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障害者雇用の合理的配慮に悩んだら必読!進め方まで解説

この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

「法定雇用率を満たすために障がい者雇用を進めようと思っている。手続きのときに“合理的配慮は義務です”と言われたけれど、合理的配慮って何だろう?」

「最近雇用した障がい者から、合理的配慮を求められた。企業としてどのように対応すればいいのか分からない」

障がい者雇用に取り組み始めると、耳にする機会が増える「合理的配慮」。必要だと言われても、どのようなものなのか、何をすればいいのか戸惑っている担当者は多いのではないでしょうか。

合理的配慮とは、障がいのある方から申し出があったときに、負担が重すぎない範囲で本人の求めに応じた配慮をすることです。

雇用分野での障がい者への合理的配慮の提供は法律で義務化されているので、事業主は合理的配慮の提供を避けて通ることはできません。

とくに、注意したいのは、合理的配慮は「この配慮が必要だろう」と企業側が独自に実践するものではないことです。障がいのある方からの申し出に耳を傾けて、双方で調整をしながら進める必要があります。

だからこそ、合理的配慮は必要なんだという理解にとどまらず、雇用分野ではどのように進めなければならないのか把握しておく必要があるのです。

そこで本記事では、障がい者雇用における合理的配慮の概要や具体例、怠った場合のリスクなどの基礎知識をまとめて解説しています。

最後まで読めば、障がいのある方を雇用するときに、どのように合理的配慮を提供すればいいのか分かり、不安や焦りを払拭できます。

障がい者雇用での合理的配慮は、障がいの有無を問わず生き生きと働くために必要な調整です。
自社にとって大切な人材と長く働くためにも、事前に把握しておきましょう。

障がい者雇用に関する課題をお持ちの方はJSHにご相談ください。

【目次】
1.障がい者雇用における合理的配慮とは
2.障がい者雇用における合理的配慮の具体例
3.合理的配慮の対象となる障がい者
4.障がい者雇用で合理的配慮を怠ったときのリスク
5.【障がい別】障がい者雇用における合理的配慮の好事例
6.企業が障がい者雇用で合理的配慮に取り組む4つのステップ
7.まとめ


1.障がい者雇用における合理的配慮とは

障がい者雇用における合理的配慮とは、障がいのある方から申し出があったときに過重な負担にならない範囲で障がい者の求めに応じた配慮をすることです。

2016年4月に施行された改正「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、雇用分野での障がい者差別が禁止されました。同法律では、事業主に対する雇用分野での合理的配慮も義務化されています。

【障害者の雇用の促進等に関する法律 第三十六条の二】

事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となつている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。

引用:e-Gov「障害者の雇用の促進等に関する法律」

つまり、障がいのある方を雇用した事業主は、過重な負担にならない範囲で業務をするうえでの障壁を取り除く必要があるのです。

では、合理的配慮とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

障がいのある方は、障がいのない方が容易にできることであっても、難しさを感じたり制限があったりします。

この状態では、障がいの有無を問わずに、同じように活躍したり、やりがいを感じることがどうしても難しい場面があります。

そこで、障がいのある方が「こうすればもっと仕事がしやすくなるなぁ」「こうなれば気持ちが楽になるなぁ」と感じて会社に申し出をしたときに双方で話し合い、同意を得たうえで適切な配慮を提供します。

例えば、情報を聞き取ることが難しい、聴覚に障がいのある方を雇用したとしましょう。

障がいのある方から「筆記でコミュニケーションが取れると嬉しい」との申し出があり、会社側は話し合いをして筆談でコミュニケーションができるように配慮しました。

その結果、障がいのある方は職場に適応しやすくなり、伸び伸びと働けるようになりました。

このように、障がい者の雇用では事業主が合理的配慮を意識することで、障がいの有無を問わずスキルを発揮しながら生き生きと活躍できる社会を目指します。

参考:厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」
参考:厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」

【2024年4月からは事業者への合理的配慮が義務化されました】

 

障害者差別解消法の改正により、2024年4月から事業者の合理的配慮の提供が義務化されました。

 

これにより障がい者雇用の範囲だけではなく、障がいのある顧客への対応などより広い範囲での合理的配慮が求められるようになりました。

 

合理的配慮については、下記の記事で詳しく解説しています。

【2024年4月より義務化】合理的配慮の考え方や企業がすべきこと

障がい者雇用に関する課題をお持ちの方はJSHにご相談ください。

 

2.障がい者雇用における合理的配慮の具体例

障がい者雇用では合理的配慮の提供が義務化されていることが分かったところで、合理的配慮の具体例を見てみましょう。

ここでは、障がい者雇用の各フェーズでどのような合理的配慮を提供できるのか具体例をご紹介します。

障がいのある方の雇用フェーズ合理的配慮のポイント
採用時・募集、採用時に障がいがある方とない方で差が生まれないように均等な機会を用意する
・面接時に必要な配慮について申し出てもらい、話し合いをする
採用後(仕事をする)・障がいのある方が必要としている配慮を確認、把握して過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供する
定着・合理的配慮を一度提供して終わるのではなく、定期的に話し合いをしてより働きやすい環境を目指す

障がいのある方を雇用するときに合理的配慮を提供するイメージを持つためにも、参考にしてみてください。

 

2-1.採用時の合理的配慮の具体例

自社で働く障がい者を募集、採用するときは、下記の2つが合理的配慮のポイントになります。

【採用時の合理的配慮のポイント】

・募集、採用時に障がいがある方とない方で差が生まれないように均等な機会を用意する
・面接時に必要な配慮について申し出てもらい、話し合いをする

引用:厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」

特に、採用時には障がいがある方とない方で差が生まれないように均等な機会を用意することを意識しましょう。

例えば、視覚障がいのある方に紙面での筆記試験を用意するのは、合理的配慮に欠けていると考えられます。障がいのない方と同じように試験を受けられるように、問題の読み上げや、解答方法の変更などの配慮が必要です。

採用時の障がいの種類ごとに検討できる合理的配慮の具体例は、下記の通りです。

身体障がいの種類合理的配慮の具体例
視覚障がい・募集内容を音声で伝える
・会社説明会時に図やグラフで表示している内容は口頭で丁寧に説明する
・試験官が読み上げて試験を実施する
聴覚障がい・筆談を使ってコミュニケーションを取る
・質問事項を事前に紙面に書いてもらう
・緊急時や業務を依頼するときなどに肩を叩くなどの何らかのサインを出していいか確認しておく
肢体障がい・出入口から近い部屋で面接を実施して移動距離を少なくする
・通勤ラッシュ時など移動に負担がかかる時間帯を避ける
・介助者などの同席を認める
音声・言語・そしゃく機能障がい・筆談を使ってコミュニケーションを取る
・介助者などの同席を認める
・回答しやすい質問をする
内部障がい・体調を考慮して短時間で面接を終える
・急な体調不良に備えて近くの病院などを確認する
・通院などを考慮して問題ない面接時間を決めてもらう
知的障がいの種類合理的配慮の具体例
知的障がい・面接時の同席を認めて同席者に受け答えのフォローをしてもらう
・同席者にできること、できないことなどを教えてもらう
・ふだんより時間をかけてゆっくりと回答してもらう
精神障がいの種類合理的配慮の具体例
精神障がい・面接時の同席を認めて同席者に受け答えのフォローをしてもらう
・集団面接を免除して個別で面接を実施する
・面接で緊張してしまう場合は中断を認めて落ち着いてから再開する

参考:厚生労働省「合理的配慮指針事例集 【第五版】 」

【過重な負担にならない範囲とは】

障がいのある方からの申し出が過重な負担に該当するかどうかは、下記の6つの要素を踏まえて事業主が判断します。

・事業活動への影響の程度
・実現困難度
・費用・負担の程度
・企業の規模
・企業の財務状況
・公的支援の有無

例えば、障がいのある方からの申し出の内容が費用負担が大きくすぐに実現が難しい場合は、過重な負担になると判断されることがあります。

過重な負担に当たると判断した場合は理由を障がいのある方に説明をしたうえで、実現できそうな合理的配慮の範囲を話し合いましょう。

 

2-2.採用後の合理的配慮の具体例

障がいのある方を採用した後は、業務内容や量、業務環境などに関して話し合いをして双方が同意したうえで、過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供することがポイントです。

【採用後の合理的配慮のポイント】

・障がいのある方が必要としている配慮を確認、把握して過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供する

参考:厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」

職場に慣れるまでは障がいのある方から配慮の申し出がしにくいケースもあるので、社内メールや書類などを使って合理的配慮の申し出を促すことも検討できるでしょう。

企業側と障がいのある方で十分に話し合い、合意をしたうえで、提供する合理的配慮を決めていきます。

必要な合理的配慮は、障がいのある方の現状や課題に応じて変わるため「これをすればいい」というものはありません。下記の具体例を参考に、障がいのある方が働きやすくなる配慮を検討しましょう。

身体障がいの種類合理的配慮の具体例
視覚障がい・音声読み上げソフトや拡大読書器などを導入する

・業務時間が認識できるように音の鳴るタイマーを用意する

・社内のレイアウトや危険箇所について口頭で丁寧に説明をする

聴覚障がい・手話、筆談などでコミュニケーションを取る

・朝礼の要約、リアルタイム文字起こしなどをして情報共有をする

・危険箇所の掲示、テープやシールでの注意喚起をおこなう

肢体障がい・移動負担を軽減できるレイアウトに変更する

・階段の昇り降り、場所移動が必要になる業務は他の社員に割り当てる

・作業しやすい机、椅子を導入する

音声・言語・そしゃく機能障がい・筆談を使ってコミュニケーションを取る

・昼食の時間を長めに確保する

・焦らずゆっくりと話せる環境を整える

内部障がい・体調不良での早退や欠勤に柔軟に対応する

・1時間ごとに休憩時間を設ける

・急な体調不良時にすぐに駆けつけられるようにブザーを設置する

知的障がいの種類合理的配慮の具体例
知的障がい・最初は業務量を減らして習熟度を確認しながら業務を増やす

・使用する道具を色で分けて覚えやすくする

・定期的に声掛けをしてコミュニケーションを取る

精神障がいの種類合理的配慮の具体例
精神障がい・スケジュールや業務内容が分からないと不安になる場合は、一人ひとりホワイトボードに書いて提示する

・マンツーマンで指導をして理解しやすくする

・静かな場所で休憩できるように個室を用意する

参考:厚生労働省「合理的配慮指針事例集 【第五版】 」

 

2-3.定着の合理的配慮の具体例

障がい者は雇用して終わりではなく、定着して働けるように合理的配慮を継続する必要があります。

とくに、障がいのある方は就職から1年で一定数離職してしまう傾向があるため、下記のような取り組みをして合理的配慮を提供し続けることが大切です。

【障がいのある方の職場定着に向けた合理的配慮の例】

・定期的に面談をして必要な合理的配慮の過不足や、現状を確認する
・体調や感情の起伏に応じて休憩、欠勤などの柔軟な対応をする
・障がいのある方が孤立しないように積極的にコミュニケーションを取る

障がいのある方が求める合理的配慮は、現状や課題に応じて変化していきます。一度提供して終わりではなく、定期的に見直しをするようにしましょう。

また、継続して仕事に携わっていくと、体調の波や感情の起伏などが出るタイミングが来るケースがあります。このときには仕事量や勤務時間などの調整をして、無理をしないように配慮する姿勢も重要です。

▼障がい者の定着率は、下記の記事で詳しく解説しています。
【最新数値】障がい者雇用の定着率は?|定着率をあげるための対策5つ

▼合理的配慮の具体例は、下記の記事でも詳しく解説しています。
合理的配慮の具体例まとめ|場面別・障がい別に提供のポイントを紹介

障がい者雇用に関する課題をお持ちの方はJSHにご相談ください。

 

3.合理的配慮の対象となる障がい者

合理的配慮の対象となる障がい者は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」の第2条第1号で定義されている「障がい者」です。

【障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号】

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 障害者
身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。

引用:e-Gov「障害者の雇用の促進等に関する法律」

該当する法律を見ると分かるように、障がい者手帳を保有していない下記のような方も対象になります。

【合理的配慮の対象者の例】

・身体障がい者
・知的障がい者
・精神障がい者
・発達障がい者
・障がい者手帳がなくても難病に起因する障がいがある、高次脳機能障がいがあるなど長期・永続的な障がいを抱えている方(職業生活に相当の制限を受けるもしくは職業生活が著しく困難な場合)

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「合理的配慮提供のポイントと企業実践事例」

ただし、職業生活で大きなハンディキャップがない場合や、病気やケガなどで一時的に制限が発生している場合は、合理的配慮の対象外となります。

障がい者雇用に関する課題をお持ちの方はJSHにご相談ください。

 

4.障がい者雇用で合理的配慮を怠ったときのリスク

障がい者雇用では合理的配慮の提供が義務化されていますが、万が一提供を怠った場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか?

ここでは、障がい者雇用で合理的配慮を怠ったときのリスクをご紹介します。

障がい者雇用で合理的配慮を怠ったときのリスク
・罰金を支払わなければならない場合がある
・公共職業安定所などから助言・指導・勧告を受ける場合がある
・条例違反となる可能性がある

合理的配慮の提供を怠ると、企業の信用を落とす可能性があります。「絶対に合理的配慮を提供しよう」と思うためにも、事前に把握しておきましょう。

 

4-1.罰金を支払わなければならない場合がある

障がい者雇用において合理的配慮を怠ったとしても、行政罰(罰金・懲役など)には問われません。

ただし、必要な合理的配慮をしない、障がいのある方への差別をするなどをして報告を求められたときに、未報告や虚偽の報告をすると20万円以下の過料の対象となる可能性があります。

【障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律】

第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

引用:e-Gov「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」

このように、合理的配慮を怠ったこと自体では行政罰はなくても、間接的に罰金の対象になるリスクがあることを把握しておきましょう。

 

4-2.公共職業安定所などから助言・指導・勧告を受ける場合がある

合理的配慮を怠っても今のところ行政罰の対象にはなりませんが、公共職業安定所などが助言や指導、勧告をして改善を図ることがあります。

合理的配慮を怠ると受けるもの概要
ステップ1:助言障がい者や関係者から相談を受けて、事業者に改善を促す
ステップ2:指導助言をしても改善が見られない場合に具体的な指導をする
ステップ3:勧告指導をしても改善されない場合に、厚生労働大臣(実務は都道府県労働局長)から勧告をする

厚生労働省が公表している「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る 相談等実績(令和6年度)」によると、2024年度には11件の助言、1件の指導が実施されています。
合理的配慮を怠り助言をされても放置すると、指導や勧告へと進むことを把握しておきましょう。

 

4-3.条例違反となる可能性がある

都道府県によっては、障がいがある方への差別を減らすために下記のような条例を設けていることがあります。

都道府県条例
東京都東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例
千葉県障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例
大阪府大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例
神奈川県横浜市横浜市障害を理由とする差別に関する相談対応等に関する条例

とくに、大阪府の「大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例」では、合議体が合理的配慮をしない企業の間に入りあっせんすることを記載しています。

企業が正当な事由がなくあっせん案を受諾しない、従わない場合は勧告され、さらに勧告に従わないとその旨が公表されます。

このように、都道府県の条例によって、障がい者差別の撲滅や合理的配慮の促進をしているケースもあるので、合理的配慮を怠ると条例違反となる可能性があるでしょう。

障がい者雇用に関する課題をお持ちの方はJSHにご相談ください。

 

5.【障がい別】障がい者雇用における合理的配慮の好事例

合理的配慮の必要性が理解できたところで、障がいのある方を雇用するときはどのように合理的配慮を提供すべきか悩むところです。

そこで、以下の障がい別に合理的配慮の事例をご紹介します。

・身体障がい
・知的障がい
・精神障がい
・発達障がい

障がい者を雇用する際の参考にしてみましょう。

 

5-1.身体障がいへの配慮事例

身体障がいの場合、以下のようにどの部分に障がいがあるかによって合理的配慮の事例が異なります。

身体障がいの種類
視覚障がい
聴覚障がい
肢体不自由
内部障がい

それぞれについて詳しくご紹介します。

 

5-1-1.視覚障がい

視覚障がい者というとまったく視力がない人を思い浮かべるかもしれませんが、人によって視力や見える範囲、ものの見え方はさまざまです。
雇用時には障がいの程度や内容に合わせて合理的配慮を検討する必要がありますが、視覚障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

視覚障がい者への合理的配慮の事例
採用時・ビルの入口まで出迎える
・白杖を使用する視覚障がい者を誘導する時には杖を持っていない方に立ち、肘に手をかけてもらう
・名刺に頼らず、聞き取りやすい自己紹介をする
入社後音声読み上げソフトを導入する
・職場の備品を使いやすいように定位置を決める
・声をかける時は誰か分かるように名乗ってから用件を伝える
・状況を伝える時には「これ」や「それ」といった代名詞を避ける
・ラッシュ時の混雑を避けるため、フレックスタイム時差通勤を活用する

視覚障がい者は音声読み上げソフトがあれば、メールでのやり取りやExcelでの入力・計算、資料の作成などが可能です。
コミュニケーションを取る際には誰か分かるようにまず名乗ることと、見えにくい人の立場に立ってどう説明してもらったら分かりやすいかを考えて「これ」や「それ」といった代名詞を避けてより具体的に話すことを意識しましょう。

5-1-2.聴覚障がい

聴覚障がい者についても聞こえ方や聞き取れる内容は人それぞれなので、その人がもっともコミュニケーションを取りやすい方法を取り入れることが大切です。
聴覚障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

聴覚障がい者への合理的配慮の事例
採用時筆談の用意をしておく
・読唇できる場合は、口元を見せてゆっくりはっきりと話す
入社後・障がい特性に合わせて筆談や音声を文字化するアプリを入れた携帯やタブレット、あるいは手話を使い分ける
・読唇できる場合は、肩などに触れてこちらを見てもらってから話しかける

音声を文字化するアプリケーションを入れた携帯やタブレットがあれば、少しだけタイムラグはあるもののコミュニケーションを取ることができます。
読唇できる障がい者については、必ず話す人の方を見てもらってからゆっくりはっきりと話すようにしましょう。

 

5-1-3.肢体不自由

「肢体不自由」とは身体の動きに関する器官が病気やケガによって損なわれ、歩行や筆記といった日常生活の動作が難しい状態のことをいいます。
肢体不自由の障がい者を雇用するときに検討できる合理的配慮は、以下の通りです。

肢体不自由の障がい者への合理的配慮の事例
採用時・会社の入り口からできるだけ近い場所を面接場所にする
入社後・通勤の労力を軽減できるように在宅ワークを導入する
移動頻度の少ない業務を割り当てる
・極力移動せずに済むように必要な備品や書類は手の届く範囲に配置する

障がいのある部分や程度によって制限されることも多いので、一人ひとりに合わせた合理的配慮をすることが大切です。

5-1-4.内部障がい

「内部障がい」とは、臓器における機能障がいやヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいがあることをいいます。
一見しただけでは障がいがあることが分かりづらいですが、障がいが進行して体力が低下している場合は業務量を減らしたり、通院のための休暇が必要になったりといった合理的配慮が必要になります。
内部障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

内部障がい者への合理的配慮の事例
採用時・体調が悪くなったらすぐに休憩スペースを利用するように伝える
入社後・通院や急な体調不良に備えて、普段から情報を共有できるチーム体制をとる
・体調が悪くなったらすぐに休憩スペースを利用できる環境を整える

障がい者本人が同意するなら通院日程をあらかじめチーム全員で共有しておけば、業務のペース配分を検討しながらチームで協力して仕事を進めることができます。

 

5-2.知的障がいへの配慮事例

知的障がい者も障がいの程度や苦手とすることは人それぞれですが、物事の判断や臨機応変な対応、空気を読むことが難しいことが多いのが特徴です。
知的障がいがある方を雇用するときに検討できる合理的配慮の事例は、以下の通りです。

知的障がい者への合理的配慮の事例
採用時分かりやすい言葉を選び、場合によってイラストを用いる
入社後・あいまいな指示ではなく、具体的かつ端的に説明する
理解度に合わせて業務を割り当てる
・仕事を覚えやすいように視覚的に分かりやすい(図解や写真を用いた)マニュアルを作成する
・すぐに質問できるようにサポート担当者を決める

知的障がい者は単純作業でもコツコツと取り組み続けられる高い集中力があり真面目な方も多いので、一人ひとりに合わせて合理的配慮をすれば一生懸命働いてくれる、貴重な戦力となる可能性が高くなります。

 

5-3.精神障がいへの配慮事例

「精神障がい」とはうつ病や躁うつ病、統合失調症、てんかんといった障がいのことで、人によって症状が現れる状況や頻度、程度は異なります。
精神障がい者に多く導入されている合理的配慮の事例は以下の通りです。

精神障がい者への合理的配慮の事例
採用時他のスタッフの出入りがない場所を面接場所にする
入社後・追い詰めないように適切な業務量を割り当てる
体調が変動するサインが見られないか気に掛ける
・ストレスに弱いので、失敗しても大丈夫だと思える声掛けをする
・こまめに休憩を取るように伝える

精神障がい者は不安を感じやすい性質があるので、たとえ失敗しても「これくらいみんなやったことがある失敗なので、大丈夫ですよ。」と安心感を与えられるような声掛けをしましょう。
また、表情が曇ってきたり、業務が滞り始めるなどのサインが見られる場合は休憩を促したり、分からない部分はどこかを確認したり、相談を促したりして気に掛けることが大切です。

 

5-4.発達障がいへの配慮事例

「発達障がい」とは脳機能の発達が関係している先天的な障がいで、生まれながらにして脳の働きに偏りがあってコミュニケーションが取りにくかったり、集中力が続かなかったりします。
発達障がいがある方を雇用するときに検討できる合理的配慮の事例は、以下の通りです。

発達障がい者への合理的配慮の事例
採用時・説明を明確におこなう
入社後・やるべき仕事の内容、手順、役割分担をマニュアル化して明確にする
・障がい特性を理解してコミュニケーションをする
・ルールにこだわりやすいので、変更がある時には事前に伝える
・指示や注意は具体的におこなう
・音や光に敏感な場合は、パーテーションイヤホンの使用を認める

発達障がい者の中には人と話している最中でも注意がそれてしまって視線が合わなかったり、いきなり違う話題を話し始めたりする人がいますが、障がい特性の一部だと理解してコミュニケーションを取りましょう。
音や光に敏感な発達障がい者はパーテーションやイヤホンの使用を認めると、集中力を維持しやすくなります。

障がい者雇用に関する課題をお持ちの方はJSHにご相談ください。

 

6.企業が障がい者雇用で合理的配慮に取り組む4つのステップ

ここまで読み、企業としてはどうすれば障がい者に対してスムーズに合理的配慮ができるようになるのか流れが知りたい人も多いのではないでしょうか。

そこで、企業が障がい者雇用で合理的配慮を進めるための4ステップを詳しくご紹介します。

 企業が障がい者雇用で合理的配慮を進めるための4ステップ
 ❶障がい者からの申し出を受ける
 ❷配慮する内容について話し合う
 ❸合理的配慮を実行する
 ❹定期的に見直しをする

ぜひ参考にしてみてください。

 

6-1.【STEP1】障がい者からの申し出を受ける

合理的配慮を提供するには、基本的には障がい者の方からどのような合理的配慮を求めるのか申し出てもらう必要があります

障がい者の中には合理的配慮が必要であることを申し出なければ企業が対応できないことを知らない人もいれば、合理的配慮をしてほしいと申し出たら採用されなくなるのではないかと不安に思っている人もいます。

そこで、企業は障がい者が合理的配慮の申し出ができるように、以下の2つのポイントを実行しましょう。

障がい者が合理的配慮を申し出やすくするためのポイント
採用面接時に合理的配慮が必要かどうか本人の希望を聞く時間を設ける
合理的配慮を申し出ても企業ができる範囲であれば採用可否に関係しないことを伝える

なお、採用後にその障がい者に対して合理的配慮が提供できるように、以下のことを確認しておきましょう。

確認項目具体的な内容
障がいについて・先天性障がいか、後天性障がいか
・疾病の後遺症や合併症によるものか
・障害者手帳を所持している場合は、等級を確認する
・障害者手帳を所持していない場合は、医療受給証や医師の診断書を確認する
症状・発症後からの経過
・現在の症状
・今後症状が変化する可能性はあるか
服薬状況・現在服薬しているか
・服薬以外の処置(透析やインスリン注射など)が必要か
通院状況・業務時間内に通院することがあるか

このように障がい者を採用する際には、障がい者が合理的配慮が必要であることを申し出やすいように心がけると同時に、その人の障がいについて理解を深めましょう。

 

6-2.【STEP2】配慮する内容について話し合う

障がい者が望むことすべてに対して合理的配慮をすると企業に過度な負担となる可能性があるので、障がい者と企業の双方で配慮する内容について話し合います。

配慮する内容について話し合う時に気を付けたいポイントは、以下の3つです。

配慮する内容について話し合う時のポイント
配慮してほしい内容について意見を聞く
プライバシーに配慮する
双方が納得・合意できる着地点を見つける

参考にしてみましょう。

 

6-2-1.配慮する内容について意見を聞く

まずは、どのような合理的配慮が必要か内容について障がい者に意見を聞きましょう。

実際に働く場所を見学したり業務内容や一日の流れを体験したりして、危険を感じることや困ることに対してどんな合理的配慮があればよいのか一緒に考えます。

とくにトイレについては企業が気付きにくい部分なので、現在の仕様で問題ないか、変更が必要な場合はどのようなトイレが必要なのかを確認しましょう。

 

6-2-2.プライバシーに配慮する

障がいの特性や種類もプライバシーの一部なので、合理的配慮の内容を話し合う際には内容だけでなく職場のどの範囲まで合理的配慮が必要であることを共有するかについても配慮する必要があります。

配属する部署の全員のスタッフが障がいへの理解を深め、合理的配慮ができることが一番望ましい職場環境ですが、以下のような障がい者がいることも忘れてはなりません。

・不当な差別を受けた経験があるため、同じチームの人以外には障がいがあることを知られたくない精神障がい者や発達障がい者
・暗闇でパニック症状が出ることは部署全体で共有していてほしいが、その原因となった出来事については知られたくない精神障がい者

障がい者が働きやすい環境を作れるように、一人ひとりに合わせて内容だけでなくプライバシーに配慮してどの範囲まで合理的配慮が必要であることを共有するかについても検討する必要があるのです。

 

6-2-3.双方が合意できる配慮内容にする

企業は障がい者の希望に合わせて合理的配慮の内容を決定しますが、双方が合意できるものにすることがとても重要です。

なぜなら、企業の財務状況やオフィスが所有ビルではなく賃貸テナントの場合は物理的に障がい者の希望通りの合理的配慮ができないことがあるからです。

このような場合、企業は過度な負担となるため障がい者の希望に合わせることができませんが、雇用する障がい者が合意できるように「なぜできないのか」「代わりにどのようなことができるのか」を丁寧に伝える必要があります。

 

6-3.【STEP3】合理的配慮を実行する

企業と障がい者の双方が合理的配慮について合意できたら、実際に合理的配慮を提供します。

「今日から〇〇さんに合理的配慮をしましょう」と言っても配属された部署のスタッフがすぐに実行できる訳ではないので、以下のポイントに気を付けましょう。

合理的配慮を提供する時のポイント
合理的配慮についての説明会を開催する
合理的配慮に関するルールを作成する
障がい者のサポート担当者を決める

それぞれについて詳しくご紹介します。

 

6-3-1.合理的配慮についての説明会をする

職場では常に目の前にある重要度が高い仕事や納期が短い仕事に対応するために時間に追われているので、実際には障がい者への合理的配慮については後回しにされがちです。

しかし、障がい者も同じように働くためには合理的配慮が必要不可欠なので、対象者に短時間の説明会に参加してもらいましょう。

説明会の目的は障がいへの理解を深めることを促進して合理的配慮の必要性を感じてもらうことで、障がい者の受け入れ準備を整えることができます。

 

6-3-2.合理的配慮に関するルールを作成する

合理的配慮に関するルールを書面で作成しておくと、障がい者への対応に困った時に参考にできるだけでなく、今後上司や同僚が替わってもすぐに見ることができます。

合理的配慮に関するルールには、例として以下のようなものがあります。

・通院のため月に一度午後休暇を取得する
・体調の変化を感じたらいつでも休憩室を利用できる
・身体的負担を軽減するために専用の装置や器具を使用する

このように「通院のため月に一度午後休暇を取得する」といったものが盛り込まれていても、障がいのある方ご本人から毎月午後休暇の取得を申し出るのは負担に感じやすいものです。

そこで、周囲のスタッフが理解しておくことでさりげなく休暇申請を促すことができるので、合理的配慮に関するルールを作成したらしっかりと共有するようにしましょう。

 

6-3-3.障がい者のサポート担当者を決める

障がい者のサポート担当者を決めておくと、障がい者が実際に働いてみて困ったことをすぐに相談できるので、合理的配慮の質を高めることができます。

障がい者が働きやすいと感じるかどうかは、ほんの些細な心がけで変わります。

たとえば、視覚障がいのある人にいきなり話しかけても声だけでは誰であるかを認識しづらいため、先に名乗ることで誰が話しかけているかが分かり会話がスムーズになります。

急いでいると名乗ることを忘れがちですが、障がい者本人が「間違っていたら申し訳ありませんが、〇〇さんですか?」と毎回聞くのはかなりの労力です。
そこで、障がい者の横の席にいるサポート担当者が「名乗ってから用件を話すようにしてください」と毎回注意すれば、障がい者はぐんと働きやすくなるのです。

 

6-4.【STEP4】定期的に見直しをする

障がい者に対する合理的配慮は最初に決めた内容をずっと変えないのではなく、定期的に見直しをして改善していくことが大切です。

なぜなら、障がいの程度が変わる可能性があるだけでなく、職場に合理的配慮を定着させるもっと良い方法があれば積極的に取り入れるべきだからです。

おすすめなのは、月に1回障がい者とサポート担当者、直属の上司を交えたフォローアップ面談をおこない、現在の合理的配慮の内容が適切であるかや何か困っていることがないかを確認し、見直せる部分については新たに検討することです。

合理的配慮の変更点については書面でのルールについても書き換え、関係者に周知を徹底するようにしましょう。

合理的配慮が難しいと感じている企業には「障がい者雇用支援サービス」がおすすめ
障がいに合わせて合理的配慮をするのは難しいと感じている企業には株式会社JSHの「障がい者雇用支援サービス」がおすすめです。

株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスは、以下のように障がい者雇用を推進したい企業と就業意欲の高い地方在住の障がい者を繋いで、地方を中心に展開している農園で障がい者の雇用支援をおこなっているため、職場の定着率が高いのが特徴です。

コルディアーレ農園の仕組み

この株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスを利用すれば、企業内に受け入れ体制が出来ていない場合でも、看護師による健康管理といった専門的な合理的配慮はJSHにお任せいただきながら、自社の従業員として雇用できます。

障がい者への合理的配慮をするのは難しいという企業の声(一例)
・障がい者にどう接すればいいのか分からない
・障がい者に合理的配慮ができるほど経済的にも余裕がなく、社内の理解が得られない
・周囲のスタッフの負担が大きくなるのではないか

 

なお、株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスがおすすめである理由は次の3つです。

  • 障がいに対する知識や障がい者雇用実績が豊富なJSHが障がい者募集から採用、定着までをサポート
  • 企業は障がい者に対する合理的配慮の課題を解決することができるだけでなく、自社内でのノウハウの蓄積も実現できる
  • 障がい者が安心して働ける環境を提供できる

受け入れ体制や合理的配慮の対応に不安がある場合でも、専門的な合理的配慮はJSHにお任せいただきながら、自社の従業員として雇用できます。

障がい者雇用や合理的配慮のノウハウがないことが課題とお考えなら、株式会社JSHの障がい者雇用支援サービスを利用してみませんか?


株式会社JSHでは、
「募集しても採用につながらない…」
「業務の切り出しがうまくできない…」
「何かと社内トラブルが多く、定着率が低い…」
といった障がい者雇用に関する様々な課題を持つ企業様に向けて、 採用から定着まで包括的なサポートサービスを提供しています。

▼JSHの障がい者雇用支援サービスについて

※無料でダウンロード可能です。

詳細資料はこちら

障がい者雇用に関する課題をお持ちの方はJSHにご相談ください。

 

7.まとめ

いかがでしたか?
障がいについてあまりよく知らない方が読んでもご理解いただけるように、この記事では障がい者雇用における合理的配慮の基礎知識や具体的な進め方まで詳しく解説しました。

障がいはさまざまな種類がある上に人によって現れる症状や程度が異なるため、障がい者一人ひとりに合わせて合理的配慮をすることが大切です。

この記事の内容をご参考にしていただき、企業での障がい者雇用で合理的配慮を進められることを願っていますが、難しいと判断した場合はぜひご相談ください。

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