用決定時にやるべきこと

面接を経て採用が決定した場合には、職場で安心して働き始められるような「体制づくり」と「情報共有」を行う必要があります。

なぜなら、発作時の対応や日常の相談体制・関係部署との連携が不十分だと、てんかんのある方本人も周囲も不安を抱えたまま働くことになり、スムーズな業務遂行が難しくなるからです。

具体的には、以下の取り組みを行いましょう。

職場で発作が起きた際の対応を決めておく

もし職場で発作が起きたときにどう対応するのか、事前に決めておく

【例】

・対応マニュアルを作成する

・発作が起きた状況を記録する

・医師との連携を図る

相談窓口や相談担当者を配置する

何かあればすぐ相談できる社内体制を整える

【例】

・相談窓口や窓口担当者を配置する

・専門機関や支援機関と連携する

関係部署やチームと情報を共有する

本人の希望を尊重しながら、症状や特性について関係者に情報を共有する

【例】

・チームミーティングで共有する

・マニュアルやガイドラインを作成する

・定期的な研修や教育を行う

※勝手に情報を流すことだけは避ける

このような取り組みを行うことで、職場への受け入れ体制を万全にすることができます。

 

6-3.採用後にやるべきこと

採用後には、「職場環境の工夫」と「外部支援との連携」を行い、長期的に働き続けられる環境を整えましょう

なぜなら、てんかんは疲労やストレス・光刺激などが発作の引き金になることもあるため、職場環境の工夫が不可欠だからです。

また、企業側だけで対応が難しいケースにも、外部支援機関との連携を活用することで、より適切なサポートが可能になるため、事前に確認しておくべきです。

具体的には、以下の取り組みを行うのがおすすめです。

休憩スペースや勤務環境を工夫する

安心して利用できる休憩スペースや勤務環境を作る

【例】

・個室を仕切りやカーテンで区切って、外部から見えないようにする

・横になれるようマットや簡易ベッドを用意する

・自然光や柔らかい光の照明を使う

・作業席は角や壁際など、人通りの少ない場所に配置する

就労支援機関と連携を図る

専門機関と連携してアドバイスや支援をしてもらう

【例】

ハローワーク

障害者就業・生活支援センター

ジョブコーチ(職場適応援助者) など

このような取り組みを通して、てんかんのある方が安心して長く働ける環境を作ることが重要です。

 

7.てんかんの方の障がい者雇用には外部機関や民間のサービスを積極的に活用しよう

ここまでお読みいただき、事前の準備や配慮を丁寧に行えば、てんかんの方でも問題なく採用・勤務することができるとお分かりいただけたかと思います。

しかし、てんかんのある方の雇用に際して、自社だけで準備・支援するのは難しい場合が多いのも実情です。

そこで、てんかんの方を安心・安定して雇用するには、外部機関や民間のサービスを積極的に活用するのがおすすめです。

てんかんは発作の出方や頻度が一人ひとり違うため、雇用するにあたって専門知識やきめ細やかな個別対応が求められます。

企業だけで全てを対応しようとすると負担が大きくなりますが、外部の専門家と連携すれば専門的なアドバイスや、職場に応じた具体的な提案が受けられます。それによって、雇用のハードルを大幅に下げることができるでしょう。

てんかんのある方の雇用にあたって利用すべき外部機関と、受けられるサポートの内容は以下の通りです。

【利用がおすすめの外部機関とサポート内容】
ハローワーク

・障がい者雇用枠での採用方法や手続きの説明

・合理的配慮の提供方法のアドバイス

・各種助成金の案内

・求人票作成とマッチング支援

高齢・障害・求職者雇用支援機構

・ジョブコーチの派遣

・助成金制度の案内

・作業施設や福祉施設の設備に関するアドバイス

・勤務時間調整や発作時の対応などのアドバイス

・企業が必要とするスキルや知識のセミナー開催

障害者就業・生活支援センター

・就業準備訓練や職場実習のサポート

・合理的配慮の提供方法のアドバイス

・助成金制度の案内

就労移行支援事業所

・職場実習や適性評価

・就職後の定着支援

・スキル訓練とマッチング支援

・てんかんについての研修や情報提供

企業だけで抱え込まず、外部のサポートを上手く活用することで、てんかんのある方の可能性を広げると同時に、職場全体にとっても安心できる環境を作ることができます。

その結果、安定したサポートや職場定着にも繋がるでしょう。

【てんかんのある方の雇用についてお悩みなら、「株式会社JSH」にご相談ください】

 

「てんかんのある方を採用したい。でも職場で発作が起きたらどう対応する?」

「採用にあたって周囲から理解を得るにはどうすればいい?」

 

このような不安を抱えている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

 

適切な理解と環境があれば、てんかんの方に安定して働いてもらうことは可能です。ただ、社内に前例やノウハウがない場合、雇用のハードルはどうしても高く感じられます。

 

そこで、株式会社JSHが運営する「コルディアーレ農園」をご活用ください。

 

コルディアーレ農園では、農園での水耕栽培を通して障がいのある方が地域で・安心して・長く働き続けられる環境づくりをサポートしています。

 

また、てんかんのある方の雇用についても

 

・発作の理解や対応方法

・業務設計の工夫

 

などを企業様と一緒に考え、実現してきた実績があります。

 

「てんかんのある方の雇用を、無理のない形で前向きに進めたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

今すぐ相談する

 

8.まとめ
この記事では、「てんかんの方の障がい者雇用の実態」について詳しく解説してきました。改めて、ポイントをおさらいしていきましょう。

厚生労働省の調査・報告によると、令和5年6月時点で障がい者雇用枠で働いている精神障がいのある方の数と、てんかんのある方の数は以下の通りです。

てんかん症状のある方の障がい者雇用の実態
・障がい者雇用枠で働いている精神障がいのある方:約21.5万人

・精神障害者保健福祉手帳を所持している方:約19.9万人

・手帳を所持している方のうち、てんかんのある方:約1.25万人

・精神障がい者全体の平均勤続年数は5年3ヶ月

またデータの数字だけでなく、実際にてんかんのある方を雇用している企業や、働き方の事例もご紹介しました。

実際にてんかんのある方を雇用している企業や働き方の事例
・情報通信業A社の事例

・総合リゾート業B社の事例

・情報サービス業C社の事例

しかし実際のところ、てんかんのある方には従事するのが難しい仕事と、従事しやすい仕事があります。

法的に制限されている仕事 ・航空機の操縦や運航に関わる仕事(航空法第31条

・船舶の操縦や運航に関わる仕事(船員労働安全衛生規則第30条

・銃砲や刀剣類を所持・取り扱う仕事(銃砲刀剣類所持等取締法第5条

・大型車両や第二種免許が必要な仕事(道路交通法第103条

特性上従事が難しい仕事 ・高所作業や危険を伴う機械操作を行う仕事

・交代勤務や夜勤などのシフト勤務がある仕事

・水中や水辺で作業する仕事

・火を扱う仕事

従事しやすい仕事 ・デスクワーク中心で身体的な負担が少ない仕事

・自分のペースで柔軟に働ける仕事

・多数の人と行う仕事

・規則正しい生活リズムを守れる仕事

「てんかんのある方の採用は難しい」というイメージをお持ちの方も多いですが、当事者としっかり対話して本当に必要な準備・配慮を行えば、てんかんのある方でも問題なく雇用できます。

そこで、「てんかんのある方を障がい者雇用で採用するためにやるべき全9項目」をチェックリストにまとめました。

採用前にやるべきこと □本人と面談を行い、症状や必要な配慮について丁寧に聞き取る
□会社が提供できる「合理的配慮」の範囲を決める
□配属先や業務内容を洗い出し、安全性を確保する
□助成金制度を確認・活用する
採用決定時にやるべきこと □職場で発作が起きた際の対応を決めておく
□相談窓口や相談担当者を配置する
□関係部署やチームと情報を共有する
採用後にやるべきこと □休憩スペースや勤務環境を工夫する
□就労支援機関と連携を図る

 この記事が、あなたの会社でてんかんの方が安心して働くための一助となれば幸いです。

この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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