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【人事向け】精神障害者の雇用まとめ|各データ・課題・定着のポイント

この記事では、企業の障害者雇用担当者様向けに
精神障害者の雇用に関するデータや課題、配慮のポイントなどをまとめています。

精神障害者を雇用している、またはこれから採用を考えている担当者様はぜひお役立てください。

 

【目次】

1.2018年から精神障害者も雇用義務対象者に
2.企業における精神障害者の雇用状況
3.主な精神障害の種類
4.精神障害者雇用における企業の課題
5.精神障害者の雇用を成功させるためのポイント
6.精神障害者に向いている業務は?
7.まとめ

 

1.2018年から精神障害者も雇用義務対象者に

日本では「障害者雇用促進法」によって企業に対し障害者の雇用が義務付けられていますが、
元々「精神障害者」はこのカウント対象に含まれず、身体障害者・知的障害者のみが雇用義務対象者となっていました。

しかし2018年4月1日の改定を機に「精神障害者」も対象に変更されました。
これをきっかけに、精神障害者を含めた雇用を積極的に進める企業が増えています。

 

2.企業における精神障害者の雇用状況

雇用数

企業による精神障害者の雇用者数は右肩上がりで増え続けており、2019年には全国で約7万8千人の精神障害者が雇用されています。
10年前と比較すると、約8倍の雇用数となっています。

<図:精神障害者の雇用数>

これは、単純に精神障害者の数、つまり障害者雇用促進法における「障害者」の定義である
障害者手帳の保有者数が増加傾向にあるためだと考えられます。

<図:精神障害者の保健福祉手帳交付台帳登載数>

 参照:厚生労働省『衛生行政報告例』

 

定着率

先述の通り、精神障害者の雇用数は右肩上がりで増え続けているものの、採用後の「定着」の面ではまだまだ課題があります。
実は障害別の職場定着率を見てみると、精神障害者の離職率が最も高く、
およそ50%が1年以内に退職しているというデータが出ています。

<図:精神障害者の職場定着率(就職開始から1か月ごとの推移)>

参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構『障害者の就業状況等に関する調査研究』


精神障害者の定着における主な課題として、
業務のミスマッチや現場でのコミュニケーションが上手くとれないことなどが挙げられます。

長期の雇用定着を達成したい企業にとって早期退職は悩ましい課題です。

このような早期離職を防ぐためのコツについてはこちらのコラムで解説していますのでご覧ください。

精神科看護師が精神障がい者の基礎知識と接し方を解説!職場に定着するためのコツ

 

3.主な精神障害の種類

精神障害を持つ人の種類内訳

精神障害には様々な種類がありますが、人数としてはうつ・そううつ(気分障害)が最も大きな割合を占めています。
次いで統合失調症や神経症性障害を持つ人が多くなっています。

<図:精神障害患者数の推移(疾病別内訳)>

参照:厚生労働省『第1章 精神保健医療福祉のデータと政策』

患者数の多い主な精神障害について症状を簡単にご紹介します。

 

主な精神障害

・統合失調症
考え方や感情をまとめて総合的に判断したり、
心の調和を保ったりすることができなくなった状態を示し、幻覚や妄想という症状が出る

・うつ病
「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現される症状が非常に重く日常生活に支障が現れるまでになった状態

・双極性障害
うつ病とほとんど同じ状態に加え、うつ状態とは正反対に気分が高まる「そう状態」も現れ、これらを交互に繰り返す状態

・てんかん
脳神経の一時的な過剰放電により、けいれんや意識の障害を伴う発作を引き起こす

・その他
パニック障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、アルコール依存症、薬物依存症 など

 

障害別の具体的なケア方法や職場での接し方について

精神障害は目に見えづらく、職場での配慮が難しい障害です。
障害別の詳しい特徴や具体的なケア方法、職場での接し方については看護師監修のコラムで解説しておりますので、
こちらをご覧ください。

精神科看護師が精神障がい者の基礎知識と接し方を解説!職場に定着するためのコツ

 

4.精神障害者雇用における企業の課題

障害者の就職活動支援を行う「ウェルビー株式会社」の調査によると、
「精神・発達障害のある方を採用する、またはともに働く場面で課題を感じたことはあるか?」という問いに対して、
企業担当者は以下のように回答しています。

1位:安定した勤怠が保てるか不安(50.7%)
2位:適切な指導が分からない(42.7%)
3位:コミュニケーション面で不安がある(40.0%)
4位:採用時に適性や能力を把握できない(38.7%)
5位:障害特性について従業員の理解が得られない(29.3%)
6位:当事者に適した仕事が分からない(29.3%)

引用:ウェルビー株式会社『「企業は精神障害者・発達障害者を歓迎している?」 採用担当者の本音を調査しました』

また、当社が企業の障害者雇用担当者200名を対象に独自に行った調査では、
以下のような声が挙がりました。

「障害者雇用、特に精神障害者の就労に対してのノウハウや経験が不足している」
大手メーカー/従業員5,000名以上/一部上場

「精神障害者雇用定着が見込めない」
医療・福祉関連/従業員501~1000名/株式未公開

「精神障害者は現場の負担感が大きい」
医療・福祉関連/従業員501~1000名/株式未公開

これらの調査結果から、精神障害は目に見えづらく、詳しい特徴が知られていないゆえに「分からない」ことへの不安が強く、
なんとなく「大変そう」「難しそう」といったイメージが先行していることが分かります。

仮に採用ができたとしても、定着のためにサポート出来る人員が不足していたり、
業務をサポートする現場で負担があったりするといった課題が多くなっています。

それでは、企業側・障害者側の双方によって良い形で雇用をしていくためには
どのような配慮が必要なのでしょうか。

 

5.精神障害者の雇用を成功させるためのポイント

精神障害者の雇用を成功させるためには、疑問や不安をそのままにせず適切に配慮できる体制作りが必要です。
現場でのケアはもちろんですが、まずは「組織として」できることを3つのポイントにまとめました。

①障害に関する知識・経験のある専門人材を雇用する

先述の通り、精神障害者を適切にサポートするためには障害への理解が重要です。
ミスマッチによる早期離職や現場の負担増加を防ぐためには、
業務の割り振りから日々のケアまで専門的な観点をもって管理できる人を雇用することをおすすめします。

②通院や急な体調の変化を見越して、社内制度を調整する

精神障害を持つ人は、そうでない人に比べて急な体調の変化が起こりやすく、多くが定期的な通院・服薬をしています。

そのため、体調不良時に柔軟に休みを取ったり通院のスケジュールを調整しやすくしたりする配慮が求められています。
組織として障害を持つ人が無理なく仕事を継続できるような制度作りを行いましょう。

症状は個人によって変わりうるため、頻繁かつ密接にコミュニケーションをとって、
その人に合った方法を採用するのが望ましいでしょう。

③勉強会を通じて障害に対する理解を深める

精神障害者には、人間関係を通じた精神的なストレスを感じやすいという特徴があります。
つまり、職場における周囲の向き合い方や接し方は非常に重要になります。

障害者が在籍している組織やこれから受け入れを始める組織では、なるべく多くの社員が障害に関する勉強会などに参加し、
正しい認識を持つようにしましょう。

当社でも、障害者の定着に向けた研修サービス等を提供しています。

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▼JSHの障害者定着支援サービスについて詳しくはこちら
株式会社JSH『障害者定着支援サービス』
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6.精神障害者に向いている業務は?

障害者を雇用する際、どのような業務を割り振れば良いのか悩む担当者の方もいるのではないでしょうか。
しかし精神障害者の場合、障害に関わらず得意不得意は本人次第であり、これは障害のない人とあまり変わりません。

しかし、急な体調の変化が起こりやすいという特徴を踏まえて、各企業の特例子会社では
休暇を柔軟に取りやすい体制が構築できるような事務作業系を割り振るケースが多くなっています。

例えば、人材大手パーソルグループの特例子会社(障害者雇用に特化・配慮した会社)である株式会社パーソルチャレンジでは、
精神障害のある社員が以下のような業務を行っています。


・データ入力
・名刺管理
・人事書類管理
・原稿制作

参考:株式会社パーソルチャレンジ『精神障害者の雇用状況、職種、仕事内容』

業務の割り振りについては採用時に本人とよく話し合い、
適切なサポートをしながら進めていきましょう。

7.まとめ

この記事では、企業の障害者雇用担当者様向けに
精神障害者の雇用に関するデータや課題、配慮のポイントなどをまとめました。

障害について理解を深めたり定着の工夫を行ったりすることが大切ですが、
なかなか上手くいかず悩んでいるという担当者の方もいらっしゃるかもしれません。

株式会社JSHでは、

「募集しても採用につながらない…」
「業務の切り出しがうまくできない…」
「何かとトラブルが多く、定着率が低い…」

といった障害者雇用に関する様々な課題を持つ企業様に向けて、
採用から定着まで包括的なサポートサービスを提供しています。
障害者雇用にお悩みの担当者様は、ぜひお問い合わせください。

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▼JSHの障害者雇用支援サービスについて詳しくはこちら
地方の農園を活用した障害者雇用支援サービス『コルディアーレ農園』
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この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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