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calendar_today2021/09/21

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【企業向け】特例子会社の基本解説|設立の要件・流れや現場の声をまとめました

法定雇用率の引き上げが行われ、各企業の障がい者の必要雇用数が増加する中、
達成・維持のための一つの手段として特例子会社を設立する企業が増えています。

この記事では、特例子会社のメリットや設立のための要件など基本的な所から、現場で挙がっている声までをまとめました。

 

【目次】

1.特例子会社とは
2.特例子会社の設置状況
3.特例子会社設立のメリット
4.特例子会社はどんな企業に向いているか
5.特例子会社で障がい者が従事している業務
6.現場で挙げられた雇用管理上の課題
7.特例子会社になるための要件
8.特例子会社設立までの流れ
9.【経験者インタビュー】特例子会社の元役員さんに聞きました
10.まとめ

 

1.特例子会社とは

「特例子会社」とは、障がい者雇用の定着促進のために設立された障がい者雇用に特化・配慮した子会社のことです。

一定の要件を満たすと特例子会社として厚生労働大臣の認定を受けることができ、
特例子会社で雇用された障がい者は、親会社やグループ会社に合算して実雇用率を算定することができます。

特例子会社を設立する目的は企業によって異なりますが、最も多いのは「雇用率の達成・維持(約58%)」です。

 

<図:特例子会社が認識している親会社の特例子会社の運営に当たっての方針>

参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
  『No1 多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び課題の把握・分析に関する調査(2012年3月)』

また、他にもおよそ半数の企業が「CSR」や「地域貢献」を特例子会社への取り組みの理由として挙げています。

 

2.特例子会社の設置状況

令和2年時点で特例子会社は全国に544社あります。

都道府県別に見ると東京都が最も多く、168社です。
また、2位以降には神奈川県や埼玉県、大阪府など都心部が並んでおり、特例子会社は都心部に集中していることが分かります。

企業の規模別で見てみると、おおよそ1,000人以上3,000人未満の従業員を抱える企業の割合が約22%で最も多くなっています。

 

<図:特例子会社の親会社の常用雇用労働者数の内訳>

参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
  『No1 多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び課題の把握・分析に関する調査(2012年3月)』

しかし、全体で見て特に著しい偏りがあるわけではないため、
特例子会社設立の背景には「従業員の規模」ではなく「企業の方針」が大きくあることが考えられます。

 

3.特例子会社設立のメリット

設備投資を効率よく行える

障がい者を雇用する場合、オフィスの環境作りへの配慮が必要になります。
例えば、身体障がいを持つ人のために手すりを設置したり、車いす移動のためのスロープを設置したりといった例が代表的です。

しかし、複数の事業所を抱える会社では、障がい者を雇用するにあたって
その都度設備の工事を行ったり備品の購入を行ったりするとコストがかかってしまいます。

特例子会社で一括雇用を行うことで、そのコストを最小限に抑えることが可能です。

採用において障がい者の方に訴求しやすい

特に障がい者の人材不足が叫ばれている都心部では、

採用活動において「特例子会社」という形が大きなアピールポイントになるケースがあります。

あらかじめ障がい者になじみやすい制度やオフィスが整っている特例子会社は、
多くの障がい者にとって一般的な職場より魅力的にうつることが考えられます。

また、障がいを持っていると、健常者のなかで特別に配慮されて働くことに抵抗を覚える方もいますが、
「まわりも皆障がい者」という環境であれば応募のハードルも下がります。

障がいに合わせて独立した組織設計ができる

特例子会社では独立した組織として、障がい者雇用に合わせた柔軟な制度の策定が可能になります。

例えば、障がい者の方が会社に求めるサポートとしてよく挙げられるのが「体調不良等の際に休みを取りやすくする」ということです。

一般的な会社と比べて休みを取りやすいよう勤務体制を整えたり、
休みを申告しやすい風土を醸成したりといった組織づくりが可能です。

障がい者の定着率が上がる

障がい者雇用においてしばしば課題として挙げられるのが「定着率の低さ」です。

しかし、特例子会社では障がいのある同士一緒に働くことで、
「周りについていけない」といった孤独感や「迷惑をかけているのではないか」といった気持ちが軽減され、
仕事や職場に対して前向きな気持ちを持ちやすくなります。

また上記で挙げたように制度面でも障がい者にとって働きやすい組織設計が実現されることも相まって、
結果的に職場定着率が上がることが期待できます。

 

4.特例子会社はどんな企業に向いているか

社員数が多い企業

障がい者の必要雇用人数は社員に対してのパーセンテージで算出されるため、
社員数の多い企業ではそのぶん障がい者雇用数も多くなります。

2~3名の雇用であれば融通が利きますが、数十名、数百名となると
特例子会社を設けた方が上記で挙げたようなメリットを享受しやすくなります。

現在は障がい者社員が数名という企業でも、これから社員数の増加が見込まれる場合は
あらかじめ特例子会社という形を検討しておいても良いかもしれません。

これ以上業務の切り出しが難しい企業

障がい者社員の配属を考えた時、その障がいの内容や程度によっては一般社員と同じ業務を任せられないケースもあるでしょう。

各人の障がい特性に合わせてその都度対応可能な業務を切り出すのは
会社組織としてなかなか難しく、苦戦している担当者も多いのが現状です。

既存の体制での業務切り出しに限界を感じている企業は、
特例子会社を設けて障がい者社員に合わせた体制を構築するのがおすすめです。

 

5.特例子会社で障がい者が従事している業務

実際に特例子会社を設けている企業では、どのような業務を行う障がい者が多いのでしょうか。

以下の調査によると、一般的な郵便や会計等のいわゆる「事務作業」に従事するケースが最も多く、全体の約60%を占めています。

 

<図:特例子会社における障がい者の職種内訳 ※複数回答>

参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
  『No1 多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び課題の把握・分析に関する調査(2012年3月)』

次に多いのが「運搬・清掃・包装等」の約54%で、これら2職種が特例子会社で働く障がい者の業務の大半を占めています。
上記の業務は比較的マニュアル化しやすく、簡易な作業等も含まれることから特例子会社へ割り振られていると考えられます。

6.現場で挙げられた雇用管理上の課題

特例子会社は障がい者雇用における様々な課題を解消する手段ですが、
「特例子会社を設立すれば万事解決」というわけではありません。

特例子会社において担当者が課題に感じているポイントを見てみましょう。


<図:雇用管理に当たっての悩みや問題意識 ※複数回答>

参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
  『No1 多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び課題の把握・分析に関する調査(2012年3月)』

課題として最も多く挙がったのは、「職域の拡大」、次いで「作業能力の向上」でした。

雇用管理や組織設計等はある程度効率的に行うことができる特例子会社ですが、
とは言ってもやはり一般的な職場と同じような課題点を完全には避けきれていないということが分かります。

また、「本人の健康状態」や「勤労意欲」といった項目も挙がっています。
障がい者雇用において課題として持たれがちなポイントですが、これらは組織の体制と関係がなく起こるものですので、
特例子会社かどうかということに関係なく対応を工夫していく必要があるでしょう。

 

7.特例子会社になるための要件

ここからは、特例子会社を設立するための具体的なポイントを見ていきましょう。
特例子会社を成り立たせるには、まず厚生労働省が定める以下の5要件をクリアしている必要があります。

親会社の要件

・親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること。
(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)

子会社の要件

・親会社との人的関係が緊密であること。 (具体的には、親会社からの役員派遣等)

・雇用される障がい者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。
 また、雇用される障がい者に占める重度身体障がい者、
 知的障がい者及び精神障がい者の割合が30%以上であること。

・障がい者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること。
(具体的には、障がい者のための施設の改善、専任の指導員の配置等)

・その他、障がい者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。

引用:厚生労働省『「特例子会社」制度の概要』

 

8.特例子会社設立までの流れ

特例子会社を設立する際は、以下のような流れで手続きを進めていきます。

①特例子会社の要件等の策定を行う

まずは設立の趣旨や従業員数、資本金、労働条件など特例子会社を運営していく上で必要な基本情報を策定します。

②会社設立の手続きを行う

以下のような申請を行い(一例)、会社を設立する手続きを進めます。
・会社設立登記の申請
・健康保険・厚生年金保険新規適用の申請
・雇用保険適用事業所設置届の提出

③障がい者の採用をする

特例子会社になるための申請は障がい者を雇用した後に初めて行えるため、会社を設立したらまずは障がい者採用を進めます。

④ハローワークへ特例子会社認定申請をする

社員を採用し、先ほどの5つの要件をクリアできたら、特例子会社として認定されるための申請を行います。

*****

ここでご紹介した内容はあくまで大まかな流れです。
特例子会社の設立を具体的に検討しはじめたら、まずは親会社管轄のハローワークへ相談しましょう。

また、「そもそも特例子会社を設立したほうが良いのか分からない」「まずは課題に思っていることを相談したい」
という企業の方は、ぜひ株式会社JSHへお問い合わせください。


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9.【経験者インタビュー】特例子会社の元役員さんに聞きました

ー話し手:Aさんーーーーーーーーーーーーーーーー
・前職は上場企業/材料メーカーにて人事部に所属
・グループの特例子会社の役員を経験
・従業員数1,000名以上
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Q.どのような経緯で特例子会社の役員になられたのでしょうか。

A.弊社は従業員規模も多かったため、特例子会社がいくつかありました。
    私はもともと親会社で人事部に所属していましたが、グループの特例子会社の中の一つで役員を務めることになりました。
       親会社の人事部からから特例子会社へ異動するケースが多かったですね。

Q.採用はどのように行っていましたか?

A. 採用経路は主にお付き合いがある養護学校からで、常に良い関係が築けていたので、特に採用には困っていませんでした。
    障がい者雇用率も余裕をもって超えていました。

Q.特例子会社で、障がい者はどのような仕事をしていましたか?

A.オフィスでは構内の掃除がメインでした。
       法務の文章や採用の履歴書などをPDF化するといった事務仕事もありましたね。

       工場だと作業服のクリーニング、工場内の掃除や機材をそろえるなどの比較的簡単な作業をお願いしていました。

Q.特例子会社で雇用する中で、どんな課題がありましたか?

A.部門によりますが、例えば機密情報を扱うような部署では業務の切り出しに苦戦していました。
    業務が途絶えることが無いよう、各部門の担当者と話し合いの場を持ち
 「どこまで何ができるのか」ということを随時すり合わせていましたね。

   また、これは特例子会社に限った話ではないですが、社会的な振る舞いがあまり身についていない障がい者の方はいました。
   具体的に言うと、同僚にいたずらをしたり、遅刻をしたりといったケースです。

Q.そのような課題にはどう対応していましたか?

A.起こった出来事に関しては一つひとつ専門家に相談して対処をしていきました。
    例えば養護学校の先生や職業安定所のスタッフさんに相談に行き、専門性の高い方に解決策を聞いていました。

 

10.まとめ

この記事では、特例子会社について解説しました。

法定雇用率の達成だけではなく、
障がい者雇用の環境を作るための様々なメリットがある特例子会社ですが、
一般的な職場と同じように課題は存在していることもお分かりいただけたかと思います。

特例子会社であっても、従来の障がい者雇用と同様に
職域の拡大や作業能力の向上への取り組みに注力する必要があります。

株式会社JSHでは、障がい者雇用に関する様々な課題を持つ企業様に向けて、
採用から定着まで包括的なサポートサービスを提供しています。

障がい者雇用にお悩みの担当者様は、ぜひ一度お問い合わせください。
特例子会社に関するご相談もお受けできますので、お気軽にご連絡くださいませ。

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この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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