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calendar_today2025/01/20

autorenew2025/01/27

障がい者雇用の流れ6STEPを解説!適切に進めて長期定着を目指そう

「障がい者の雇用義務が生じ障がい者雇用を進めることになったけれど、初めてでよく分からないので事前に流れを知っておきたい!」
「障がい者雇用の流れを押さえて、順番に進めていきたい」

障がい者雇用を進めようとしている企業の経営者や人事担当者の方が、障がい者雇用の流れを知ってスムーズな採用をしたくて、検索したのではないでしょうか。

この記事では、以下の流れに基づいて、障がい者雇用をスムーズに進めるためのポイントを詳しくご紹介します。

最初に「業務を選定する」という順番になっているのは、障がい者の方を採用してから業務を割り当てようとすると、「社内に適切な仕事がない」という事態に陥る可能性があるからです。

一番先に業務を選定しておくと、以下のように、障がい者の方も企業も大きなメリットを得られます。

障がい者 自分に適性があると思われる業務がある企業に応募できる
企業 選定した業務に必要な適性や能力がある障がい者の方を採用できる

この記事でご紹介するのは、このような障がい者の方と企業の双方にプラスとなる進め方なので、ぜひ最後のステップまで参考にしていただけたら幸いです。

なお、障がい者雇用について基礎知識から知りたい方は、「障害者雇用の担当者向けガイド2024│読めば基礎知識を網羅できる」を読むと、障がい者雇用において知っておくべき一通りの知識が得られるので、ぜひご覧ください。

【目次】
1. 【障がい者雇用の流れ(1)】業務を選定する
2. 【障がい者雇用の流れ(2)】採用計画を立てる
3. 【障がい者雇用の流れ(3)】募集を開始する
4. 【障がい者雇用の流れ(4)】採用面接を行う
5. 【障がい者雇用の流れ(5)】受け入れ体制を整える
6. 【障がい者雇用の流れ(6)】長期雇用のための取り組みを行う
7. 長期雇用を目指すのは難しく、休職・退職は防ぎきれない
8. 柔軟なサポートを受けたいなら障がい者雇用支援サービスを利用するのがおすすめ
9. まとめ


1.【障がい者雇用の流れ(1)】業務を選定する

まずは、業務を選定することから始めましょう。

法定雇用率の達成を目指して、人数を重視して採用し、採用後に初めて業務を探し始めても、適当な仕事がなかったり、障がい者の方の適性に合わなかったりする可能性があるからです。

実際、厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」によると、以下のように、雇用する障がい者の方の障がいの種類に関わらず、8割近くの企業が社内に仕事がないことを課題と感じています。

出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」を元に作成

まず業務を選定してから、その業務の適性がある障がい者の方を採用する流れを作ることが、障がい者雇用においては非常に重要なのです。

業務を選定する際には、以下の流れで進めましょう。

(1)配属部署を決める

(2)業務を洗い出す

(3)タスクまで細分化する

(4)採用する人物像を把握する

障がい者雇用における重要課題である業務の選定をクリアできるように、ぜひ参考にしてみてください。

 

1-1. 配属部署を決める

業務を選定するために、まずは障がい者の方の配属部署を決めましょう。

どの部署に配属すれば、障がい者の方が働きやすいのかを考える必要があるからです。

以下のような部署は、それぞれの障がい者の方が働きやすいでしょう。

【障がい者が働きやすい部署】
身体障がい者 ・一定温度に保たれた室内でできる作業がある部署

・座ったまま作業ができるなど、身体的負荷が少ない部署

知的障がい者 ・マニュアルがあれば誰でもできる作業がある部署

・単一作業(シングルタスク)の仕事量が多く、人手が必要な部署

精神障がい者 ・アウトソーシングしている業務がある部署

・一年を通して定期的に同じ作業が発生する部署

会社内にはさまざまな部署がありますが、「経理の仕事は任せられない」「営業に関する仕事に単純作業はない」なとど決め付けず、各部署の責任者にヒアリングしてから決めることが大切です。

まずは配属部署を決めてから、業務内容を検討していきましょう。

 

1-2. 業務を洗い出す

次に、配属部署における全ての業務を洗い出します。

以下のように、部署内の業務の全体像を把握することで、障がい者に割り当てられる業務と割り当てにくい業務が判別しやすくなるからです。

【部署内の業務の洗い出しの例】
事務 ・電話対応

・来客対応

・簡単なオフィス清掃

・備品の補充

・書類整理

・書類作成

・メール送受信 など

経理 ・伝票整理

・請求書発行

・売上集計

・会計業務

・決算業務

・芸無関係の業務 など

営業 ・顧客管理

・接客

・問い合わせ対応

・受発注業務

・在庫管理 など

このように全てを洗い出して、配属部署の業務の全体像を明らかにしましょう。

 

1-3. タスクまで細分化する

続いて、洗い出したそれぞれの業務について、具体的なタスクごとに細分化していきます。

一見難しそうな業務でも、以下のようにタスクを細分化することで、障がい者の方に割り当てられる業務を見つけられるからです。

【業務をタスクまで細分化する例】
事務

【書類整理】

(1)溜まった書類を日付順に並べる

(2)日付順にファイリングする

(3)確認が必要な書類は責任者に届ける

(4)ファイリングした書類を書類棚に種類別に並べる

経理

【請求書発行】

(1)月末にシステム上で売り上げを締める

(2)請求書を印刷・発行する

(3)請求書を入れる封筒に宛名を記入する

(4)請求書と送付先を間違えないように再確認する

(5)請求書をそれぞれの封筒に封入する

(6)請求書を発送する

営業

【顧客管理】

(1)名刺やメールなどから顧客情報を収集する

(2)顧客管理をしているシステムに情報を登録する

(3)営業担当に登録情報を確認してもらい、修正する

(4)顧客情報を定期的に更新する

このように考えると、「書類整理は全て任せられそう」「請求書発行も請求書と送付先を間違えないための再確認だけサポートすれば任せられる」などと、判断できるでしょう。

障がい者の方には、職場に出勤してもらわなくても、自宅などの環境が整った場所でテレワークすることも可能なので、柔軟な働き方を想定して、より幅広い業務を選定しましょう。

タスクを細分化して複数の業務を用意できると、障がい者の方が実際に働き始めた時に、取り組みづらい部分があったり、想像以上に遂行のスピードが早かったりした場合に、業務を調整できます。

 

1-4. 採用する人物像を把握する

細分化したタスクから業務を選定した上で、最後に作業内容・時間・優先度等で採用する人物像を把握しましょう。

以下のように、選定した業務に必要な適性や、障がい特性上、どうしても不向きだと言える人について考えると、選考・採用の際の基準ができ、ミスマッチが起こりにくくなるからです。

【採用する人物像の把握例】
作業内容 ・金銭や数字の概念が必要

→知的障がい者は難しい場合がある

 

・コミュニケーションスキルが必要

→障がい特性に応じて検討する

作業場所 ・屋外

→基本的には身体障がい者には負担が大きく、難しい

 

・一か所のみ

→障がい特性上、一か所に落ち着いていられない人は難しい

 

・複数

→環境が変わっても混乱せずに作業できる人が望ましい

作業時間 ・長時間

→障がい特性上、集中力が途切れやすい人には難しい

作業頻度 ・月に一回

→期間が空いても作業内容の記憶力がある人が望ましい

業務の優先度 ・やや高い

→症状が安定している人が望ましい

 

・低い

→どんな方にも任せやすい

このように、配属部署の業務を洗い出し、タスクまで細分化した上で、その業務に対してどのような人を採用したいか人物像のイメージを膨らませましょう。

より詳しい業務の選定方法については、「【障がい者雇用】業務の切り出しの基礎知識|正しい方法とポイント3つ」でもご紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

2.【障がい者雇用の流れ(2)】採用計画を立てる

続いて、障がい者雇用の採用計画を立てていきましょう。

障がい者雇用は法定雇用率を満たすためだけに行うものではありませんが、常用労働者が40人以上の企業に対して義務付けられている以上、法定雇用率を下回らない方が望ましいです。

なお、常用労働者が100人以上の企業で法定雇用率を下回ると、障害者雇用納付金が徴収されます。

そのため、採用計画を立てる際には、あなたの企業の場合、どのような障がいがある方を何人雇用しなければならないのかを、正確に理解することが非常に重要です。

採用計画は、以下の流れで立てていきましょう。

(1)雇用すべき障がい者数を計算する

(2)カウントルールに基づく雇用すべき障がい者数を理解する

(3)いつまでにどのような障がい者を何人雇用するか決める

あなたの企業に適した採用計画を立てられるように、ぜひ参考にしてみてください。

 

2-1. 雇用すべき障がい者数を計算する

まず、あなたの企業で雇用すべき障がい者数を、以下の計算式で求めましょう。

雇用すべき障がい者数(カウント)=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×0.025

※2026年6月まで

計算式中の「常用労働者数」と「短時間労働者数」とは、以下の通りです。

常用労働者数 1週間の労働時間が30時間以上の従業員数
短時間労働者数 1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の従業員数

常用労働者には、雇用契約期間の定めなく雇用されている正社員だけでなく、有期雇用契約となっている契約社員や派遣社員も、以下の場合は含まれます。

・契約期間が反復更新され、雇入れから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる

・過去1年を超えて引き続き雇用されている

なお、短時間労働者よりも1週間の労働時間が短い、パートやアルバイトはカウントしません。

例えば、毎日8時間勤務の正社員が100人、週20~30時間勤務のパート従業員が20人の企業の場合、以下の計算式となります。

(100+20×0.5)×0.025=2.75

小数点以下の端数は切り捨てなので、この企業では障がい者の方を2人(重度身体・知的障がい者なら1人)雇用しなければならないことが分かります。

2024年10月現在の法定雇用率は2.5%ですが、2026年7月から2.7%への引き上げ予定です。

引き上げ後は、対象企業が常用労働者数が40人から37.5人の企業へと拡大するだけでなく、以下の計算式に変わるので、注意しましょう。

雇用すべき障がい者数(カウント)=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×0.027

※2026年7月から

 

2-2. カウントルールに基づく雇用すべき障がい者数を理解する

あなたの企業で雇用すべき障がい者数が分かったら、次は、カウントルールに基づく雇用すべき障がい者数を理解しなければなりません。

なぜなら、以下のように、障がい者雇用におけるカウント方法は、週所定労働時間によって異なる上に、重度身体障がい者と重度知的障がい者の場合は倍カウントするからです。

【障がい者雇用におけるカウント方法】
週所定労働時間 30時間以上

(常用労働者)

20時間以上30時間未満

(短時間労働者)

10時間以上20時間未満
身体障がい者 1人 0.5人
重度身体障がい者 2人 1人 0.5人
知的障がい者 1人 0.5人
重度知的障がい者 2人 1人 0.5人
精神障がい者 1人 1人※ 0.5人

※精神障がい者の短時間労働者については、2023年4月からの精神障がい者算定特例の延長に伴い、当面の間は雇入れからの期間に関係なく、1人をもって1人と見なす

例えば、身体障がい者の場合、週所定労働時間が30時間以上の常用労働者は「1人」とカウントしますが、20時間以上30時間未満の短時間労働者は「0.5人」としかカウントできません。

また、「重度身体障がい者」の場合は、常用労働者であれば1人とカウントするところを「2人」、短時間労働者であれば0.5人とカウントするところを「1人」と、倍カウントします。

さらに、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障がい者に関しては、重度身体障がい者・重度知的障がい者・精神障がい者の方に限って、「0.5人」とカウントします。

「重度身体障がい者」と「重度知的障がい者」とは、以下の通りです。

重度身体障がい者 身体障害者手帳の等級が、1級・2の人
重度知的障がい者 療育手帳の区分が、A(最重度・重度の人

より詳しい障がい者のカウント方法が知りたい方は、「【2024年最新】障がい者のカウント方法を解説!計算式と早見表付」でご紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

2-3. いつまでにどのような障がい者を何人雇用するか決める

雇用すべき障がい者数の計算方法とカウントルールが理解できたら、いつまでにどのような障がい者を何人雇用するかを決めましょう。

具体的な計画を立てると、計画から逆算して動き始められるからです。

採用計画のポイントは、以下の通りです。

【採用計画のポイント】
いつまで あなたの企業で採用したい人物像と合致する障がい者の方を見つけられるように、雇用を開始したい時期の2~3か月以上前までに行動を開始する
どのような障がい者 初めて障がい者雇用を進める企業は、環境整備やサポートが手探りな状態なので、障がいの程度が重くない方から雇用し始める
何人 初めて障がい者雇用を進める企業は、まずは1人の採用から始める

選定した業務に必要な適性や能力を備えた障がい者人材を採用するまでの期間は、場合によっては2~3か月以上かかるので、早めに行動することが大切です。

重度身体障がい者や重度知的障がい者の方は倍カウントするため、法定雇用率の達成に近づきやすくなりますが、その分、環境整備のための経済的負担や、サポートする人的負担が大きくなります。

また、一度に複数の障がい者の方を雇用すると、担当者の負担が大きくなり、一人ひとりに対するきめ細やかなサポートができなくなる可能性があります。

そのため、時間に余裕をもって、障がいの程度が軽い方をまず1人雇用する計画を立ててみましょう。

このように、雇用すべき障がい者数を求める計算式とカウントルールを理解し、いつまでにどのような障がい者の方を何人雇用するか決めると、障がい者雇用を進めやすくなります。

採用計画に不安な点がある場合は、ハローワーク地域障害者職業センターなど、支援機関への相談が可能です。

どこに相談すればよいか迷う場合は、「障がい者雇用の相談先一覧|選び方から相談すべきことまで一挙解説」を、ぜひご覧ください。

 

3.【障がい者雇用の流れ(3)】募集を開始する

採用計画が立てられたら、募集を開始しましょう。

募集方法には、以下の5つがあります。

・ハローワークへの相談

・障がい者専門求人サイトの活用

・就職フェア・合同説明会などへの参加

・就労移行支援事業所との連携

・特別支援学校との連携

あなたの企業にとって最も効率的な募集方法を見つけられるように、ぜひ参考にしてください。

 

3-1. ハローワークへの相談

ハローワークへの相談は、どの企業にもおすすめです。

なぜなら、障がい者雇用の中心的機関であるハローワークは、無料で求人を出せるだけでなく、多くの障がい者の方が閲覧するウェブサイトにも掲載されるからです。

募集要項の書き方に悩む場合に相談すると、ハローワークは障がい者の求職者の情報も持っているため、求職者の希望や適性に応じたアドバイスをもらえて、より効率的な募集ができます。

さらに、ハローワーク経由で採用に至ると、特定求職者雇用開発助成金トライアル雇用助成金といった助成金が支給される場合があります。

障がい者雇用で募集する際には、まずはハローワークに相談しましょう。厚生労働省「障害者に関する窓口」より、相談窓口の住所や電話番号をご確認ください。

 

3-2. 障がい者専門求人サイトの活用

求人情報を掲載できる媒体には、広告・雑誌・一般的な求人情報サイトなどがありますが、おすすめは障がい者専門の求人サイトの活用です。

なぜなら、障がい者雇用枠に限定した求人サイトなので、他の媒体よりもスムーズに選考に進めやすいからです。

障がい者専門求人サイトは、内定に至ると一定の金額(成功報酬)がかかります。

しかし、障がい者専門の就職・転職エージェントが運営しているため、マッチングや、面接、内定、就職後のフォローまできめ細やかに支援してくれて、ミスマッチが少ないのが特徴です。

短期間で採用したい人物像に合った障がい者の方を雇用したい場合は、障がい者専門求人サイトを活用しましょう。

インターネットで「障がい者専門求人サイト」と検索すると、障がい者の方向けの求人情報が多数表示されます。どのサイトも企業担当者向けのボタンが設置されているので、比較検討してみましょう。

 

3-3. 就職フェア・合同説明会などへの参加

障がい者の方のみを対象とした就職フェアや合同説明会には、障がい者雇用を希望する多くの企業が参加しています。

なぜなら、書類選考を飛ばして、お互いに最初から相手の顔を見ながら話ができるからです。

あなたの企業に興味を持った障がい者の方がブースに来てくれると、トントン拍子に会社見学や個別面接に進められる可能性があります。

ハローワークが開催する合同就職面接会は無料で参加できますが、民間企業が開催するものは参加費が必要になります。

担当者の方は、厚生労働省「障害者に関する窓口」に問合わせたり、障がい者専門求人サイトを見たりして、近隣で開催予定の就職フェアや合同説明会の日程を確認してみましょう。

 

3-4. 就労移行支援事業所との連携

近隣の就労移行支援事業所に、求人の相談をしてみるのもおすすめです。

なぜなら、一般企業で働くために必要な知識やスキルを身に着ける訓練をしている障がい者の方がいらっしゃるからです。

就労移行支援事業所とよく似た名称の支援事業所がありますが、以下のような違いがあります。

【就労移行支援事業所とA型・B型就労継続支援事業所の違い】
就労移行支援事業所 ・一般企業への就職を希望する方が、就職に必要なスキル習得のために、原則2年利用する

・賃金は一部を除きなし

A型就労継続支援事業所 ・現時点で一般企業への就職が困難・不安な方が、雇用契約を結んで、A型就労継続支援事業所で働く

・平均賃金月額は81,645円

B型就労継続支援事業所 現時点で一般企業への就職が困難・不安な方が、雇用契約を結ばずに、B型就労継続支援事業所で働く

・平均賃金月額は16,507円

参考:厚生労働省「就労継続支援A型に係る報酬・基準について〈論点等〉
参考:厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について〈論点等〉

A型・B型就労継続支援事業所にも一般企業での就労を希望する方もいらっしゃいますが、現時点での就職は困難だったり、不安が大きかったりします。

すぐに一般企業での就職を目指している方がいるのが就労支援事業所なので、「このような業務に適性のある方はいませんか?」と、相談してみましょう。

厚生労働省「都道府県別障害者施設一覧」、または「◯◯県(◯◯市) 障害者就労移行支援事業所」と検索すると、あなたの企業近隣の就労移行支援事業所について知ることができます。

 

3-5. 特別支援学校との連携

近隣の特別支援学校と連携を取って、採用に繋げるのもおすすめです。

文部科学省「特別支援教育資料(令和3年度)」によると、特別支援学校高等部卒業者の就職率は3割程度だからです。

全国の特別支援学校高等部在籍者数は約6万5,400人なので、その3割、つまり、毎年約1万9,600人が就職していることになります。

あなたの企業の近隣に住む障がい者の方は限られますが、特別支援学校と連携が取れると、生徒の適性や能力をよく理解している先生の推薦ももらえるため、募集から採用の流れがスムーズになるでしょう。

「◯◯県(◯◯市) 特別支援学校」と検索すると、あなたの企業近隣の特別支援学校について知ることができます。

実際に特別支援学校からの定期的な採用で雇用が安定した企業の体験談を「【障がい者雇用の事例】特別支援学校からの定期的な採用で雇用が安定~従業員2,000名規模のメーカーのケース~ 」で、ご紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

4.【障がい者雇用の流れ(4)】採用面接を行う

募集に対する応募があったら、採用面接に繋げていきます。

採用面接は「配慮」と「質問」の2点に注意して、進行しなければなりません。

採用面接をスムーズに進行できるように、ぜひ参考にしてみましょう。

 

4-1. 配慮

まず、採用面接の際には、さまざまな点に配慮しなければなりません。

障がい者の方が安全に面接場所に到着して、そこで安心して面接を受けられるようにするためです。

採用面接で配慮すべきことは、以下の通りです。

【採用面接で配慮すべきこと】
共通 ・ビルの入口まで出迎える

・緊張をほぐすために、雑談から始める

・にこやかな笑顔を心がける

身体障がい者 ・盲導犬、聴導犬、介助犬の同伴を認める

・白杖を使用する視覚障がい者を誘導する際には、杖を持っていない方に立ち、肘に手をかけてもらう

・聴覚障がい者には、筆談の準備や、静かな個室を用意する

・肢体不自由の方には、入口からできるだけ近い場所を面接場所にする

・内部障がいがある方には、面接場所の近くに休憩スペースを準備し、いつでも利用できることを伝える

知的障がい者 ・分かりやすい言葉を選び、場合によってイラストを用いる

・面接後だけでなく、面接途中にも質問タイムを設ける

精神障がい者 ・人の出入りがない個室を用意する

・集中力が途切れやすい場合は、面接時間をできるだけ短縮する

相手の立場になって考えてみると、どのようなことに配慮すればいいのか分かりやすくなります。

より詳しい具体例や、個別対応の流れを知りたい方は、「合理的配慮の具体例まとめ|場面別・障がい別に提供のポイントを紹介」を、ぜひご覧ください。

 

4-2. 質問

採用面接では、時間内に確認すべきことを質問しましょう。

短時間で障がい者の方の障がいへの理解を深め、選定した業務に必要な適性や能力があるかを見極めなければならないからです。

「答えたくない場合は話さなくても構いません」と前置きした上で、採用面接で確認すべき質問項目は、以下の通りです。

【採用面接で確認すべき質問項目の一例】
自己紹介 ・初対面の応募者の印象を確認する
志望動機

(転職理由)

・応募者の就労意欲やその会社でどれくらい働きたいと思っているのかを確認する
障がい者手帳の

種類と等級

・障がいへの理解を深める

・その応募者を雇用した場合に、選定している業務を任せられるか確認する

・どのような準備や配慮が必要なのかを探る

投薬状況

副作用の有無

・障がいへの理解を深める

・体調が悪くなった時に配慮できる可能性がある

最近の調子 ・体調が安定していて、休まず勤務できるかを確認する
勤務中の

体調不良の対処法

・どのようなサポート体制が必要か確認する
希望する配慮 ・できる範囲で応募者の申し出を取り入れることを検討する
得意なこと・

苦手なこと

・選定した業務に適性があるか確認する

・応募者の就労意欲を確認する

休日の過ごし方 ・規則正しい生活をしていて、遅刻や欠勤をすることなく働けるか確認する

特に、障がい者手帳の種類と等級は、障がいの理解を深めるのに役立つので、聞き逃しの内容に気を付けましょう。

障がい者の方の負担が大きくならないように、採用面接はできるだけ短時間にしたいですが、聞き逃しがあると、採用可否を判断できなくなってしまいます。

以下の「障がい者用面接シート」を参考にして、事前にあなたの企業に合うように作成し直したり、現在使用しているものと併用したりしておくと、面接中に聞いたことをすぐに書き留められます。

採用担当者と配属部署との情報共有にも役立つので、障がい者雇用の面接時には、専用の面接シートを活用しましょう。

障がい者雇用の面接における質問の仕方や、確認すべきポイントについては、「障がい者雇用の面接で確認・配慮すべき17項目とは?」で詳しくご紹介しているので、ぜひご覧いただければと思います。

 

5.【障がい者雇用の流れ(5)】受け入れ体制を整える

面接を経てあなたの企業で雇用する障がい者の方が決まったら、受け入れ体制を整える必要があります。

受け入れ体制を整える上で重要なことは、以下の2つです。

・職場環境の安全性

・配属部署の従業員の障がいに対する理解

障がい者の方が働き出すまでの間に、準備を整えられるように、参考にしてみましょう。

 

5-1. 職場環境の安全性

雇用する障がい者の方の障がいに合わせて、職場環境の安全性を高めましょう。

障がい者の方が出勤した時にケガをしたり、気分が悪くなったりするのを防ぐためです。

一例として、以下のような取り組みが挙げられます。

【職場環境の安全性を高めるための取り組み】
身体障がい者 ・通りやすいように、通路を塞がない

・段差をなくし、スロープを設置する

・座席の配置を工夫する

知的障がい者 ・裁断機などの刃物は、安全に取り扱えるようになるまで手の届く範囲に置かない

・精密機器や薬品があるなどの理由で立ち入ってほしくない場所がある場合、分かりやすい言葉で掲示した上で、何度も説明する

精神障がい者 ・部署異動をなくすなど、その人にストレスがかかりにくい状況で同じ仕事を続けられるようにする

・ついたて、耳栓、サングラスなどの利用を認める

より詳しい具体例や、個別対応の流れを知りたい方は、「合理的配慮の具体例まとめ|場面別・障がい別に提供のポイントを紹介」を、ぜひご覧ください。

 

5-2. 配属部署の従業員の障がいに対する理解

配属部署の従業員の方に障がいに対する理解を深めてもらうことも、受け入れ体制を整える上では、非常に重要です。

なぜなら、厚生労働省「障害者雇用の現状等」によると、障がい者の方の離職の個人的理由は、障がいに起因するものもありますが、「職場の雰囲気・人間関係」の回答割合が多いからです。

出典:厚生労働省「障害者雇用の現状等

従業員の方も企業として障がい者雇用を進めなくてはならないことは理解していても、障がいがある方と一緒に働くイメージがなくて、うまく関われない可能性があります。

そのため、以下の内容を盛り込んだ勉強会を開催して、障がいに対する理解を深めましょう。

・障がい者も社会の一員であり、障がいへの理解を深めて、全ての人が生きやすい社会を実現すべきだということ

障害者雇用促進法で、一定規模以上の企業は障がい者の雇用義務が定められていること

障害者差別解消法で、企業に対して障がい者への差別の禁止や合理的配慮の提供は義務付けられていること

・合理的配慮とは、障がいがある方の困り事や課題を取り除くために、本人の意志を尊重しながら調整すること

・合理的配慮の の共有をすること

 

6.【障がい者雇用の流れ(6)】長期雇用のための取り組みを行う

いよいよ採用した障がい者の方が働き始めることになりますが、これで一件落着ではなく、ここからは長期雇用のための取り組みを行う必要があります。

厚生労働省「障害者雇用の現状等」によると、障がい者雇用における職場定着率が低く、特に精神障がい者の方は3か月後に69.9%、1年後に49.3%と、半数以上が退職しているからです。

出典:厚生労働省「障害者雇用の現状等

障がい者の方に長く働き続けてもらえるように、以下の3つの取り組みを参考にしてみましょう。

・定期面談

・合理的配慮事例の共有

・ジョブコーチによる支援

 

6-1. 定期面談

障がい者の方を雇用したら、定期面談をするのがおすすめです。

なぜなら、日頃から「困ったことがあったら言ってね」と声を掛けていても、現場担当者が忙しそうにしていると、障がい者の方からは言い出しにくいからです。

個室を用意して時間を取り、以下のような具体的な質問をこちらから繰り返して、ようやく重い口を開いてくれることが少なくありません。

「体調に変化はありませんか?」

「業務を進める上で困ることがありますか?」

「職場の人間関係で悩んでいることがありますか?」

このようにして把握したトラブルに対して、以下のようにできる範囲で対応を検討しましょう。

【トラブルへの対応例】
体調に変化がある ・業務中に体調が悪い時は、別室で休ませる

・遅刻や早退をさせる

・テレワークを検討する

・勤務時間の短縮を検討する

業務を進めにくい ・マニュアルを見直す

・進めにくい部分の業務を変える

・進めやすい業務を増やす

人間関係で悩む ・相性が悪い人との接点を減らし、相性が良い人との接点を増やす

・勉強会を定期的に開催する

障がい者の方の状況を正確に把握するために、定期面談を行いましょう。

 

6-2. 合理的配慮事例の共有

「こうしたらコミュニケ-ションが取りやすい!」「この方法だと業務に取り組みやすそう!」など、障がい者の方と実際に一緒に働いて気付いた合理的配慮の事例は、どんどん共有しましょう。

障がい者の方と接する頻度や気付くポイントは、人によって異なるからです。

有効だった合理的配慮事例を共有すると、さらに障がい者の方が働きやすい職場に変えていけます。

また、別の障がい者の方を雇用した際に、配属部署や現場担当者が変わる可能性があるので、障がい者雇用のノウハウを積み上げるという点でも、合理的配慮事例の共有は非常に重要です。

このような障がい者雇用の取り組みを社内報やホームページに取り組み事例を掲載すれば、他の部署でも障がい者の方の受け入れが進む可能性があります。

障がい者の方が働きやすくなるように、合理的配慮の成功事例を共有して、障がい者雇用のノウハウを積み上げていきましょう。

 

6-3.ジョブコーチによる支援

障がい者の方の長期雇用を目指す上で、障がいに対する幅広い知識を持つ人に相談したいなら、「ジョブコーチ」による支援を受けるのがおすすめです。

特に初めて障がい者雇用を進める企業では、さまざなま課題に直面し、現場担当者の方だけでは抱えきれなくなる可能性があるからです。

ジョブコーチとは、障がい者本人や企業に対して、障がい者の方が職場に適応できるようにアドバイス(基本的に無料)してくれる存在です。

企業、もしくは障がい者の方が申し込めますが、双方がジョブコーチによる支援を受けることに合意していなければなりません。

ジョブコーチには以下の3つの形があります。

【ジョブコーチの3つの形】
配置型 地域障害者職業センターに所属するジョブコーチが、企業に出向いて支援する
訪問型 就労支援を行う社会福祉法人等に所属するジョブコーチが、企業に出向いて支援する
企業在籍型 自社の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、自社で雇用する障がい者を支援する

企業での課題を解決するために、配置型ジョブコーチに出向いてもらって、支援を受けるのが一般的です。

ジョブコーチの利用は、申し込みから開始まで約2週間です。地域障害者職業センター、もしくはハローワークから申し込みましょう。

自社での障がい者雇用を促進するために、従業員にジョブコーチ養成研修を受けて、企業在籍型ジョブコーチになってもらうという方法もあります。

ジョブコーチ資格を取得するメリットについては、「【徹底解説】ジョブコーチ資格|3つの取得メリット・実例・取得方法」で詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

7.  長期雇用を目指すのは難しく、休職・退職は防ぎきれない

障がい者の方の長期雇用のための取り組みには、定期面談や合理的配慮の共有、ジョブコーチによる支援があることがお分かりになったと思います。

このような取り組みを行っても、障がい者の方の長期雇用を目指すのは難しく、休職・退職はなかなか防ぎきれるものではありません

例えば、障がい者の方の適性を見極められずに採用した結果、選定していた業務が合わないと、休みがちになって退職する可能性があります。

実際、障がい者の方を採用しても、休職・退職を防ぎきれず、「採用→退職→採用→退職」という良くないループを繰り返している企業も少なくありません。

特に障がい者雇用を始めたばかりの企業では、障がい者雇用における知識やノウハウがまだ少ないため、休職・退職を防いで長期雇用に繋げるのは、非常に難しいのです。

そのため、自社だけで障がい者雇用を進めようとするのではなく、6-3.ジョブコーチによる支援でご紹介したジョブコーチや、以下の幅広い支援機関の活用を現段階から検討しておくことが重要です。

【障がい者雇用で活用できる支援機関】
支援機関 サポート内容
ハローワーク ・障がい者雇用に必要な知識や情報の提供
地域障害者職業センター ・障がい特性に合った仕事の割り当て方

・障がいに応じた合理的配慮事例

障害者就業・生活支援センター ・障がい者の生活リズムや健康管理のサポート方法

・職場定着率の改善方法

障がい者雇用支援サービスを

行う民間企業

・企業の仕事内容や職場環境に適した障がい者雇用方法の提案

・企業に合った障がい者雇用率向上施策の提案

 これらの支援機関のサポートを活用すれば、雇用した障がい者の方が休職・退職する可能性を低減できるので、うまく活用しましょう。

 

8. 柔軟なサポートを受けたいなら障がい者雇用支援サービスを利用するのがおすすめ

障がい者の方の長期雇用を目指すのは難しく、休職・退職は完全に防ぎきれるものではありませんが、さまざまな支援機関のサポートを活用することで、その可能性を低減できます。

柔軟なサポートを受けたい企業におすすめなのが、民間企業が提供している「障がい者雇用支援サービス」の活用です。

サービスによっては有料となりますが、あなたの企業の業種や規模、職場環境に適した障がい者雇用方法を提案してもらえます。

障がい者雇用支援サービスにはさまざまなものがありますが、その中でも今、注目を集めているのは、農園型障がい者雇用支援サービスです。

農園型障がい者雇用支援サービスとは、民間企業の農園の一部区画を借り受けると同時に、障がい者人材を紹介してもらい、その障がい者の方には農園での農作業に従事してもらうというものです。

つまり、既にあるあなたの企業内での業務を切り出すのではなく、障がい者の方が取り組みやすい業務があって、より環境が整備された社外の場所を、新たな部署として立ち上げるイメージとなります。

障がい者雇用の知見がある有資格者のスタッフが多数在籍する支援型農園を選べば、休職・退職の芽を事前に摘み取り、障がい者の方が安心して長く働き続けられる可能性が高まります。

障がい者雇用支援サービスを活用して、あなたの企業にぴったりのサポートを受けて、障がい者雇用を進めていきましょう。

農園型障がい者雇用支援サービスなら

JSHのコルディアーレ農園にご相談ください

農園型障がい者雇用支援サービスについて詳しく知りたいと思って下さった方は、ぜひJSHのコルディアーレ農園にご相談ください。

 

コルディアーレ農園では、企業さまに屋内型農園の一部区画と設備を貸し出し、地方在住の障がい者人材を最短一か月でご紹介しています。

 

企業さまには、以下のように障がい者人材を直接雇用していただき、障がい者の方には環境が整備された農園で、葉物野菜やハーブなどの水耕栽培に携わっていただいています。

コルディアーレ農園の仕組み

 

コルディアーレ農園では、精神科勤務経験のある看護師が唯一常駐するなど、多数の有資格者による手厚いサポートがあるため、高い定着率や安心して長く働ける職場環境づくりにつながります。

 

弊社の農園型障がい者雇用支援サービスを導入いただいている企業は190社超、その企業継続率は99%(2024年6月時点)です。

 

お気軽に下記ボタンからコルディアーレ農園の資料をご請求ください。

 

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9. まとめ
障がい者雇用の流れについて、詳しくご紹介させていただきました。改めて、ポイントをおさらいしましょう。

障がい者雇用は、以下の流れで進めていきます。

長期雇用のための取り組みを行っても、障がい者の方の休職・退職は防ぎきれない場合があるので、障がい者雇用支援サービスを利用するのもおすすめです。

この記事を元に、あなたの企業で障がい者雇用をスムーズに進められることをお祈りしています。

この記事を書いた人

株式会社JSH|矢野 翔太郎

株式会社JSHにて障がい者雇用支援サービス「コルディアーレ農園」のスキーム開発から営業までを担当。
企業側の障がい者雇用の課題解決だけではなく、農園開設や運営にも携わることで、障がい者雇用のリアルな現場にも正対。
障がい者雇用における関連法案や海外の雇用事情についての知見もあり、セミナー等を通じて障がい者雇用に関する様々な情報発信もおこなっています。

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