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合理的配慮の具体例まとめ|場面別・障がい別に提供のポイントを紹介

「2024年4月から企業で障がい者への合理的配慮が義務化されているが、合理的配慮と言われても、何からすればよいか分からない」
「具体例を参考にして、障がいのある従業員やお客様に適切な合理的配慮を行っていきたい」

そのように、障がい者のある社員にはより良い職場環境を、障がい者のお客様にはより良いサービスを提供するために、合理的配慮の具体例をお探しなのではないでしょうか。

一口に合理的配慮と言っても、できることはさまざまですが、例えば以下のようなことも合理的配慮と言えます。

参考:政府オンライン『事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化』の画像を元に作成

このように、「着席したいのに椅子があって困っている車椅子の人のために椅子を片付ける」、それだけで立派な合理的配慮です。

難しく考えなくても、目の前で困っている人の助けになろうと行動すれば、自ずと合理的配慮が提供できるケースもあります。

ただ、障がいの特性や、合理的配慮が必要な場面は多岐に渡ります
このため、合理的配慮を徹底するには、以下のような観点ごとにきちんと提供することが必要です。

【職場と店舗で合理的配慮を提供する際の観点】
職場 店舗
・職場環境の整備

・コミュニケーション方法

・柔軟な勤務体制

・業務の選定

・店内環境の整備

・コミュニケーション方法

・ルールの柔軟な変更

具体例を参考にする際にも、こうした観点ごとに見ていくことで、抜け漏れなく配慮を行き渡らせやすくなるはずです。

そこで、この記事では各観点ごとに、合理的配慮の具体例をご紹介します。

この記事のポイント
・障がいのある従業員に提供する合理的配慮の観点と具体例が分かる

・障がいのあるお客様に提供する合理的配慮の観点と具体例が分かる

・合理的配慮を提供する際の流れが分かる

あなたの企業でも、場面や障がいに応じた適切な合理的配慮がしっかりと提供できるように、ぜひ最後まで読み進めていただければ幸いです。

合理的配慮の考え方や必要性について、まず知っておきたい方は、「【2024年4月より義務化】合理的配慮の考え方や企業がすべきこと」からご覧ください。

【目次】
1. 【職場】障がいのある従業員に対する合理的配慮の具体例
2. 【店舗】障がいのあるお客様に対する合理的配慮の具体例
3. 合理的配慮は個別対応が重要!提供の流れ
4. 職場における合理的配慮に課題があるならJSHの障がい者雇用支援サービスがおすすめ
5. まとめ


1.【職場】障がいのある従業員に対する合理的配慮の具体例

冒頭でもお伝えした通り、障害者差別解消法の改正により、2024年4月から企業(事業主)に対して障がい者への合理的配慮の提供が義務付けられました。

職場で雇用されている障がいのある従業員に対する合理的配慮の具体例を、以下の4つの観点からご紹介します。

・職場環境の整備

・コミュニケーション方法

・柔軟な勤務体制

・業務の選定

障がい者の従業員にどのような合理的配慮をすればよいのかを知るために、ぜひ参考にしてみましょう。

 

1-1.職場環境の整備

障がいのある従業員に対する職場環境の整備は、バリアフリーが基本ですが、障がい特性に合わせた配慮する必要があります。

障がい種別ごとの合理的配慮の具体例は、以下の通りです。

【身体障がい者への職場環境の整備】
身体障がい者
視覚障がい ・歩行中につまずきやすいため、通路を塞ぐような物は置かない

・裁断機など刃物の位置は、事前に知らせる

・点字のディスプレイ付きパソコンや、音声読み上げソフトをレンタル/購入する

・特定の色が見えにくい場合、掲示物の文字色を見やすい色に変える

・暗いところで見えにくい、光を眩しいと感じる場合があるため、座席の照明の位置を変える

・点字なしのエレベーターを利用する場合、ボタン横に点字シールを貼る

※点字シールはネット通販でも購入可

・盲導犬の同伴出社を認める

聴覚障がい ・聴導犬の同伴出社を認める
そしゃく機能

障がい

・経管栄養の時間とスペースを確保する

※経管栄養とは、口から栄養が摂取できず、チューブやカテーテルを通して胃や腸に直接栄養剤を注入すること

肢体不自由 ・車椅子が通れる十分な通路スペースを確保する

・通路を塞ぐような物は置かない

・入口や室内の段差をなくし、スロープを設置する

※スロープはネット通販でも購入可

・2階以上の部署に配属する場合、エレベーターを設置する

(エレベーター設置工事業者に依頼する)

・エレベーターのボタン位置が高くて押しにくい場合、低い位置に変更する

(エレベーター設置工事業者に依頼する)

・リフォーム業者に廊下の手すり設置を依頼する

・必要な物は手が届く範囲に置く

・車椅子に座ったまま仕事ができるように、利用しやすい机の高さに調整する

・一定の体温を維持するのが難しい場合、冷暖房が適温が確認する

内部障がい ・障がいによって移動で疲れやすいため、所属部署を一階にする

・心臓機能障がいによってペースメーカーを装着している場合、高エネルギーの電磁波を出す機械に近づかせない

・ぼうこうや直腸に障がいがある場合、トイレに行きやすいように、出入り口に近い座席に配置する

・小腸機能障がいで経管栄養が必要な場合、時間とスペースを確保する

【知的障がい者への職場環境の整備】
知的障がい者
・裁断機など刃物は、安全に取り扱えるようになるまで手の届く範囲に置かない

 

・精密機器や薬品類があるなどの理由で立ち入ってほしくない場所がある場合は、「立入禁止」ではなく「はいらない」というように、分かりやすい言葉で書いた掲示をした上で、何度も説明する

【精神障がい者への職場環境の整備】
精神障がい者
・その人にとってストレスがかかりにくい環境で同じ仕事内容を続けられるようにする

例:部署異動をなくし、ずっと同じ上司、同じメンバーで、毎日同じルーティンの業務を行えるようにする

 

・発達障がい者の場合、気の散りにくい座席配置にする

例:ついたて、カーテン、耳栓、サングラスの利用などを認める

同じような障がいでも、人によってその程度や現れている症状が異なるので、障がいのある従業員とよく話し合って、どうすればより良い職場環境にできるか検討しましょう。

採用前の職場見学時や面接時は、完璧な合理的配慮の提供は難しいですが、会社の玄関まで迎えに行き、様子を見ながら手を貸すことで、障がい者が過ごしやすい環境を整えられます。

 

1-2.コミュニケーション方法

障がい者の従業員とのコミュニケーションは、障がいによって意思疎通しやすい方法が異なるため、障がいに合わせて行います。

コミュニケーション方法における合理的配慮の具体例は、以下の通りです。

【身体障がい者へのコミュニケーション方法】
身体障がい者
視覚障がい ・話し掛ける時は驚かせないように、まず名乗ってから話し始める

・説明する際には、実際の方向や、大きさや色を踏まえて具体的に伝える

例:「あなたから見て2時の方向からご年配の男性のお客様がいらしています」

聴覚障がい ・電話対応をなくす

・筆談や手話、パソコン/スマホのチャット機能を利用する

・補聴器を利用している場合、資料やマスクなどで口元を隠さず、できるだけゆっくりはっきりと話す

・会議など複数の人が会話する時は、発言者が手を上げてから話し始める

・片側の聴力だけ極度に低い場合、聞こえが良い方に移動して話し掛ける

音声機能障がい

言語機能障がい

・電話対応をなくす

・筆談や手話、パソコン/スマホのチャット機能を利用する

・大きくゆっくりと話しかける

・その都度聞き返し対応をする

【知的障がい者へのコミュニケーション方法】
知的障がい者
・イラストや写真などを使って説明する

・一度では理解するのが難しいことは、何度も繰り返して覚えてもらう

・仕事の手順を1つずつ分解して、少しずつ教える

【精神障がい者へのコミュニケーション方法】
精神障がい者
記憶障がい 手がかりがあると思い出しやすいため、手帳やメモ、アラームを利用してもらう
社会的行動障がい 感情をコントロールできない時は、話題や場所を変える
発達障がい 具体的かつ視覚的な伝え方を心がける

例:「これをしてからあれもやっといてね」ではなく、仕事の流れを端的にまとめた紙を渡し、一つの工程が終わる度にチェックを入れてもらう

一度に多くの情報が

入ると混乱する場合

情報を整理して紙にまとめるなどして、ゆっくり具体的に伝える

特に一般企業内での障がい者雇用の場合、少数派となる障がい者は職場の人間関係に馴染めないことが多いので、その人に合うコミュニケーション方法を見つけて、こまめに声を掛けましょう。

障がい者と一緒に働く上で、障がいについてもっと詳しく知りたいと思った方は、障がいの詳しい種類や要因も紹介している「障がいの種類は?わかりやすく分類するなら身体・知的・精神の3種類」を、ぜひご覧ください。

 

1-3.柔軟な勤務体制

障がいのある従業員が働きやすいように、合理的配慮の一つとして、柔軟な勤務体制も整えましょう。

障がいの種類や程度によっては、会社に出勤して業務をこなすことは、負担が非常に大きいからです。

一般従業員と同じ勤務体制では負担が大きい場合は、以下の選択肢の中からその障がい者に合う働き方を探す対応をしましょう。

・通勤ラッシュを避けるための時差出勤

・短時間勤務の選択

・体調や障がい特性に合わせてテレワークを選択

・定期通院による遅刻・早退

特に、じん臓機能障がいがある場合、人工透析は週3回、1回半日ほどの時間が必要となるため、障がいを理解して休みを取得しやすいように、周囲がフォロー体制を整える必要があります。

また、働き始めて間もない場合は、慣れない環境下で身体的・精神的に負担が掛かり、体調を崩しやすくなります。

そのため、採用した障がい者が仕事に慣れる前に早期退職せずに済むように、様子を見ながら少しずつ勤務時間を伸ばしていくなどの合理的配慮を提供しましょう。

障がい者雇用における勤務時間についてよくあるQ&Aを、「障がい者雇用の勤務時間|最新調査結果と雇用率カウント早見表で解説」でご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

1-4.業務の選定

障がい者の従業員に対する業務の選定は、障がい者のやりがいやモチベーションに関わるので、非常に重要になります。

障がい特性による業務の向き・不向きを踏まえて、適性に合った業務を選定しましょう。

まず、障がい別に比較的適性が高いと思われる業務の具体例は、以下の通りです。

【障がい別の比較的適性が高い業務】
身体障がい ・事務作業

・座ったままできる簡単な製造作業

・エンジニア・デザイナー

知的障がい ・清掃作業

・梱包、商品管理などのバックヤード作業

・簡単な農作業

精神障がい ・コールセンター

・事務作業

・簡単な農作業

一方で、障がいによってできなかったり、危険性が高かったりする場合があるので、以下の業務は避けるべきです。

【身体障がい者が避けるべき業務】
視覚障がい ・荷物を運ぶ作業

・脚立の上などの高所作業

・人混みでの作業

聴覚障がい

音声機能障がい

言語機能障がい

・電話対応
平衡機能障がい

肢体不自由

・荷物を運ぶ作業

・脚立の上などの高所作業

・人混みでの作業

内部機能障がい ・心臓機能障がいの場合、作業負荷は体力に応じて配慮する
【知的障がい者が避けるべき業務】
・複雑な工程の業務

・突発的に対応する必要がある業務

【精神障がい者が避けるべき業務】
・てんかんの発作が起こる可能性がある場合、高所作業や刃物を使った作業

・発達障がいの場合、特性上苦手な分野の業務

障がい別の適性についてもっと詳しく知りたい方は、「【2024年最新】障がい者に向いている仕事・探し方・雇用形態まとめ」で、仕事内容をご紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

2.【店舗】障がい者のお客様に対する合理的配慮の具体例

職場で雇用されている障がいのある従業員に対して、どのような合理的配慮を提供すれば良いのか、イメージが湧いてきたのではないでしょうか。

障害者差別解消法では、雇用している障がい者だけでなく、お客様として店舗にやって来る障がい者への合理的配慮も義務付けています。

飲食店やスーパーなどの小売店の店先に訪れた、障がい者のお客様に対する合理的配慮の具体例として、以下の3つの観点からご紹介します。

・店内環境の整備

・コミュニケーション方法

・ルールの柔軟な変更

障がいのあるお客様にも合理的配慮ができるように、ぜひ参考にしてみましょう。

 

2-1.店内環境の整備

障がいのあるお客様に対する店内環境へ整備は、主に身体障がい者に対して提供されます。

障がいがない方にとっては利用しやすい環境でも、身体障がい者の方にとっては、ちょっとした段差や、手が届かない背の高い陳列など、不便な点がたくさんあるからです。

身体障がい者への店内環境の整備の具体例は、以下の通りです。

【身体障がい者への店内環境の整備】
身体障がい者
視覚障がい ・「お手伝いしましょうか?」「ここに段差があります」などの声掛けをする

・盲導犬の同伴を認める

・通路には物を置かない

・暗いところでは見えにくい視覚障がい者には、照明の当て方を工夫する

・特定の色が見えにくい視覚障がい者には、色の情報を補足説明する

・飲食店の場合、メニュー内容を説明する

・小売店の場合、ほしい商品の場所まで案内し、商品説明をする

・小売店で刃物などを取り扱っている場合、慎重に対応する

聴覚・平衡機能

障がい

・聴導犬の同伴を認める

・重要な情報を店内放送している場合は、紙に書いて知らせる

・杖の妨げにならないように、通路には物を置かない

肢体不自由 ・段差がある箇所にスロープを設置する、もしくは車椅子を押すのを手伝う

・通路には物を置かない

・飲食店の場合、車椅子のまま食事ができるように、椅子を片付ける

・小売店の場合、手の届きやすい陳列を心がけるか、高い陳列棚の商品を代わりに取る

内部機能障がい ・急に気分が悪くなった場合は、休憩スペースに案内する

店内をバリアフリー化し、段差をなくして通路を広げるのが理想ですが、予算やテナントの都合上、すぐにできない場合もあることと思います。

そんな時は、目の前にいる障がい者のお客様の気持ちを想像して、積極的に「お手伝いしましょうか?」と声掛けをし、障がい者が安心して利用できる環境作りを目指しましょう。

なお、身体障害者補助犬法によって、障がい者が盲導犬などの補助犬を連れていることを理由にした、飲食店などへの立ち入り拒否は禁じられ、社会参加の受け入れが義務付けられています。

 

2-2.コミュニケーション方法

障がいのあるお客様とのコミュニケーション方法における合理的配慮は、主に身体障がい者知的障がい者に対して提供されます。

障がいの種類に応じて、意思疎通しやすい方法が異なるからです。

具体例は、以下の通りです。

【身体障がい者へのコミュニケーション方法】
身体障がい者
視覚障がい ・話しかける時は驚かせないように「いらっしゃいませ、店員の◯◯です」と名乗る

・視覚的情報を補足できるように、サイズや色、材料、価格などを具体的に伝える

例:「こちらは国産豚肉の肩ロースで、赤身と脂身が丁度良いバランスですよ。100g250円で、このパックは300g入り750円です。」

聴覚障がい ・補聴器を利用している聴覚障がい者には、一言一言をできるだけゆっくりはっきりと話す

・片側の聴力だけ極度に低い聴覚障がい者には、聞こえが良い方に移動して話し掛ける

・聴力が低い場合は、筆談や手話、スマホのチャット機能によるコミュニケーションを行う

音声機能障がい

言語機能障がい

・筆談や手話、スマホのチャット機能によるコミュニケーションを行う

・大きくゆっくりと話し掛ける

・お互いの認識が食い違わないように、その都度聞き返し対応をする

肢体不自由 ・車椅子の人とカウンター越しに話す場合は、外に回って目線を合わせて対応する
【知的障がい者へのコミュニケーション方法】
知的障がい者
・読み書きや金銭などの理解度が低い場合、ゆっくりと分かりやすい言葉で話し掛ける

聴覚障がい者の中には全く聞こえない方もいれば、少しは聞こえる方もいるので、お客様の様子に合わせて、コミュニケーションを図ることが大切です。

また、聴覚障がい者の中には、難聴と弱視を併発している方もいます。
ペン先の細いボールペンでの筆談で見づらそうにしていたら、太いマーカーに切り替えるなど、目の前の人の助けになろうと考えてみましょう。

 

2-3.ルールの柔軟な変更

障がいのあるお客様に合理的配慮を提供するためには、ルールの柔軟な変更が求められます。

以下のように、既存のルールは障がいのない方が利用することを前提に作られたものが多く、障がい者に寄り添うには、柔軟に対応する必要があるからです。

【既存のルールに対する障がい者の気持ち】
既存のルール 障がい者の気持ち
【セミナースクール】

セミナーの内容や話術がウリなので、写真・動画撮影や音声録音は一切禁止

【片方の聴力だけ極度に低い聴覚障がい者】

話者が移動すると聞き逃す可能性があり、念のため録音したい

【小売店】

お客様が商品を手に取る度にカバンからスマホを出して写真を撮っていると、「万引きしようとしているのでは?」と、不審に思う

【視力が低い視覚障がい者】

商品パッケージの説明の文字は小さくて読みづらいものの、スマホで写真を撮って拡大すれば読めるようになるため、撮影して確認したい

【飲食店】

1人につき必ず1品をオーダーしなければならないワンオーダー制

【そしゃく機能障がい者】

決められたもの以外は喉を詰まらせる可能性があるため、自分はオーダーせず、家族が注文した料理をシェアしたい

障がいを理解すれば柔軟な対応の必要性も分かるので、合理的配慮を提供するには、お客様に合わせてルールを見直すことが大切なのです。

 

3.合理的配慮は個別対応が重要!提供の流れ

障がいのある従業員やお客様に対する合理的配慮の具体例から、具体的にどうすれば良いのか分かったと思います。

しかし、「うまくできなかったらどうしよう」「かえって失礼になるのでは?」などと、障がい者の方を前にしても、一歩を踏み出すのが難しいと感じる方は多いのではないでしょうか。

そこで、以下のように合理的配慮の提供の流れをまとめました。

合理的配慮の提供の流れ
(1)障がい者から申し出を受ける

(2)お互いに合意できるまで対話をする

(3)確定した合理的配慮を提供する

(4)提供内容を振り返ってさらに改善する

障がいのある方が困っている時に、迷わずに合理的配慮を実践できるように、ぜひ参考にしていただければと思います。

 

3-1.障がい者から申し出を受ける

まずは、障がい者から申し出を受けましょう。

障がい者には合理的配慮を受けるかどうかを選択する権利があり、特に職場で働く特定の従業員に「合理的配慮をしましょうか?」と働きかけるのは、よくないからです。

そのため、社内メールや朝礼などを通して、全従業員に対して「合理的配慮が必要な方は申し出てください」と広く告知する方法が推奨されています。

広く告知した結果、障がい者の方から「合理的配慮をしてほしい」との申し出があったら、次のステップに移りましょう。

店舗のお客様の場合は、先回りして合理的配慮を押し付けるのではなく、まずは「お手伝いしましょうか?」などの声掛けをしながら、いつでも助けになれる位置で様子を見守るのが望ましいです。

 

3-2.お互いに合意できるまで対話をする

障がい者から申し出を受けたら、お互いに合意できるまで対話を行いましょう。

障害者差別解消法では、合理的配慮は義務としつつも、その提供に伴う負担が「過重にならない」ことが要件となっているからです。

「過重にならない」とは、企業にとって無理のない範囲で合理的配慮を提供することを言います。

例えば、車椅子の従業員が「座席を出入口付近にしてほしい」「車椅子に座ったままでも使いやすい机の高さに調整してほしい」といった内容を申し出た場合、企業はすぐに対応できます。

一方で、「会社への出勤が大変だから自宅の横に移転してほしい」と言われても、対応できません。

そういう時は、制度や費用など、さまざまな点を考慮して対話を続けて、以下のように実現可能なところまで折り合いをつけることが重要となるのです。

・通勤ラッシュを避ける時差出勤に変える

・マイカー通勤を認める

・テレワークの日を設ける

また、障がいのあるお客様がさまざまな申し出をされる場合もありますが、以下のようなケースでは申し出通りに対応できなくても、合理的配慮の提供義務に反しません。

【合理的配慮の提供義務に反しない事例】
飲食店

「食事介助をしてほしい」

→食事介助を事業の一環として行っていないことから、介助は断った
小売店(混雑時)

「店内を付き添って買い物を補助してほしい」

→混雑時は付き添い補助はできないが、店員が買い物リストを書き留めて商品を準備する旨を提案した

このように、「できる」か「できない」の二択ではなく、お互いに合意できるまで対話を繰り返し、障がいのある方が必要としていて、配慮を提供する側の負担も重すぎない内容を見つけましょう。

判断に迷う場合は、合理的配慮の提供について相談できる「つなぐ窓口」に電話相談するのがおすすめです。

出典:政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化

・対応時間:10:00~17:00 ※週7日受付(祝日・年末年始(12月29日~1月3日)を除く)

・メール相談:info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp(※「@」は半角)

・開設期間:令和7年(2025年)3月下旬まで

 

3-3.確定した合理的配慮を提供する

続いて、対話の末に確定した合理的配慮を提供しましょう。

組織として、どの社員にも障がい者に対する合理的配慮の必要性を理解させると同時に、合理的配慮の提供は義務であることを通達しておきます。

それだけではいざ障がい者を目の前にした時に咄嗟に動けない可能性があるため、研修動画の視聴や、ペアで交代に、合理的配慮を提供する側とされる側を務めるロールプレイングをしておくのがおすすめです。

 

3-4.提供内容を振り返ってさらに改善する

合理的配慮は提供できたらそれで良いというものではなく、提供内容を振り返ってさらに改善していくことが重要です。

特に精神障がい者は、その日の体調によってできる範囲が変わることがあるため、一度その人への合理的配慮が確定したからと言って、ずっと同じで良いとは限りません。

職場でも店舗でも、障がい者への合理的配慮の実施状況や効果などの事例を共有すると、広い視野を持つことができるので、さらに良い改善策が見つけられるでしょう。

 

4.職場における合理的配慮に課題があるならJSHの障がい者雇用支援サービスがおすすめ

合理的配慮の提供の流れが分かって、「この通りに取り入れたら実現できそう!」と前向きになれた方は多いことと思います。

一方で、「私たちの会社の場合は、現場の負担が大きくなるのでは?」「突発的に発生する業務が多過ぎて、合理的配慮まで手が回らないかも」と心配になった方もいるのではないでしょうか。

そこで、おすすめしたいのはJSHの障がい者雇用支援サービスです。

障がい者雇用支援サービスとは、以下のように企業が直接雇用した地方在住の障がい者の方に、働きやすいようにJSHが環境を整備した農園で、水耕栽培に従事していただくものです。

障がい者の方はあなたの企業とは別の場所で働き、看護師による健康管理など、より専門的な合理的配慮はJSHにお任せいただきながらも、自社の従業員として雇用できます。

JSHの障がい者雇用支援サービスの特徴は、以下の3つです。

JSHの障がい者雇用支援サービスの特徴
・障がい者が安心して過ごせる職場環境を整備している

・安全でやりがいを感じられる水耕栽培業務ができる

・180社以上の企業で99%の継続率で利用されている

障がい者雇用に関するさまざまな課題解決のお役に立てると自負しておりますので、ぜひ読み進めていただければと思います。

 

4-1.障がい者が安心して過ごせる職場環境を整備している

JSHの障がい者雇用支援サービスでは、障がい者が安心して過ごせる職場環境を整備しています。

JSHの「コルディアーレ農園」は完全屋内型で冷暖房完備の環境下で屈まずに作業できる上に、看護師が複数名常駐していて、日々の健康チェックまで実施されているからです。

障がい者の方が職場環境に戸惑うことなく、安心して仕事に取り組めるように、最大限の合理的配慮が提供されているため、職場定着率は非常に高くなっています。

 

4-2.安全でやりがいを感じられる水耕栽培業務ができる

JSHの障がい者雇用支援サービスでは、雇用した障がい者の方に安全でやりがいを感じられる水耕栽培業務に従事していただきます。

水耕栽培はただ水をやれば良いというものではなく、細分化した多くの工程を確実に行う必要があるため、障がい者の方は農作物の成長過程を手助けすることで、大きな達成感を感じています。

生産した農作物は、企業の福利厚生の一環として従業員に無料配布する他、社員食堂での利用や、近隣の子ども食堂への寄付、JSHが開拓した販路を通じた販売も可能です。

企業で障がい者を雇用する際には、障がい者のためにどこまで環境を整備できるか、障がい者の適性に応じた業務を切り出せるかといった合理的配慮が課題となります。

JSHをご利用いただくことで、障がい者の方は水耕栽培を通して、企業の一員として福利厚生やCSRに役立つことができるので、あなたの企業のために生き生きと働いてくれるでしょう。

 

4-3.180社以上の企業で99%の継続率で利用されている

JSHの障がい者雇用支援サービスをご利用いただいているのは180社以上の企業に上り、その継続率は99%(※2024年6月時点)です。

これは、JSHの「地方在住の障がい者と障がい者雇用に課題を抱える企業の架け橋になりたい」という思いに、多くの企業様が共感されているからこそだと考えています。

JSHの障がい者雇用支援サービスをご利用いただくと、企業で障がい者を雇用し、合理的配慮を提供する際に課題となりがちな業務の選定や定着支援をお任せいただけます。

一方で、企業の方にしていただくのは、毎日の日報や定期的なオンライン面談を通して障がい者の就労状況を把握して、企業の一員としてサポートすることです。

多くの企業で選ばれている、JSHの障がい者雇用支援サービスに興味を持って下さった企業の方は、ぜひお気軽に詳細資料をご請求ください。

5.まとめ
合理的配慮の具体例について、詳しくご説明させていただきました。改めて、ポイントをおさらいしていきましょう。

職場における障がいのある従業員に対する合理的配慮の具体例を、以下の4つの観点からご紹介しました。

・職場環境の整備

・コミュニケーション方法

・柔軟な勤務体制

・業務の選定

店舗における障がいのあるお客様に対する合理的配慮の具体例を、以下の3つの観点からご紹介しました。

・店内環境の整備

・コミュニケーション方法

・ルールの柔軟な変更

合理的配慮の提供の流れは、以下の通りです。

(1)障がい者から申し出を受ける

(2)お互いに合意できるまで対話をする

(3)確定した合理的配慮を提供する

(4)提供内容を振り返ってさらに改善する

職場における合理的配慮に課題があるなら、JSHの障がい者雇用支援サービスをご検討ください。

この記事を元に、障がいに応じた合理的配慮の提供ができるようになることを祈っています。

この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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